上場会社にとって大戸屋に対する敵対的TOBは他人事ではありません
コロワイドが大戸屋に対して敵対的TOBを仕掛けました。想定通りです。私は大戸屋が創業家ともめはじめたころから、「いずれ創業家は大戸屋株を同業やファンドに売却することは間違いない。今のうちから企業防衛体制をきちんと整備しておかないと、大戸屋は大変なことになる」と指摘していました。
なぜこういう指摘をできたかというと、過去、同じようなことが起きているからです。ドン・キホーテvsオリジン東秀です。ドン・キホーテはオリジン東秀の創業家から株式を買い、その後、オリジン東秀に対して敵対的TOBを実施しました。構図がそっくりなのです。
大戸屋は、オリジン東秀という事例があるにもかかわらず、創業家に対して効果的な対抗策をとれず、結果的にコロワイドに株式を取得され、株主提案、敵対的TOBを実施されてしまいました。大戸屋はちゃんと企業防衛について勉強し、効果的な手段を取っていればこんなことにはならなかったのです。
私は創業家ともめた時点で「大戸屋は即座に買収防衛策を導入すべき」と言っていました。「創業家が18%も持っているのだから買収防衛策を導入しようとしても否決されるのでは?」 普通にやれば否決される可能性はあります。しかし以下のような方法をとれば導入できたはずです。
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大戸屋だけではなく、最近敵対的TOBを実施された会社を含めて言えることなのですが、皆さん、常日頃から敵対的TOBについて勉強し、他社事例を研究していれば、おそらく敵対的TOBを仕掛けられることはなかったと思います。なぜなら、どうやって守ればよいか?企業防衛体制をどうやって確立しておけばよいか?を考え、最終的には事前警告型買収防衛策を導入するからです。
大戸屋が工夫して買収防衛策を導入しておけばどうなっていたでしょうか?たぶんコロワイドは手を出しませんでした。そして創業家は大戸屋に株を売って(大戸屋による自社株買い)、サヨナラしたでしょう。大戸屋は打てる手があったのです。しかしもう打てる手は少なくなり、いずれにせよ、独立した上場会社としての経営は失われることになるでしょう。
しかしこれは大戸屋に限ったことではありません。これだけ日本で敵対的TOBが起きているのに、買収防衛策を廃止する会社が今年も出ています。どうしてでしょうか?株主総会を通せないから?だったら通すための工夫をすればよいのです。その工夫をアドバイザーが知らないのなら、アドバイザーを変えなくてはなりません。
敵対的TOBは皆さんの会社に起きる可能性があります。上場している以上、そのリスクから逃れることはありません。しかし逃れる方法はあります。常日頃から、敵対的TOBに備えて議論、勉強し、必要な手立てを打っておくのです。常日頃からちゃんと行動した会社は独立した上場会社として生き残ることができるでしょう。しかしそうしなかった会社は、大戸屋と同じ運命をたどります。
これから先、敵対的TOBは増えます。株主提案など増えたってかまわないのです。株主提案はよっぽどのことがない限り、可決されることはありません。なぜなら日本の上場会社の株主構成上、過半数の賛成を取るのは難しいからです。しかし敵対的TOBは違います。過半数を取れなくても、35~40%も取れば実質勝ちなのです。これが敵対的TOBの怖いところなのです。