2020年02月19日

なぜビール事業に集中しろ!と言うのか

英フランチャイズ・パートナーズという投資家がキリンHDに対して自社株買い6,000億円や社外取締役2名の受け入れなどに関する株主提案をしています。キリンHDは反対していますし、対案も出しています。

ところでフランチャイズ・パートナーズはキリンHDに対して

最大の焦点は自社株買いだ。自社株を買い集めれば株価の上昇につながる。だがFPは単に株主還元の強化を求めているのではない。自社株買いの原資としてキリンHDが過半数を保有する製薬企業の協和キリン株、約1300億円を投じて33%分を昨年取得したファンケル株を売却するよう求めている。医薬やヘルスケア関連事業を売り払い、中核のビールに集中すれば、企業価値を最大化できるとFPは主張している。

だそうです。ファンケル株を売れ!医薬やヘルスケアも売れ!ビールに経営資源を集中投下しろ!と言っているということですね。それに対してキリンHDは「全会一致で拒否を決議した。中長期で持続可能な成長戦略を考えた時、ビール集中でいいと考える役員はいなかった」だそうです。

これ、よく投資家が言うんですよね。いらない事業はやめろ!本業に特化しろ!って。そんなことできる訳ないじゃないですか。ビールだけに頼っていたら先細りするかもしれないし、何かあったら社員は路頭に迷います。しかしどうして投資家は医薬やヘルスケアは売却してビールに集中しろ!と言うのでしょうか?

医薬やヘルスケア事業をキリンHDにやってもらう必要はない、なぜなら別に医薬株とヘルスケア株を持っているからだ、ということではないでしょうか?フランチャイズ・パートナーズという投資家はもしかしたら、武田薬品やエーザイといった医薬株を保有しているのかもしれません。「オレたちのポートフォリオには医薬株があるから、キリンHDに医薬事業をやってもらう必要はない。ビールに集中してくれ」ということでしょうね。

これ、投資家の勝手です。投資家がポートフォリオを分散するように、事業会社だって分散します。ビールだけに集中して何かあったら困りますから。ビール以外の事業も育てなくてはなりません。

投資家の「本業に集中しろ!選択と集中だ!」という声に惑わされてはならないということです。

 

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