2020年03月23日

買収防衛策は世の中の流れに逆行する?しません

本日日経に買収防衛 問われる正当性 会社は誰のものかと掲載される一方で、日経電子版には非常に興味深い記事も掲載されています。以下です。

ツイッター、物言う株主に「敗北」 創業者CEOなお標的

記事によると、

アクティビスト(物言う株主)とシリコンバレーを代表するハイテク企業の攻防が激しくなってきた。世界最大のアクティビスト、エリオット・マネジメントの攻勢で、ツイッターは新たな社外取締役の受け入れと自社株買いの実施要求をのまされた。株式市場では将来の身売りの可能性もささやかれる。事実上の解体に追い込まれた米ヤフーの二の舞いとなるのか。日本も対岸の火事とは言えない。

日本の経営者はもうアクティビストによる攻勢を対岸の火事とは考えていないでしょう。危機感は高まっていると思われます。そして興味深い内容は以下です。

シリコンバレーでは19年、電子商取引(EC)サイト運営のイーベイがエリオットからの圧力を受け、CEOが退任した。現在は事業の切り売りを迫られている。今回、カリスマ起業家がアクティビストに屈したことで、起業家の間では「自衛」の必要性が再認識されそうだ。エリオットから狙われた2社は上場後も創業者に経営支配権を認める「複数議決権付き種類株」を発行していない。ドーシー氏の持ち分比率は2%にすぎず、エリオット(4%)よりも低い。

起業家の間では「自営」の必要性が再認識されそうだ、と書いてありますね。日本では買収防衛策の正当性が問われるという記事が掲載され、買収防衛策は世の中の流れに逆行すると言われているのに、米国の起業家は自営の必要性について再認識されるかもしれないのです。

そして、以下です。

シリコンバレーとアクティビストの攻防は10年以上続いている。ハイテク企業にとって研究開発よりも株主還元を強要する物言う株主の存在は、技術革新の脅威に映る。一方、アクティビストからすれば、企業統治が弱く、手元資金を有効活用できていないハイテク企業は格好の標的にみえる。エリオットなど有力ファンドには投資家のマネーが集まっており、大企業にも圧力をかけやすくなった。

起業家やベンチャーキャピタル(VC)の一部で「教訓」として語られるのは米ヤフーだ。08年に著名投資家カール・アイカーン氏を取締役に迎え、その後も2つのファンドが経営に関与した。研究開発よりも自社株買いを重視するようになり、結局、主力事業を売却して投資会社になった。ツイッターも今回、新たに調達した資金を自社株買いに回すという。「いつか来た道」と言われるゆえんだ。

ハイテク企業にとって研究開発よりも株主還元を強要するアクティビストの存在は技術革新の脅威に映るそうです。日本の経営者の意見と同じように聞こえますね。なんだかんだ言って、日本も米国も経営者はアクティビストの存在を会社の中長期的な発展にとって脅威と見なしているのかもしれません。

そして最後に以下。日本と真逆です。

複数議決権付き種類株は自衛手段としてハイテク企業の間で急速に広まった。フロリダ大が新規株式公開(IPO)企業を調べたところ、07年の導入比率は5%程度。19年は4割近くに達した。普及に一役買ったと言われているのが、老舗VC、アンドリーセン・ホロウィッツだ。「アクティビストの近視眼的な圧力をかわし、長期視野で経営できるようになる」(マネジング・パートナーのスコット・クーパー氏)と主張し、種類株の導入を勧めてきた。

複数議決権付き種類株の導入比率が、07年5%程度に対して、19年は4割近くに達したそうです。07年から19年にかけて、日本では事前警告型買収防衛策の廃止が増加しました。米国のハイテク企業とは真逆の動きが日本では起きていたということです。米国のハイテク企業はアクティビストからの自衛手段を取り始めているのに、日本企業は廃止に走りました。アクティビストの動きが活発化し、ターゲットが米国から日本企業に移り始めているというのに、です。

日本の事前警告型買収防衛策は複数議決権付き種類株に比べたら、防衛効果などありません。時間と情報を確保するのが日本の事前警告型買収防衛策であり、防衛することが主目的ではありません。米国はもっと強力な防衛手段で自衛を強化しているのに、日本企業は防衛することすら難しい弱い防衛策ですら廃止しています。

ここら辺でもう一度企業防衛、危機管理について考え直してみるべきではないでしょうか?

 

 

 

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