2021年06月18日

本当に買収防衛策を廃止してよいのですか?

以下、今日の日経朝刊にあった記事です。

買収防衛策、減少ペース鈍化 21年は9社止まり 相次ぐ敵対的買収 背景に

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC04C8S0U1A600C2000000/

相次ぐ敵対的買収を背景に廃止した会社が少なくなったという見方もできる一方、今年更新時期であった会社は基本的に3年前に継続をした会社です。3年前というのは2019年ですが、国内機関投資家の買収防衛策に対するスタンスが厳しくなり始めたのは、2017年とか2018年あたりです。すでに国内機関投資家のスタンスが厳しくなってから継続を決めた会社ばかりですから、自ずと廃止する会社が少なくなるのは当たり前です。

まあ、もちろん敵対的TOBが相次いでいるのも廃止が少なくなった背景の一つではあると思います。以下、記事の一部抜粋です。

足元で目立った脅威がなくても「敵対的買収が増えていることを踏まえた」(名古屋電機工業)として導入に踏み切る例もある。日住サービスは19年に防衛策を一度廃止したが、今年3月の総会で再導入した。同社の関係者は「株価に保有不動産の価値が反映されず割安になっている」として買収の標的になる可能性を懸念する。

買収防衛策を新規導入したり、廃止したのを復活させたりする会社の経営者は本当にご英断だと思います。一般的には買収防衛策に対する風当たりは厳しく、買収防衛策を導入しにくい雰囲気が醸成されています。にもかかわらず、敵対的TOBが増え、自社も買収対象になるかもしれないリスクを冷静に見極め、きちんと導入・再導入した会社の経営者は立派です。誰が見ても敵対的TOBが増えているのですから、時間と情報を確保するための買収防衛策はますます必要になってきます。敵対的TOBを仕掛けられて、時間と情報はいりません、などという風変わりな経営者なんていないでしょう。

買収防衛策の期限は2、3年が多く、既存の防衛策の継続を諮る企業も一定数いる。大和総研の吉川英徳主任コンサルタントは「アクティビストが活発になっていることもあり、念のため『温存』したいと考える企業が多いのではないか」と指摘する。

念のために温存するのは当たり前ですし、危機管理の基本は「念のため」でしょう。今現在敵対的TOBを仕掛けられた李、アクティビストに狙われたりしている会社の全員が「なんでうちがターゲットになったんだよ。よそにしてくれよ・・・」と間違いなく思っています。誰がいつターゲットになるかわからないですし、ターゲットになったら会社がひっくり返るかもしれないし、多額のコストをかけて対応する必要があるかもしれないのです。念のために買収防衛策と呼ばれてしまっている時間と情報を確保することが目的の事前警告型ルールを「念のため」導入するのは経営者として当たり前ではないかと思います。

大和総研の吉川氏は「廃止の議論が進んでいるのは機関投資家の比率が高い企業が中心」とも話す。比率が5%程度のぴあは「2年前の更新時は9割強の賛成を得ている。買収などの危機がせまっているとは思わないが、株主共同の利益を守る観点からシンプルに継続するのが妥当と考えている」(真子祐一上席執行役員)という。

廃止の方向で議論しているのは機関投資家の比率が高い会社=安定株主比率の低い会社です。これは確かにそうなのですが、なかには絶対に可決できるのに廃止してしまっている会社もあります。おそらく世の中の流れを読み違えています。「買収などの危機がせまっているとは思わないが」とぴあの上席執行役員の方がおっしゃっていますが、すみませんが間違っています。買収の危機がせまっているかどうかなんて誰にもわかりません。コーナン商事の方が旧村上ファンドに株式を買われていると気づいていたでしょうか?敵対的TOBを仕掛けられた会社で事前に察知していた会社が何社あるでしょうか?基本的に事前に察知するのは困難です。

ここで一度きちんと考えていただきたいことがあります。使い古された言葉ではありますが、それは「会社は誰のものか?」です。これに対して当たり前のように「資金の出し手であり、役員の選解任権を持つ株主である」と言われています。果たしてそうでしょうか?

会社の役員の皆さんは常日頃から「この会社の所有者は株主だけのもの。我々は株主のためだけにがんばろう!」と思って経営しているのでしょうか?たぶんそんな方はゼロでしょう。常日頃から何に対してがんばっているのかと言えば、それは顧客のためであったり、取引先のためであったり、従業員のためであったり、社会のためであったりでしょう。もちろん株主のため、もこれから先は考えなくてはなりません。しかし「株主のためだけ」というのはあり得ません。

TOBをかけられたら、応募するかどうかを決めるのは株主です。ただし、だからと言ってTOB価格が高いからという理由だけでTOBに賛同する経営者はいませんし、そんな単純な理由だけで会社を売り渡すことを決めるべきではないでしょう。買収者に会社を渡すとどうなるのか?従業員の雇用は守られるのか?プライドを持って働いていけるのか?取引先はちゃんと保護されるのか?顧客に有益な製品を提供し続けるのか?

いざ敵対的TOBを仕掛けられたら、本当に会社が買収者の手に落ちてしまいます。皆さんの部下である従業員、取引先などをきちんと手厚く扱ってくれる買収者なのかどうかをきちんと精査する必要があります。

本当に会社のもっとも重要な危機管理ツールの1つである買収防衛策は必要ないのでしょうか?皆さんには守るべきものがないのでしょうか?それらをきちんとこの機会に考え直す必要があると思います。

「我々役員が守るべき会社の価値・源泉は何なのか?」これをよく考える必要があると私は思います。
 


 

 

 

 

 

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