2022年06月10日

「防衛策」の文言を避ける意図???

今日の日経18面に以下の記事がありました。この記事を書いた方は買収防衛策に詳しくなく、誤解していると思われます。

200文字超の第5号議案 東洋建が「防衛策」と言わぬ理由

そもそも有事型買収防衛策は、平時型買収防衛策の導入・継続時と同じように東証に事前相談していないかもしれませんし、平時型買収防衛策のプレスリリースのタイトルには(買収防衛策)と記載しなくてはなりませんが、有事型買収防衛策に対して東証はそういった指導をしていないのでしょう。※有事型の導入実務については現在弁護士さんに確認中ですので、今後このニュースの記載内容を変更するかもしれません。

だから有事型買収防衛策のプレスリリースには(買収防衛策)と記載されていませんし、プレスリリースに記載していないのに招集通知にわざわざ(買収防衛策)と記載する会社はいないでしょう。

そもそも平時型のプレスリリースのタイトルには(買収防衛策)と記載しなくてはなりません。以下、東証のルールに関してまとめたコラムです。

https://ib-consulting.jp/column/1327/

https://ib-consulting.jp/column/3789/

東洋建設の有事型買収防衛策の議案は210文字で(買収防衛策)という記載はありません。これはそもそものプレスリリースのタイトルに記載がないからであって、防衛策という文言を避けたかったからというわけではないでしょう。ただ、記事では東洋建設のアドバイザーを務める西村あさひの太田先生が「日本で防衛策とすると交渉拒絶の姿勢と株主に誤解を与える」と説明していらっしゃいます。え?ホント?単に有事型だから入れていないだけなのでは???

ただ、平時型買収防衛策はタイトルに(買収防衛策)と入れなくてはならないのですが、これは東証のルールに従って提出するプレスリリースのみの話です。招集通知の議案は東証のルールに従う必要はありませんから、本来は議案のタイトルに(買収防衛策)と記載する必要はないのです。ただ、数えたことはありませんが、ほとんどの会社が議案のタイトルにまで(買収防衛策)と記載しています。これ、おかしいと思いますよ。

だって平時型買収防衛策の主目的は買収提案に関する情報と時間を確保することであり、買収防衛策を発動して買収提案の実現を阻止することではありません。だから本来、タイトルに(買収防衛策)と記載するのはおかしいのです。一方で多くの有事型買収防衛策は情報と時間を確保する目的があるにせよ、主目的は株主総会を開催して買収防衛策の発動の是非を問うことです。有事型買収防衛策は買収防衛策を発動して買収提案の実現を阻止することが主目的なのですから、本来有事型買収防衛策のタイトルにこそ(買収防衛策)と記載するべきなのです。

なお私が平時型買収防衛策の導入をアドバイスする際には「プレスリリースのタイトルには東証のルール上(買収防衛策)と記載する必要はありますが、招集通知の議案には記載しないでください、なぜなら貴社と私は平時型買収防衛策を買収防衛策とは考えていないからです」と申し上げていますし、私がアドバイスした会社は実際に招集通知には(買収防衛策)と記載していません(記載していない会社はすべて私のアドバイスした会社と言っているわけではありません)。

なるほど、太田先生の意図はそういうことですか。有事型買収防衛策はまさに買収提案の実現を阻止するための策だからタイトルに買収防衛策と入れてしまうと、買収防衛のイメージがより強くなり交渉を拒絶していると捉えられかねないから、これまでの有事型のプレスには(買収防衛策)とあえて入れなかったということですかね。

東証はもし事前相談を受けていたのだとしたら「いや、それ逆でしょ?平時型は買収防衛策じゃないけど有事型は買収防衛策じゃん!」とちゃんと指摘すべきでしょう?

東証はこれまでのスタンスを変え「平時型のプレスのタイトルには(買収防衛策)を入れなくてよいけど、有事型には入れてください」とすべきです!

 

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