2020年02月10日

株価を上げることが最大の買収防衛策か?

教科書的にはそうです。ただ現実的には違います。なぜなら株価を常に右肩上がりにすることなど不可能ですし、そもそも株価は経営者自身が株を買って付けている訳ではありませんから。「自社株買いしろ!」 自社株買いって株価を上げるためにするものですか?株価に大きな影響を与えないように、自社株買いにおいては買い方にも制限があるのでは?

株価と企業価値にはギャップが生じます。そのギャップを突いて敵対的TOBを仕掛けてくるのがアクティビスト・ファンドの一般的なよくあるやり方でしょう。TOB価格と企業価値にギャップがあり、それに気づいた生き馬の目を抜くアクティビスト・ファンドがTOBを仕掛けてきます。だからこそ、買収提案に関する情報と時間を確保することで、本当にアクティビスト・ファンドの提案するTOB価格が株主にとって正当なものなのかどうかを考えなくてはならないのです。

会社を安く買いたい買収者にとって買収防衛策などジャマでしょうがないでしょう。だって割安な価格で手に入らなくなってしまうのですから。それに買収防衛策があると情報と時間を確保できますから、落ち着いて冷静に対処できます。時間がないと出現しないかもしれないホワイトナイトだって登場する可能性があります。情報と時間を確保することは経営者の保身などではまったくありません。むしろ株主にとって事前警告型買収防衛は必要なんです。

こういうことを書くと「時間を延々と引き延ばすことによって買収提案がなかったことにしようとしているのだろう」と疑う人がいます。「かつて買収防衛策を導入している会社に対する買収提案はことごとく失敗した。時間を引き延ばしたからだ!」とか。これ間違いです。時間を引き延ばしたケースがなかったとは言いませんが、そもそも会社を売り渡すかどうかを決めるのに、そんな短期間で決められる訳がありません。1年くらいかかるでしょ?米国で起きたオラクスvsピープルソフトは決着までに1年半くらいかかったのでは?なお、日本で起きた買収防衛策導入企業に対する買収提案ですが、あれは買収者が「やーめた」と言ったのではないでしょうか?敵対的買収の実現がいかに難しいかを知らない買収者が自らやめたのです(全部とは言いませんが)。買収者に覚悟がなかったせいでしょ?

繰り返しますが、会社を安い価格で手に入れた買収者にとって事前警告型買収防衛などジャマです。しかし本当は株主にとってこそ事前警告型買収防衛は必要なんですね。また、経営者や従業員にとっても必要です。

買収提案がなされた際に情報と時間が必要ないというステークホルダーなどいないでしょ?日本の会社はいまこそ事前警告型買収防衛の議論を再開すべきだと思いますし、知恵と工夫をもって事前警告型買収防衛を導入・再導入すべきだと考えます。

 

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