2020年03月04日

キリン、経営モデルで対立

今日の日経13面にキリン、物言う株主と経営モデルで対立 ビールの将来性巡り 磯崎社長「健康事業、収益源に」という記事がありました。まさに強欲な自分の利益しか考えていない株主の主張にほかなりません。

キリンホールディングス(HD)が成長の柱に掲げた健康事業でもがいている。2020年12月期の健康分野の事業損益は品質管理問題が響き、20億円の赤字(前期は20億円規模の黒字)となる見込み。キリンHDは酒類の市場縮小を懸念し多角化を進めるが「物言う株主」の英投資運用会社フランチャイズ・パートナーズ(FP)はビール事業に集中し医薬・健康事業の売却を迫っている。27日の株主総会でFPへの賛成票が一定程度集まればキリンの戦略に影響する可能性もある。

なぜ株主は多角化に否定的なのでしょうか?ビール事業だけに集中特化することで選択と集中を行うことで、下手すると縮小均衡に陥ってしまう恐れだってあります。まともな経営者であればあるほど、なぜ株主がビール事業だけに集中特化しろと主張するのか理解できないのではないでしょうか?

株主が特定事業に集中特化しろと主張する理由は簡単です。キリンHDにビール事業に集中特化しろと主張しているフランチャイズ・パートナーズという投資家が保有している株式はキリンHDだけでしょうか?そんな訳はないでしょうね。キリンHD以外にもたくさんの分野の株式に分散投資していることでしょう。

では医薬株を持っているとしたらどうでしょうか?例えば、武田やエーザイ、アステラスなどの医薬株をフランチャイズ・パートナーズが保有しているとしたら?キリンHDには医薬事業などに投資してもらいたくないでしょうね。だって医薬株を別に持っているのですから。だからキリンHDには医薬ではなくビールだけに集中特化してもらいたいのです。だから株主は企業の多角化経営が嫌いなんです。株主は会社に対して「多角化するな!特定事業に集中特化しろ!」と言っておきながら、自分たちは多角化投資をしています。自分たちはいいけど、会社はダメ、と。

そんなのは株主の勝手だし、わがままでしょう。会社はものではないし、少なくとも株主だけのものではありません。いろんなステークホルダーの利益の集合体が株主です。経営者は株主の利益を最大化する役割を担っていると同時に、他のステークホルダーの利益の最大化も担っています。株主のためだけにビール事業に集中特化することなどできません。ビール事業だけに集中特化して株価がいっとき上がれば株主はいいですが、他のステークホルダーはどうでしょうか?ビール事業だけに集中特化して、キリンHDに未来はあるでしょうか?記事では「発酵・バイオ技術を駆使してビール、飲料、医薬事業を成功させてきたからこそ、一歩もブレずに健康事業にも入っていける」とあります。会社の事業はその事業単独で成り立っている訳ではありません。他の事業とのつながりによって開発されたものだってたくさんあります。

ビール事業が不振に陥った時、他の事業があれば補うことができます。ビール事業の社員を他の事業の社員が支えることができます。

株主の言う特定事業への集中特化は株主だけにメリットがある施策であり、従業員や取引先、地域社会にとって、また、会社の中長期的な成長にとっては何のプラスにもならない施策です。株主の言うように選択と集中、集中特化をしたことで傾いた会社がどれだけありますかね?いっぱいありますよ。

 

 

このコラムのカテゴリ

関連する
他のコラムも読む

カテゴリからニュースを探す

月別アーカイブ