2020年11月13日

(一部無料公開)No.942 島忠はこう動くかも?そうなると日本のM&Aが変わる

本日ニトリが島忠へのTOBを公表すると報道されています。では島忠はどう行動するでしょうか?

 

報道によると、ニトリは事前にDCMと島忠の動きを察知し島忠に対して「ホワイトナイト就任」を打診したそうですが、島忠は断ったそうです。ですから島忠・DCMサイドもニトリの動きを察知していました。

M&A未経験のニトリ、「お値段以上」島忠に熱視線

そして今回の島忠。9月中旬にDCMによる島忠の完全子会社化交渉が事前に漏れ、報道が先行。ニトリ側はこの案件をDCMによる強行突破型のTOBとみて、島忠にホワイトナイト(白馬の騎士)として協力を打診したという。だが、DCMと島忠の首脳はコロナ禍の5月ごろからリモートで会合を繰り返し、友好的な信頼関係を醸成して今月2日、TOB実施の発表にこぎ着けた。

(中略)

実はDCM・島忠連合は「ニトリの影はうすうす、感付いていた」(DCM関係者)が、友好的なTOBに横やりを入れるような強硬手段には打って出てこないと踏んでいた。それはニトリのメインバンク、みずほ銀行と主幹事証券の大和証券という日本を代表する金融機関の存在だった。

ニトリからの打診を島忠は断ったのですから、正式にTOBを実施しても島忠が拒否する可能性はあります。しかし気になるのはDCMが準備した資金です。公開買付届出書の添付書類融資証明書によると、DCMは公開買付けの資金として三井住友銀行から1,670億円を限度とした融資証明を取っています。1,670億円を買付予定数38,955,287株で割ると、1株当たり4,287円になります。DCMのTOB価格は4,200円なので、融資だけを原資にするならTOB価格を引き上げる余地はありませんね。

DCMの手元現預金は746億円なので、これも全額充当するとしたら、1,670億円+746億円=2,416億円となり、1株当たり6,201円まで引き上げが可能です。でも手元現預金を全額充当するわけにはいかんでしょうから、仮に半額充当したとして1,670億円+373億円=2,043億円だと1株当たり5,244円です。ニトリがTOB価格を5,500円に設定してきたらDCMはTOB価格を引き上げることが難しいかもしれません。

ニトリの提示するTOB価格次第では、DCMは島忠を手にすることをあきらめる可能性がありますし、島忠と相談するでしょう。島忠もDCMになす術がないと理解したら、ニトリのTOBに賛同表明をする可能性があります。これまで日本で起きた敵対的TOBで対象会社が賛同表明をした事例はありません。これから友好的なTOBをする場合であっても、対抗できないTOB価格で横やりを入れたら、対象会社が賛同表明を出さざるを得なくなり、成功する可能性が高くなるということです。ますます日本企業は厳しい状況になってきています。

なお、散々申し上げて恐縮ですが、DCMにはなす術がない訳ではありません。

No.936 DCMがニトリに勝つ方法

この方法をDCMが取ってくる可能性はまだ残っています。弁護士は気付いていると思いますので、可能性はゼロではありません。もちろん投資は自己責任でお願いします。

 

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