2020年06月10日

まだまだ買収防衛策は誤解されているようです

今日の日経でもありましたが、そもそも買収防衛策と株価は関係ありません!というか、買収防衛策と株価の関係性なんて絶対に分析できませんから。

買収防衛策はそれのみで公表されることはまれで、だいたい決算発表と同時に公表されます。ですから、公表後の株価形成要因が買収防衛策なのか決算なのかはわからないのです。

あと、買収防衛策を導入し続ける企業に対して、株主を無視しているとか株主がこれだけ反対しているのになぜかたくなにけいぞくするのか、といった批判があります。これ、的外れですよ。そもそも会社は株主だけのものではありません(そもそも会社はものではないのですが)。会社のステークホルダーは株主以外にもたくさんいます。経営陣は株主や従業員、取引先、地域社会といったすべてのステークホルダーにとってメリットのある買収提案なのかどうかを検討する必要があるのです。

その検討のための情報と時間をくださいと買収者に対して要求しているのが買収防衛策というルールです。どこが買収防衛策なのでしょうか?単に買収提案を検討するための情報と時間をくれといっているルールに過ぎません。

こういうことを書くと必ず「経営者は時間をかせいで買収提案がなかったことにするつもりだ!」「時間をかせいで買収者があきらめるのを待つはずだ」と言い出す人がいます。そもそも時間をかけて検討されただけで、あきらめてしまう買収者の方を批判すべきではないですか?

「株主は提示されたTOB価格が高いか安いかを判断するだけだ!経営者もTOB価格だけを検討しろ!」と言い出す人もいます。株主はたしかにそうです。でも経営者はTOB価格だけで判断するわけにはいきません。従業員の処遇がどうなるのかは重要な情報です。取引先に対する処遇もです。会社が持つ技術力や研究開発力に悪影響はないのか、といったことも検討しなくてはならないでしょう。株価とTOB価格だけで判断すればよいほど、経営者とはお気楽な仕事ではないのです。会社を身売りするという判断を、TOB価格だけでできる訳がありません。

そもそも友好的な経営統合だって2~3か月で決まりますか?数年かかるんじゃないですか?友好的に検討していたけど、結局破談になった統合案件なんていくらでもありますよね?

買収提案を価格だけで決めろ、なんてとっても乱暴な意見ですよ。機関投資家の皆さんは、経営者や従業員から尊敬されるためにも、買収提案を阻害するようなルールではない買収防衛策を認めてあげてはいかがでしょうか?

買収防衛策を廃止した会社が「有事導入じゃ!平時導入とは別モンじゃ!」って突然買収防衛策を復活させるよりもよっぽどいいでしょ?

 

このコラムのカテゴリ

関連する
他のコラムも読む

カテゴリからニュースを探す

月別アーカイブ