2020年08月27日

コロワイド、大戸屋TOB延長に込められた策略と誤算

日経ビジネスに以下の記事が掲載されています。非常に興味深い記事です。少しだけ抜粋させていただきます。

コロワイド、大戸屋TOB延長に込められた策略と誤算

「TOBに応募すればもうかるのに、そうしない個人株主が多数いるとは…」。コロワイドがTOBの期限延長を発表して一夜明けた26日、ネット上にはこんな言葉があふれた。TOBが発表された直後は市場関係者から「9割以上成功する」といった声が上がったこともあり、応募数が発行済み株式の45%に届かなかったことは驚きを持って受け止められた。

同感ですね。私は以前受けた取材に回答し、以下のような記事を掲載してくださいました。

企業防衛策に詳しいIBコンサルティングの鈴木賢一郎社長は、「既にコロワイドが大戸屋株を19%も保有しているので、一般論としてTOBが成立する可能性が高い」と指摘する。しかし「敵対的TOBで過半数を集めたケースはほとんどない。大戸屋の個人株主の感情に訴える作戦が非常にうまくいった場合に、防衛に成功する可能性もまだ残っている」と、大戸屋にも希望がかすかにあるとしている。

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2007/29/news024_4.html

ただそうはいっても、TOB価格がけっこう高いですから、かなり厳しい戦いになると思いましたし、コロワイドのTOBは成功する可能性が高いだろうと考えていました。こんなにも個人が応募しないものなのかと私も少しビックリしています。

ではなぜ最初から下限を40%に設定しなかったのか。複数のM&Aアドバイザー経験者は「45%という絶妙な下限設定で大戸屋HDを足止めしようとしたのでは」と推測する。どういうことか。

このままならTOBを阻止できるかも、と大戸屋HDに思わせることができるタマを投げることで、ホワイトナイト(白馬の騎士)探しに本腰を入れさせないようにする、というわけだ。実際、ある大戸屋HD関係者はTOB期間中に「個人株主の岩盤があるので45%なら意外と守り切れるのではないか」と語っていた。

これについては私も同様の指摘をしています。2020年7月9日に掲載した以下のニュースのとおりです。

(無料公開)コロワイドの敵対的TOBは実に巧妙です

7月9日時点では有料記事とし、無料公開はしておりませんでした。このニュースを無料公開したのは8月25日です。あまり私と同じ想定をする人はいないだろうと考え、多少、付加価値のある考え方と思ったため当時は有料にしていました。

大戸屋が45%の下限なら守り切れると考えていたのなら、まんまとコロワイドの作戦にひっかかってしまったということです。あますぎます。

これが敵対的TOBの世界です。相手の戦略を見誤ってしまうと、とんでもないことになる一寸先は闇の世界なのです。敵対的TOBに対応するには一朝一夕ではムリなのです。常日頃から信頼できるアドバイザーと企業防衛や企業価値についての議論を深め、準備しておくことが大切なのです。

 

 

 

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