エーザイの買収防衛策廃止に関する記事
今日の日経にエーザイの買収防衛策廃止に関する記事がありました。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC026W90S2A500C2000000/
詳しくは午後にまとめますが、以下、日経のおっしゃるとおりではないかと私も思います。
日本で買収防衛策の導入が始まってから17年。モデルとなった米国の防衛策とは違った形となってきている。
米ツイッターはイーロン・マスク氏から買収提案を受けた4月に買収防衛策を導入したが、最終的には買収を受け入れた。米国では防衛策は時間を稼ぎ、新たな買収者を募ったり、買収者からよりよい条件を引き出したりするなど、あくまで交渉手段の一つとしての役割がほとんどだ。
一方、日本においては防衛策は買収者を撃退する「守りの道具」になりつつある。「敵対的買収の増加や株価低迷で防衛策の需要は根強い」(大和総研の鈴木裕氏)といい、減少が続いていた防衛策の導入社数に底打ち感もでている。防衛策が守るのはあくまでも企業価値という原点を見つめ直す必要がでている。
ツイッターと日本の買収防衛策に関する比較は以下のとおりです。すみません、有料記事です。
No.1300 ツイッターのポイズンピルと日本の買収防衛策を比較
なんだか最近の敵対的TOBのケースを見ると、本当に日本の買収防衛策は発動するのが当たり前のようになってきています。ただし最近発動されたケースはすべて有事型買収防衛策の発動であり、平時型買収防衛策の発動ではありません。また、平時型買収防衛策が発動されたケースはありません(エフィッシモに株式取得の提案をされたセゾン情報システムズが買収防衛策の発動を株主総会で可決しましたが、最終的には発動していません。他、もしかしたら細かい事例であるかもしれませんが)。
平時型買収防衛策の目的は情報と時間の確保であることに対して、有事型買収防衛策の目的は買収防衛策を発動して買収提案の実現を阻止することにあります。つまり、世間で買収防衛策と呼ばれるべきは有事型買収防衛策であって、平時型買収防衛策ではないのです。平時型買収防衛策は買収防衛策ではありません。
守る方の買収防衛策の使い方も問題視される面がある一方で、私は買収者側にも問題があると思っています。買収者側に対して言いたいことは「あなた、本気でその会社を買収したいと思っていますか?敵対的TOBを成功させることが簡単なことじゃないってわかってますか?」ということです。
敵対的TOBを仕掛けられたら、守る側は必死になって守ります。だって自分たちの生活がかかっているのですから、当たり前です。そのような背水の陣の守る側に対して「株主利益を考えろ!」とか「TOB価格だけで判断しろ!」と言ったってムリですよ。守る側からしてみれば、買収者に買われてしまったら自分たちの人生がどうなってしまうのかわからないのですから、株主利益を第一になんて考えられませんよ。
買収者側はそこまで守る側の心理を考えた上で買収提案をしていますか?ということです。必死になって守るのですから、攻める側も必死にならないと勝てないんですよ。敵対的TOBが日本でまだまだうまくいかないのは、守る側のせいではなく攻める側のせいだと私は考えています。
もちろん、有事型買収防衛策の発動を濫用するのもどうかと思いますよ。少なくとも新生銀行に対するSBIのTOBに対して有事型買収防衛策で対抗するのはどうなんだろうか?と。ただ、新生銀行も必死ですからね。気持ちはわかります。
最近、敵対的TOBが少なくなりましたが、明らかに有事型買収防衛策を発動されて抵抗されるリスクをおそれてのことではないかと考えます。ただ、有事型買収防衛策に対抗する手はもちろんあります。当然コンサルティング内容になってしまいますのでここでは明かせませんが。
買収防衛策導入企業も買収防衛策だけに頼った企業防衛ではダメということです。いつか買収防衛策は破られます。
だからこそ、平時からきちんと企業防衛投資をしておくべきですし、企業防衛投資の一つとして自社が敵対的TOBを仕掛けるということも考えておく必要があります。これからの時代、聖域はありませんから。