2020年02月14日

今回の東芝機械の対応について

私は企業防衛の世界で長く生きてきましたが、お客様は上場会社のみです。たまにアクティビスト・ファンドの方からコラムの閲覧申し込みをいただくことがあるのですが、お断りしています。アクティビスト・ファンドの方が当社のコラムを読むと、当社のお客様が困ることになりかねないからです。私はこれまで上場会社の皆さんにお世話になってきましたので、上場会社が困るようなことはしません。恩がありますので。

ただ、大変申し訳ないのですが、今回の東芝機械さんの対応についてはちょっとどうなのか、と・・・。東芝機械さんを応援したいですし、議決権は白紙で投票するつもりですが・・・。

村上さんたちは濫用的買収者でしょうか?違いますね。裁判所がどう認定するかはわかりませんが・・・。短期で売買することは決して悪ではありません。世の中全員が長期投資家になり、誰も売買しなくなったらどうなりますか?流動性が低下します。マーケットはいろんが考え方の投資家がいるから成り立つのです。短期もいれば、長期もいる。たくさんの多種多様な考え方を持つ投資家が存在するから、マーケットが成り立っているのです。だから短期で売買することを否定するのはおかしいと思います。

それと、反対意見表明の中で以下の点に言及していますが・・・

村上氏の影響下にある法人は黒田電気の株式を市場において大量に買い集め、「対応した経営陣を威圧するような姿勢」、「通常の対話のレベルを超える威圧的な行動」で会社に対して株主提案等の様々な働きかけをし、(2017年6月7日付け黒田電気公表「株主提案に対する当社取締役会意見に至るまでの経緯」と題するプレスリリース参照)

どういうレベルの威圧的行動なのかはわかりませんが、だからと言って濫用的と言えるのかどうか・・・。交渉術の一環ではないかと。反対意見表明を読めば読むほど、言いたいことはわかるんだけど、これ本当に対抗措置発動できます?って内容なんですよね・・・。法律専門家ではないですし、東芝機械は複数の会社法学者から意見書をとっているみたいですから、素人の私よりもそちらの判断のほうが正しいのだとは思いますけど。

でも素人、一般人の感覚からすると「村上さんたちって、確かに経営者にとってはやっかいな投資家ではあるけれど、東京高裁4類型に該当するような投資家って言い切れるんでしたっけ?」と思うのです。なんとなく「会社に高値で買わしたんじゃないの?」と思える行動でも、形式的にはちゃんと会社が村上さんたちに「買わせてください」と言ったことになっていますしね。実際には言わせたとしても、そりゃ村上さんたちの交渉がうまかっただけであり、会社は交渉負けしただけでしょ?

私は、対抗措置発動はやってもいいとは思っています。でもやるんだったら、確実に、120%勝てる方法でないとダメだと思うのです。発動するという判断をしただけで、会社が傷付く可能性があります。だって投資家からは批判される行為ですから。仮に負けたら?会社のダメージは深刻です。だから、やるんだったら特別決議も取って、買収者に経済的損害を発生させないような仕組みでないとダメではないかと思うのです。

東芝機械の最大の失敗はなんでしょうか?平時の事前警告型買収防衛策を自らの意思で廃止したことです。事前警告型買収防衛策を廃止しなければ、こんなことにはなっていませんでした。こんな大それたことを決断できるのであれば、平時の事前警告型買収防衛策を継続するほうがよっぽどマシです。対抗措置発動の知恵を絞るよりも、平時の事前警告型買収防衛策継続の知恵を絞った方がよかったのです。

「それが思いつかなかったから今になってんだよ!」というご指摘もあろうかと思います。大丈夫です。私は平時の事前警告型買収防衛策継続の工夫を思いつきましたから(笑)!詳しくはこちら!

No.283 こういう守り方もしてみる~人質とりましょう作戦~

No.493 三菱地所が買収防衛策を廃止するだろうと報道されていますが、こうすれば可決できる

下品な宣伝方法でスミマセン。。。私は皆さんに事前警告型買収防衛策をきちんと継続してもらいたいと思っています。継続しないと東芝機械さんのような状態に陥ってしまうからです。

安定株主比率が高い会社だって狙われます。帝国繊維は最近毎年のように株主提案をされています。

時価総額が大きくても狙われます。ソフトバンクGがエリオットのターゲットになりました。かつてザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンドはJTをターゲットにしました。

東芝機械さんにはできれば普通決議を取り、裁判で勝つことを期待しています。でもなあ・・・。こういう事態にならないのが一番なんですよね・・・。本当に買収防衛策を継続しておけばよかったのに、と思います。

 

 

 

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