2020年09月17日

大戸屋の窪田社長が朝日新聞のインタビューに答えていますが

朝日新聞の窪田社長に対するインタビューです。大変申し訳ないのですが「甘すぎる」の一言です。

https://digital.asahi.com/articles/ASN9K4RHVN9KULFA00R.html?_requesturl=articles/ASN9K4RHVN9KULFA00R.html

少し抜粋させていただきます。

――コロワイドがTOBによって株式の47%を取得した。結果の受け止めは。

「応援してくれた株主様や色んな方に対して非常に残念だし、申し訳ないと思っている。株主様が判断されたことなので、結果をしっかりと受け止めていく」

応援してくれた株主には申し訳ないのかもしれませんが、3,081円というTOB価格を魅力的に感じた株主はたくさんいます。そのような株主を引き留めるための実弾を伴った対抗策を打てなかったことが非常に残念ですね。

――従業員に対しては。

「非常に申し訳ない。ただ、店内調理にこだわっておいしいものを出そうということで貫いてきた道筋は、決して間違っていない。コロワイド体制になっていくが、引き続き、今までやってきたことに誇りを持って頑張ってもらいたい」

これは本当に深く反省すべきだと思いますよ。コロワイドの敵対的TOBは、事前に19%もの株式を取得したうえで実行している点を考えると、成功する可能性が非常に高かったのです。にもかかわらず、窪田社長は従業員が反対声明を出すことを実質的に許可しましたよね?しかも、取締役会が反対意見を表明する前に出させたのです。従業員を危険な目にさらした、いや、現在進行形でさらしている点についてふかーく反省すべきです。コロワイドに対しても「反対声明を出した従業員に対しても公平な扱いをしてほしい」と懇願すべきです。

――コロワイドとは相いれない部分があった。

「今までの経緯もそうだし、方法論も含めて当初から隔たりがあったことは事実だ。会社へのアプローチ、改革の方法の両面でだ。子会社化に向けたプロセスもそう。定時株主総会が終わった後の2週間後のTOBというのも、我々からすると、方法論としては相いれない」

相いれないなとど甘いことを言っているから買収されたのです。会社へのアプローチ、方法論、コロワイドのとったいずれの策も違法ではありません。合法ですし、現に誰も批判していません。事前に19%株式を買い、株主提案をし、敵対的TOBを実施する、というのは誰でもとってよい方法ですし、どの上場会社にも起こりうることです。方法論やアプローチが相いれないからダメではなく、そういった戦略で買収してくる可能性をなぜちゃんと予測し、相手の出方を想像し、そして適切な対抗策を準備できなかったのか?

すべて大戸屋の経営陣が甘いからですよ。

「定時株主総会が終わった後の2週間後のTOBというのも、我々からすると、方法論として相いれない」 何を言っているのか理解できません。本当に甘すぎます。本当に株主総会が終わって即座にコロワイドが敵対的TOBを仕掛けてくる可能性を想定して準備していなかったのですね・・・。甘すぎる・・・。

生き馬の目を抜く世界で生きている上場会社の経営者がこれほど甘い対応をしていたのか、と・・・。

――TOBに対して、ホワイトナイト(友好的な買収者)は探さなかったのか。

「敵対的TOBに対してホワイトナイトというのは探してなかった。株主総会(での会社側提案の承認)を経てだったので探していなかった」

・・・言葉がありませんね。本当にドン・キホーテvsオリジン東秀のケースを知らなかったのかもしれません。

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2007/29/news024.html

企業防衛策に詳しいIBコンサルティングの鈴木賢一郎社長は、「既にコロワイドが大戸屋株を19%も保有しているので、一般論としてTOBが成立する可能性が高い」と指摘する。しかし「敵対的TOBで過半数を集めたケースはほとんどない。大戸屋の個人株主の感情に訴える作戦が非常にうまくいった場合に、防衛に成功する可能性もまだ残っている」と、大戸屋にも希望がかすかにあるとしている。実際、大戸屋株は3000円あたりまで高騰しており、市場価格の動きを注視して様子見の人も多いのではないだろうか。

実は、鈴木氏は野村證券に勤めていた際、ドン・キホーテによるオリジン東秀の敵対的TOBを担当している。その時は、単独での防衛は無理と考え、イオンにホワイトナイトを依頼した。

「大戸屋は創業家ともめ事が発生した時点で、同業に株を売却されないように創業家をハンドリングするべきだった。オリジン東秀がドン・キホーテに狙われた時も、事前に創業家から株を買われた。ホワイトナイトなしで勝てると思ったら甘すぎる」と手厳しい。

私も手厳しくいったつもりではなく、当たり前のことなのです。事前に19%も買われ、個人株主ばかりで安定株主がほとんどいない大戸屋がコロワイドの敵対的TOBから逃れるためには、ホワイトナイトに頼るしかなかったのです。

にもかかわらず、探すことすらしていなかったとは・・・。開いた口が塞がらない。

――株主の支持は得られると考えていた。

「そうですね。我々の主張すべきことをきちんと主張していけば、きっと株主様にご理解いただけるだろうと。株主総会で当社の案が通ったのは一つの答えだと思う」

違う!コロワイドが3,081円というTOB価格を示している以上、「中期経営計画をがんばりまっす!」という絵に描いた餅を株主に提示するのではなく、3,081円より高い価格で買ってくれるホワイトナイトがいます!ホワイトナイトのカウンターTOBに応募してください!という守り方しかなかったのです。

大戸屋の対応はすべてが甘い!

なぜこのような甘い対応になったのでしょうか?それは常日頃から敵対的TOBや株主構成、個人株主の性質、安定株主の必要性、買収防衛策とは何なのか?を突き詰めて議論していなかったからです。そしてこれは、大戸屋に限った話ではありません。みなさんもそうではないでしょうか?

みなさん、買収防衛策とは何なのかを即答できますか?常日頃から研究、議論していますか?している企業は数少ないと思いますよ。そういう会社は大戸屋と同じです。いつか敵対的買収を仕掛けられる可能性がありますし、仕掛けられたら独立した上場会社としての経営は終わりです

そうならないよう、きちんと普段から対応を検討して企業価値を向上させておく必要があるのです。

 

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