2020年06月29日

東洋経済の大戸屋に関する記事~さてコロワイドは敵対的TOBを仕掛けるでしょうか?~

東洋経済に以下の記事が掲載されています。さてコロワイドは大戸屋に敵対的TOBを仕掛けるでしょうか?なかなか正確に予想するのは難しいですが、私は以下のように考えます。東洋経済の記事を抜粋しながら、分析していきます。

https://toyokeizai.net/articles/-/359534

コロワイドの提案が可決された場合、大戸屋の経営陣にはコロワイドの幹部が送り込まれることになる。コロワイドは、大戸屋の特徴である店内飲食を縮小し、セントラルキッチンも活用した合理化策によって大戸屋の業績を改善することを主張していた。

店内調理を維持し、現在の経営体制を守りたい大戸屋は必死の反撃に出た。1カ月前の5月25日には都内で記者会見を開き、窪田健一社長が「コロワイドの株主提案の先に、大戸屋の未来がないことは断言できる」と猛反論。地域や店舗に応じたメニューの多様化や、弁当、冷凍食品の販売強化などによって、現経営陣で業績を回復させる中期経営計画を示した。

私は大戸屋で食事をしたことがほとんどありません。10年位前が最後だったと思います。はっきり言って、特段の味に対する感想はありません。

ただ、これ、どっちが正しいのかよくわかりません。正確に言えば、味の問題って個人でそれぞれ違いますし、ここが争点になるのが不思議です。コロワイドの「甘太郎」にも行ったことはありますが、おいしかったですよ。コロワイドはコロワイドで、セントラルキッチンを使っても味を落とさずに運営する訳ですし、当然、大戸屋を経営することになったとしたら、セントラルキッチンを活用しつつ、大戸屋のよさをいかすのは当たり前です。

大戸屋の経営陣は、あまりセントラルキッチンや味にこだわりすぎる反論を今後も続けたら、おそらく失敗します。今回の株主提案は、コロワイドがコストをかけずに、ある意味、コロワイドにとって都合のよい方法で大戸屋を支配しようとしたから、株主も大戸屋経営陣を支持ししたのであり、全面的に大戸屋支持という訳ではないと思いますよ。

果たして株主総会での決議の結果、コロワイドの株主提案は否決された。株主提案に対する賛成率はおおむね14%。ここには「総会当日に賛成の意思表示を示さなかった」(大戸屋)ため、コロワイドによる行使分は含まれていないが、仮にそれを入れても賛成率は33%程度だったことになる。コロワイドの経営立て直し策にも合理性はあり、接戦になることも予想されていた。大戸屋の勝利をもたらした要因とは何なのか。

これ、間違ってますね。株主提案に対する賛成率14%に、単純にコロワイドの持分19%を加えて33%と言っていますよね?違います。議決権行使率を考えたら、42%程度になるはずです。株主提案が58:42で否決された、ということです。77:33ではありません。58:42ってけっこう僅差だと思いますよ。コロワイドがTOB条件を明示していないのにもかかわらず、です。

1つが、「ファン株主」の存在だ。大戸屋の株主のうち個人株主の持つ議決権は6割程度に上る。これは、5000株未満しか保有していない「浮動株」の比率から読み取れる。外食企業は身近な存在でビジネスを理解しやすいことや、定期的に株主優待として食事券が送られてくることから、個人株主が多い。特に大戸屋は大手企業に比べると売り上げや利益の規模が小さく、機関投資家が非常に少ない。

ファン株主ってのは確かに存在します。でもそんなのはごく一部の株主に過ぎません。このファン株主に依存する防衛体制というのは非常に危険です。

実際、株主総会の質疑応答の時間には「大戸屋の大ファンです」「応援しています。頑張ってください」といった激励のメッセージを送る株主の姿が目立った。シビアに経営状況を見極めて経済合理性を追求する機関投資家と異なり、「伝統の店内調理を守ってほしい」「とにかく今の大戸屋を応援したい」という気持ちで大戸屋側に賛成した個人株主が多かったことが考えられる。

そりゃ株主総会に来る株主はファンが多いでしょうね。あとは少しのクレーマー。これに大戸屋の窪田社長が気をよくしてしまったとしたら、今後の対応で失敗します。「あんなに株主総会で応援してくれた株主がいたんだから、敵対的TOBにだって応募しないに違いない!」と勘違いしてしまうかもしれません。

もう1つ、見逃せない勝因が「消去法」だ。優待目的で保有している40代の男性株主は、「大戸屋の現経営陣も、コロワイドの手法も、どっちもダメだ」とバッサリ。コロワイドが19%の議決権しか持たずに経営を支配しようとする姿勢を問題視し、「コロワイドの提案が通ったら、ほかの多くの少数株主が反対するような施策も、コロワイドの都合で通ってしまう懸念がある」と話した。

コロワイドは大戸屋の株式の過半数を取得することなく、取締役会を刷新することで合理化策を推し進めようとした。このコロワイドの強引なやり方への警戒感から、消去法的に「だったら現経営陣に奮起してもらったほうがマシだ」と結論づけた株主も一定数いた。

ここですよ。私が散々HPで言ってきたことです。現時点で大戸屋株主がコロワイドの提案を支持するメリットは一つもありません。今ここで大戸屋の経営権をコロワイドに渡したら、コロワイドの好きな方法で子会社化されるリスクがあります。株主優待などに目がくらんで「コロワイド支持!」となってしまったら、後で後悔する可能性があるのです。だから大戸屋の株主は今回、非常に冷静に行動したのだと思いますよ。

なので、今回の勝負は賢い大戸屋の株主の勝利なのです。

株主総会の「正念場」を乗り切った大戸屋の窪田社長は、議決の結果「よって第3号議案(コロワイドの株主提案)は否決されました」と宣言する際に、声を震わせ、安堵の表情を浮かべた。ただ、本当の「正念場」はここからだ。

窪田社長、大丈夫かなあ・・・。本当の正念場はこれからなんですよ。この記事ではのれん代の負担や大戸屋の業績改善など、敵対的TOBをする上でのハードルが記載されています。でもですね。たしかにいますぐは難しい可能性はあrものの、コロワイドが何のために大戸屋株を創業家から買ったのか?ということなのです。

今は敵対的TOBをしないかもしれない、しかしコロワイドが大戸屋創業家から株を買ったのは大戸屋を子会社にしたいから、ですよね?長い目で見たら、いつか敵対的TOBを仕掛けてくるかもしれない、という前提で防衛体制を敷く必要があるのです。

また、本当にコロワイドは「今」は何もしないのでしょうか?今すぐ敵対的TOBを仕掛ける可能性だってあると思いますよ。大戸屋に時間を与えてしまうと、いろんな防衛行動を取られる可能性があります。攻撃側としては防衛側に時間を与えたくないものです。

時間があればけっこういろんな防衛体制を敷くことが可能です。割と時間をかけずに敵対的TOBを仕掛けてくる可能性もあると思っておいた方がよいです。少なくとも防衛側は「明日仕掛けてくるかもしれない」という前提で行動しないとダメなんです。

「今すぐ仕掛けてくることはないだろう」 はい、これ「だろう経営」です。上場会社の経営者は「明日コロワイドが敵対的TOBを仕掛けてくるかもしれない」と考えて行動しなくてはなりません。「かもしれない経営」です。

 

 

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