2020年04月07日

機関投資家よりも個人投資家の方がまともな気がしてきました~キリンHDのケース~

今日の日経17面に以下の記事が掲載されています。

キリンHD総会 残る宿題 多角化路線に信任得たが…ビール・健康 問われる連携

私は上場会社が多角化路線を取ることに賛成ですし、それは当たり前のことです。ビール一本足経営など怖くてできないでしょう。また、ビール事業から生まれた技術を新たな事業展開に生かし、そしてそこで生まれた技術をまたさらに新しい事業展開に生かしていく。こう考えるのがまともな経営者ではないでしょうか?1つの事業を徹底して深堀することも重要ではあるものの、企業規模が大きくなればなるほど1つの事業だけには固執できなくなります。

「ビールはなくならないだろうからビール1本足で大丈夫だ!」 フイルムはなくなりましたね。コダックはどうなりましたか?よく挙げられる例です。

この記事で興味深い箇所があります。

「ビールとバイオは、多少なりとも相乗効果があるのでは」。株主総会当日、会場を訪れた個人株主からは会社側を支持する声が聞かれた。結局、総会でFPによる自社株買い提案に反対した比率は91%。賛成の8%を大きく上回った。

それでもFPの提案は全く見過ごされたわけではない。大手金融機関の議決権行使の担当者は「株価の割安感を訴えたFPの提案の意図は、間違っていない」という。「健康事業への進出は否定しないが、評価にはまだ織り込みにくい」(国内証券アナリスト)との声もある。株価は下落傾向が続いている。

個人投資家はキリンHDを支持し、機関投資家はキリンHDの多角化をあまり評価していないように見えます。上場会社の経営者は上場会社として株価を高くしなければなりません。株主や投資家のためにです。ただし、経営者は株主と投資家のためだけに経営をしている訳ではありません。株主や投資家のほかにもたくさん重要なステークホルダーがいます。ビールだけに経営資源を集中特化した結果、将来的にビール市場がシュリンクしたらどうなりますか?株主や投資家は、シュリンクするまでに得た配当やキャピタルゲインによってハッピーかもしれませんが、株主や投資家よりも会社と長い付き合いをしなければならない従業員や取引先は不幸です。

経営者は株価のことだけを考えていればよいのではなく、すべてのステークホルダーに対する適切な利益配分を考えなくてはなりません。そう考えた場合、特定の事業だけに経営資源を集中投下することなどできないでしょう。キリンHDの主張は経営者にとっては当たり前の主張ではないでしょうか?それを支持してくれるのは、機関投資家ではなく会社を愛してくれる個人投資家なのかもしれません。

今後は機関投資家よりも個人投資家を増やすための戦略的IRを検討する必要があると考えます。はっきり申し上げますが、機関投資家など放っておいても貴社の株が割安であれば買います。でも個人投資家は貴社の株価が割安かどうかはわからず、なかなか買ってくれません。貴社のファンになってくれる個人投資家をいかに増やすかがこれからのIRで重要なことになってくると考えます。

 

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