2020年01月21日

No.750 東芝機械vs村上ファンド~僕ならこう戦います~ を一部無料公開

私が想定した村上ファンドのTOB価格ですが、3,800円でした。しかし実際には3,456円でした。村上ファンドは東芝機械をBPS価格で買うと言っているのですね。

私が村上ファンドのTOB価格を3,800円と想定した理由を以下記載します。有料コラムNo.750を一部無料公開します。

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東芝機械が公表したプレスリリースによると、村上ファンドから以下のアプローチがあったそうです。

1月10日  オフィスサポートから書面により東芝機械に対してTOBの実施可能性について通知

1月13日  TOB実施を1月21日に公表し、1月22日から開始する予定である旨連絡

1月16日  TOB実施を1月20日に公表し、1月21日から開始する旨連絡

1月17日に東芝機械は買収防衛策っぽい対応方針を公表しました。簡単に言うと、20%以上の株式を取得する場合は事前に情報と時間を提供してください、60営業日以内に取締役会の意見をまとめます、または60営業日以内に株主意思確認総会の開催を決めた場合は対抗措置発動に関して株主意思確認総会を開きます、というものです。この対応方針はほぼ買収防衛策と言ってよいと思います。東芝機械は買収防衛策を昨年6月総会をもって廃止しましたが、廃止の際のプレスで「買収防衛策は廃止するけど、買収提案があった場合は情報と時間の確保に努めます」と書いていたことから、その方針に則って村上ファンドからTOB実施の通告があったから、今回の対応方針を公表したという建付けです。この対応方針の導入は取締役会決議であり、株氏総会決議にははからないとのことです。

「株主総会にはからなくていいの?」 構いません。そもそも買収防衛策導入を株主総会にはからなくてはならないという決まりがある訳ではありません。取締役会決議による導入も認められています。なお、今回の対応方針に村上ファンドが従わない場合、ルール違反として対抗措置が発動されます。これは取締役会決議で発動されます。ただ、発動すれば村上ファンドは新株予約権の発行差止請求をするでしょうから、裁判所がどういう判断をするかがポイントです。買収防衛策のルールを破った際に対抗措置を発動したケースは今までありませんのでどういう判断をするかは予想できません。

なぜ東芝機械は日邦産業や乾汽船のように「買収防衛策の再導入」という形を取らなかったのでしょうか?これはできなかったのです。すでに村上ファンドからTOB実施を通告されている状況ですから、事前警告型買収防衛策を導入することはできません。だってすでに買収提案がなされている状態ですから、事前警告になりません。日邦産業と乾汽船は買収提案がなされていた状況ではなかったから、事前警告型買収防衛策を再導入できたのです。だから東芝機械は買収防衛策の再導入ではなく、対村上ファンドのみとした対応方針を公表したということです。また、事前警告型買収防衛策を再導入する場合、東証への事前相談が必要ですが、これ、開示審査に3週間くらいかかるんですよ。だから間に合わないという判断もあって今回のような対応方針という形になったのだと思われます。

さて、村上ファンドの狙いはなんでしょうか?日曜日の日経にも書いてありますが、おそらくニューフレアテクノロジー株を売却して得た現金を株主還元にまわせ!でしょうね。今回東芝機械が苦肉の策の対応方針を導入できたのは、村上ファンドが事前にTOB実施を通告してきたからです。村上ファンドが本気でTOBを仕掛けて東芝機械の経営権を取りたいのであれば、事前にTOBを実施することを東芝機械に通告などしないでしょう。なぜ村上ファンドは東芝機械にTOB実施を事前通告したのでしょうか?

ゆさぶりだったのではないでしょうか?東芝機械に「TOBするからな!」と強く主張すれば、東芝機械が何らかの落としどころを持ってくると思ったのでしょうね。そしてその落としどころとは、ニューフレアテクノロジー株で得た現金を配当や自社株買いにまわすということでしょう。

東芝機械はニューフレアテクノロジー株の売却で得た現金は約215億円で、特別利益として100億円を計上するそうです。では100億円を配当にまわしたら?東芝機械の発行済株式総数は29,977,106株ですが、うち自己株式が5,841,800株なので、29,977,106-5,841,800株=24,135,306株です。100億円÷24,135,306株=1株当たり

414円の増配が可能です。では215億円を配当にまわすとしたら?215億円÷24,135,306株=1株当たり891円の増配が可能です。村上ファンドの狙いはこれでしょ?

村上ファンドはいくらでTOBを仕掛けるつもりなのでしょうか?1月17日(金)の終値は3,115円です。PER28.91倍、PBR0.90倍です。EPS(予)107.73円、BPS3,455.90円です。私が想定する村上ファンドのTOB価格は4,000円ですと「このニュースに注目」村上ファンドのTOB価格を予想してみましょう!では書きました。正確には3,500円~4,000円の間だと思うのですが、3,500円だと3,115円に対してたった12%のプレミアムしかないので、3,800円くらいを提示してくるのではないかと思っています。そうすれば東芝機械としては株価をTOB価格以上にするために、1株当たり800円程度の増配をしてくるだろうと村上ファンドは読んでいるのではないかと。

村上ファンドの今回のTOBって、16~17年前にスティール・パートナーズがユシロ化学とソトーに実施したTOBとそっくりですよ。ユシロ化学とソトーは大幅増配で対抗してTOB成功を阻止しましたから。あれと同じことを想定しているんでしょうね。あまりに昔の話なので世間が覚えていないのだと思います。私にとっては昨日のようなことなんですけど。

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以上です。過去のコラムであり現時点(10:00)での予想ではありませんのでご注意ください。村上ファンドのTOB価格は3,456円です。

 

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