2020年02月21日

買収防衛策廃止理由に関する誤解

最近というかここずっと買収防衛策を廃止する会社が増えています。少し前は以下を廃止理由にする会社が多かったですね。

・TOBルールが改正されて買収防衛策の目的とする時間と情報の確保が一定程度整備されたから

まあ、わからんでもないです。TOB期間が20日~60日⇒20営業日(延長請求をすれば30営業日)~60営業日、質問権が確保されたなどの改正ですね。ただ、この理由を採用する会社で金商法が改正されてから買収防衛策を導入した会社がけっこうあったんですよ。「貴社が買収防衛策を導入した時点ですでに金商法は改正されていましたよ(笑)」ってことです。そしてその次に採用された廃止理由が以下です。

・改正されたTOBルールが浸透してきたから

たぶん自社が買収防衛策を導入した時点でTOBルールが改正されていたから「改正されたTOBルールが浸透してきたから」という理由にしたんでしょうね。でもね。本当に浸透してます?改正後のTOBルールに則った敵対的TOBって何件発生しましたか?ほとんど発生していないでしょ?本当に改正されたTOBルールが浸透したって言えますかね?

そして廃止理由とともに、買収防衛策を廃止しても以下のような対応をしますよと書く会社が多いです。

・なお、当社は、本プランの廃止後も、引き続き当社の企業価値ひいては株主共同の利益の向上に向けた 取り組みを進めるとともに、当社株式の大量買付行為を行なおうとする者に対しては、大量買付行為の是非を株主の皆様が適切に判断するための必要かつ十分な情報の提供を求め、あわせて取締役会の意見等を開示し、株主の皆様が検討するために必要な時間の確保に努める等、金融商品取引法、会社法その他関連法令に基づき、適切な措置を講じてまいります。

これなんですよね。けっこう皆さん誤解していると思います。「廃止のプレスでみんな、廃止しても買収者に対して情報提供を求めたり、時間が確保できるよ努力しますよって書いてるから、情報と時間を確保できる方法があるんだろうな」って誤解しています。

はっきり申し上げますが、ありません。買収防衛策を廃止した以上、敵対的TOBを仕掛けられたらTOBルールに則って対応するしかありません。東芝機械のように廃止した買収防衛策を突如、村上さんたちを対象にしたルールだから平時の買収防衛策復活ではないと主張して、急遽買収防衛策っぽい対応方針を導入するという画期的な方法をとる会社もありますが、けっこう強引です。だってあれ、買収防衛策の復活でしょ?平時の買収防衛策じゃない!ってのははっきり言ってムリがあります。

買収防衛策を廃止したら、基本的にはTOBルールに則って対応するしかありません。情報を確保したかったら、TOBルールの質問権を活用するしかありませんが、1回しか使えません。また買収者は理由を述べれば回答しなくてもいいので、まじめに回答するとは思えません。現に不十分な回答が目立ちます。また時間を確保したくても、基本、30営業日でしょう。ホワイトナイトが現れたら別ですが、対象会社が買収者に「株主のために期間を延長してください!」と主張しても、基本、断られるでしょうね。

実際、廃止した会社で株式を38%も買われた会社がありましたが、時間と情報を確保することはできませんでしたよね?

事前警告型買収防衛策を廃止したら、突然敵対的TOBを仕掛けられるともうTOBルールで対応するしかないのです。事前警告型買収防衛策を導入したら、やめてはいけないんですよ。事前警告型買収防衛策をやめることは、一度飲み始めたクスリを医者の指示なく勝手にやめるようなもんです。

「医者に相談した結果やめたんだけど」・・・その医者が●●だったんです。相談する医者を間違えたということです。相談する医者を変えて、改めて事前警告型買収防衛策というクスリを飲み始めましょう。

 

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