2020年02月10日

買収防衛策って悪ですか?

最近、買収防衛策を誤解している方が多いのではないかと感じています。東芝機械は平時に事前警告型買収防衛を廃止しており、今回の村上さんたちに対する対応はあくまで有事における買収防衛策の導入+対抗措置発動です。

一般的に平時における買収防衛策の導入は、まず社内で買収防衛策導入を決めたら、弁護士に対してプレスリリースの作成などを依頼します。プレスリリースが完成したら、東証に事前相談します。東証は買収防衛策の導入の是非を審査するのではなく、あくまでプレスリリースの内容を審査します。開示審査です。東証の審査会を通したのち、取締役会で買収防衛策導入を決議・公表します。だいたい決算発表と同時に公表する場合が多いです。取締役会決議で導入・公表した買収防衛策ですが、その後に開催される株主総会の普通決議を取ることが多いです。なお、定款変更+買収防衛策導入議案で導入する会社もあります。また、取締役会決議のみで株主総会の議案にしない会社も今となっては少ないですがあります。

株主総会で導入した買収防衛策の有効期限は3年としている会社が多いです。これは議決権行使助言会社のISSが「買収防衛策の有効期限は3年まで」という基準を設けていることから、それに従っています。マストではありません。3年経ったらまた株主総会にかけます。これが買収防衛策の導入・継続の一般的な流れです。

買収防衛策はあくまで会社が導入する自主ルールですから、当然、買付者がルールを守らない場合も想定されます。その場合、会社は「ルール違反」として対抗措置を発動する場合があります。新株予約権の無償割当です。全株主に新株予約権を無償で割当てますが、買付者が行使できないという条件です。買付者以外の株主が行使することにより、買付者の持分が希釈化されるというものです。

一般的に買収防衛策を導入している会社は、対抗措置を発動することまで考えていません。ブルドックソースの判例を考えると、やはり対抗措置を発動するには特別決議を取る必要があるだろうし、買付者に経済的損害を発生させない仕組みも必要だろうと考えており、発動が現実的ではないと考えているからです。発動したら機関投資家、マスコミ、世論からも相当な批判がなされるだろうとも考えています。だから、ほとんどの会社は発動することまで考えていません。

買収防衛策を導入している会社は、突然TOBを仕掛けられたり、市場で急速に大量に株式を買い増されたりすると、買付者の目的もよくわからないうちに、正当な企業価値に比べて安い価格で会社が支配されることもあり、対応するためには時間や情報が必要と考えています。突然有事にならないよう、買収提案に関する情報と時間を確保するために買収防衛策を導入しているという会社がほとんどです。

ですので、投資家の皆さんは日本の会社が買収防衛策を発動することはめったにないと考えていただいてよいと思います。有事になって情報や時間がなくて一番困るのは株主です。不当に安く買いたたかれて困るのは株主なんです。

今の世の中で買収防衛策を濫用的に経営者の保身のために使う人はいません。そんな時代ではないですから。

 

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