2020年03月23日

買収防衛 問われる正当性~前田道路のほう~

さきほど買収防衛 問われる正当性で東芝機械の対抗措置発動について記事をまとめました。では同じ日経13面買収防衛、問われる正当性 対策後出し、投資家に賛否 資金流出で株主に不満もの前田道路のほうを見てみましょう。

「もう残された道はこれしかないか」――。2月上旬、前田道路の経営陣は追い詰められていた。前田建設工業から株式の過半取得を狙う敵対的TOBを受ける中、ホワイトナイトや逆TOB、MBO(経営陣が参加する買収)などがまとまらず対抗策が尽きかけていた。最後に選んだのは異例の大規模配当だった。

ここでいう「逆TOB」とは、たぶんカウンターTOBによるパックマンディフェンスのことでしょうね。まあ、そりゃ検討はしていたでしょうね。本気で前田建設に対抗したかったのであれば、前田道路は迷わずパックマンディフェンスを選択すべきだったと思います。「そんなことをしたら株主代表訴訟になるのではないか?」 ならないように理屈を考えたり、一般株主や投資家を保護するための施策を合わせて実行すればよかっただけです。特別配当などといった対抗策にならない奇策をやるよりよっぽどマシですし、よっぽど理にかなっています。

できない理由を考えるのではなく、実現するための理屈を考えたほうがよかったと思います。だってホワイトナイトが現れない以上、前田道路が助かるにはこの方法しかありませんでしたから。

総資産の2割に当たる535億円もの配当の狙いはTOBの撤回だ。TOBの条件には「前田道路が資産の10%に当たる203億円超の配当をする場合、撤回する場合がある」と記されていた。配当という形でお金が流出し資産が減れば価値に見合わない価格での買収になる。「減損リスクなどで撤回するかも」との期待もあった。

前田建設は前田道路がもし特別配当を実施してきたらどうするか?について、前もってちゃんと検討していたと思いますよ。こういう対抗策が実施される可能性については、15年以上前から検討しています。少なくとも私たちは。そもそも大幅増配でアクティビストによる敵対的TOBから防衛した会社もあります。ユシロ化学とかソトーとかです。大幅増配による対抗策はアクティビストによるTOB対策としては有効ですが、事業会社というストラテジック・バイヤーへの対抗策としては機能しません。TOBをいったん撤回し、大幅増配の基準日後、株価が下落したタイミングでTOBを仕掛けなおせばよいだけだからです。

今回のケースでは買収法制面の課題も浮き彫りになった。まず「部分買収」で東芝機械への買収事例にも共通する。金融商品取引法ではTOB後の保有比率が3分の2以上にならない買収を認めているが、少数株主は不利益を被る可能性がある。少ない資金で経営権を取れる部分買収では、少数株主が売れずに損を被るケースがある。実際、前田建設のTOBへの応募数は上限を6割以上上回り、一部株主は思惑通り売却できていない。

売却しなかった株主も親会社が主導する経営に反対しにくくなる。英国では買収者が3割以上保有した場合に全部買い付け義務が発生するなど、株主間の平等を重視している。早稲田大学の渡辺宏之教授は「(3分の2以上で全部買い付ける)日本のルールは少数株主配慮の観点で中途半端だ」と指摘する。

買収法制面の手当てをするよりも、敵対的TOBへの対抗策として上場会社による事前警告型買収防衛策の導入を認めてあげたほうがよいと思われます。買収法制面をいくら手当てしても、抜け道を探す買収者はドンドン出てきます。その度に法制面を手当てすることは現実的には難しいと思われます。法制面の手当てをするより、上場会社による自衛手段の導入を認めてあげたほうが現実的です。コーポレートガバナンスコードやスチュワードシップコードなどで、上場会社による危機管理対策の一環として買収防衛策の導入について投資家と会社は真剣に議論すること、基本的に濫用的に利用しないことを前提に買収防衛策の導入を認めてあげること、などについて言及してはどうでしょうか?

なお、前田道路の一連の行動に対する評価、分析は本日のコラムをご覧ください。

No.793 前田建設vs前田道路まとめ~すべては疑心暗鬼のせい~

 

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