2020年06月30日

「キレイ事は終わった」泥沼化する大戸屋とコロワイドの争い

日経ビジネスに以下の記事が掲載されています。

「キレイ事は終わった」泥沼化する大戸屋とコロワイドの争い

定食チェーン大手、大戸屋ホールディングス(HD)と、大戸屋HD株を19%保有する筆頭株主の外食大手、コロワイドの対立が抜き差しならない状況に陥っている。大戸屋HDは6月25日の株主総会で、買収を視野に取締役会の刷新を狙ったコロワイドの株主提案を否決したが、その過程で両社の確執が一段と深まる事態が相次いだからだ。事態を収拾する余地はあるのだろうか。

事態を収拾する余地は一つだけあります。コロワイドが敵対的TOBを仕掛けて、大戸屋を子会社化してしまえば、事態は収拾しますね。コロワイドが19%という中途半端な株式しか保有していないから事態が収拾しないのです。

あ、あともう2つあります。大戸屋が買収防衛策を導入して徹底的に戦うか、ホワイトナイトを探してくるかですね。

コロワイド側は「総会に出席した社員からは拍手をしたと報告を受けている」と反論するが、29日のリリースで大戸屋HDは改めて拍手がなかったと表明した。コロワイドの求めに応じて裁判所が任命していた中立の総会検査役が、議場での目視およびビデオ映像による確認も重ねたうえで拍手をしていないことを確認したと主張している。大戸屋関係者も「複数人であらゆる角度からこのコロワイド社員が拍手するか注視していた。拍手の音は一切しなかったし、見落としもありえない」と強調する。

これ、どうなんでしょうかね・・・。そりゃ、現行のルールを考えれば、大戸屋が正しいのは当たり前なのでしょうが、コロワイドの出席者も「へ?株主提案に賛成って行使したじゃん?議場で拍手しなかったからダメなの???」って思ってませんかね?ちゃんとルールを理解せずに出席したのはどうかと思うものの、ちょっと同情の余地はあります。

だが29日の大戸屋HDの発表で、コロワイドは議決権の事前行使で窪田社長ら会社提案と株主提案で重複する5人について反対票を投じていたことが明らかになった。コロワイド社員が総会に出席したため事前行使は無効になったが、自らが出した株主提案候補者の一部に反対票を入れるというのは異例の事態だ。大戸屋HD側はこの行為について「コロワイドの本音が現れた。5人には引き続きお願いしますというのは、単なるキレイ事だったということだ」と怒りをあらわにする。

コロワイドとしては、大戸屋の現経営陣や社外取締役の一部もコロワイドの経営に理解を示してくれるなら候補者にしますという趣旨だったのでしょう。ま、単なるキレイごとなのは最初から分かり切っていたことですね。

コロワイドの野尻公平社長は、株主提案が否決された場合には敵対的TOB(株式公開買い付け)も辞さない構えをみせていた。今後はコロワイドが本当に敵対的TOBに踏み切るのか、それとも撤退するのかがまずは焦点となる。

これまでのコロワイド側の発言や創業家から株式を買った狙いを考えると、コロナさえなければ、敵対的TOBを仕掛けるのは当たり前でしょうね。コロナがなければ、普通に敵対的TOBを仕掛けるでしょう。コロワイドが敵対的TOBを仕掛けるかどうか?とみんなが悩むのはコロナのせいです。ただ、どうなんでしょうかね?コロワイドが株主提案をしたのはコロナ後ですからねえ。株主提案で負ける可能性はコロワイドも想定していたでしょうし。負けたらどうするか?も普通は考えていることでしょう。

撤退はないと思いますよ。撤退するとなると、コロワイドが市場で株を売ったり、第三者に売ったりすることになるのでしょうが、市場で売り始めたら、自分の売りで株価を下げます。19%を売り切るのはしんどいです。第三者に売るとしても、この状況下で誰が買うでしょうか?大戸屋に自社株買いをしてもらうこともあり得ますが、今の大戸屋にその体力がありますかね?

今回は株主提案を退けた大戸屋HDだが、コロワイドが今の株価にプレミアム(上乗せ価格)をつけて敵対的TOBを仕掛けてきた場合、6割を占める個人株主がTOBに応じる可能性は否定できない(大戸屋が勝った本当の理由、コロワイドの株主提案否決を参照)。現時点でボールを持っているコロワイドの野尻社長が30日の自社の株主総会で何を語るかが注目されそうだ。

私がHPでずーーーっと言い続けてきましたが、今回のコロワイドの株主提案に現時点で賛成するのは大戸屋の株主にとって得策ではありませんでした。なぜなら、コロワイドが大戸屋の子会社化の条件を明らかにしていないからです。子会社化の条件を明らかにしていない段階で大戸屋の取締役会をコロワイドに支配させたら、コロワイドにとって都合のよい方法で子会社化されるリスクがあるからです。

今回の株主提案が否決されたのは、大戸屋にファン株主がいたせいもあるでしょうが、それだけではありません。冷静に「今コロワイドの株主提案に賛成したら、コロワイドにとって都合のよい子会社化の方法を選択されるリスクがある」と考えた株主がいたからでしょう。そのような株主は、コロワイドが魅力的な条件のTOBを提示したら応募してしまうリスクがあります。

大戸屋は敵対的TOBを仕掛けられたら、条件次第ではあるものの、支配されるリスクが非常に高い会社です。さてどうやって守りますか?買収防衛策を導入して戦いますか?まだ決して遅くはないと思いますよ。発動は難しいと思いますが、買収防衛策を効果的に使えばきちんと防衛できます。

コロワイドvs大戸屋のケースは、決して他人事ではありません。このケースを見て、自社に同様のことが起きたらどうするか?を考えた会社が、独立した上場会社として生き残ることができます。
 

 

 

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