2020年03月13日

ISSの軸がよくわからない(追加)

さきほどニュースでISSの軸がよくわからないと申し上げましたが、補足します。

ISSは以下の形式基準を満たさないと、平時の事前警告型買収防衛策の導入には反対します。P26にあります。

https://www.issgovernance.com/file/policy/active/asiapacific/Japan-Voting-Guidelines-Japanese.pdf
 

(第1段階:形式審査)

▪総会後の取締役会に占める出席率に問題のない独立社外取締役が2名以上かつ3分の1以上である

▪取締役の任期が1年である

▪特別委員会の委員全員が出席率に問題のないISSの独立性基準を満たす社外取締役もしくは社外監査役である

▪買収防衛策の発動水準が20%以上である

▪有効期限が3年以内である

▪総継続期間が3年以内である

▪他に防衛策として機能しうるものがない

▪株主が買収防衛策の詳細を検討した上で、経営陣に質問する時間を与えるために、招集通知が総会の4週間前までに証券取引所のウェブサイトに掲載されている

(第2段階:個別審査)

▪買収されやすい状況の改善を目的とする具体的な株主価値向上施策に加え、買収防衛策導入により与えられる一時的な保護が、どのようにしてその施策の実行に役立つのかを招集通知で説明しており、その内容が妥当であると結論付けられる

東芝機械の取締役会は、11名でうち6名が社外取締役です(本件を見据えて増やしたのかな??)。基本、形式基準は満たしているようですね。

でもISSって、形式基準を満たした場合でも反対することがありますし、そもそも東芝機械の今回の件での対抗措置発動を賛成推奨するのであれば、形式基準を満たせば賛成推奨してあげてもいいんじゃないでしょうか?東芝機械のように突然買収防衛策を導入して発動議案を総会にかけるという一般株主が戸惑い、株価が乱高下するような対応を認めるのであれば、それは平時からきちんと株主総会にはかり、周知徹底しておくほうがよいですよね?

だったら平時の事前警告型買収防衛策の導入に賛成推奨をたくさんしてあげてもよいのではないでしょうか?上場会社は等しく東芝機械のような状況になることはあり得るのですから。

第2段階の個別審査の中身があいまいだし、そもそも買収されやすい状況の改善のために買収防衛策を導入している企業もあれば、そうではなく、いざ有事になったときに株主らがきちんと検討できるための情報と時間を確保したいために導入している企業が多いのではないでしょうか?

今回の東芝機械の件についてISSは「あくまで個別の状況」という判断だと思われますが、そもそも東芝機械は昨年廃止した事前警告型買収防衛策をいつ導入したのでしょうか?

https://www.toshiba-machine.co.jp/documents/jp/ir/library/kohyo/2019/20190516_4.pdf

2007年6月26日の総会で導入し、2019年5月16日に廃止を公表しました。ISSの形式基準に「総継続期間が3年以内である」という基準がありますね。これって最近導入された基準だと思いますが、この基準の主旨は「買収防衛策はそのような特別な状況に対応するための、あくまでも一時的な手段です。長期にわたり継続される買収防衛策は、経営者の自己保身と解釈されかねません。日本で現在導入されている買収防衛策の88%は導入からすでに9年以上経過しています。これは多くの場合、それらの企業において買収防衛策を持つ正当性がすでに失われていることを意味し、株主の懸念は高まっています。」ということですよね?かつて以下の通りコラムにまとめています。

https://ib-consulting.jp/column/645/

東芝機械は2007年6月26日に買収防衛策を導入し、2019年6月21日の株主総会まで継続しました。12年間継続していました。でも今回のある意味実質的な買収防衛策の復活はよい、という判断なのでしょうか?とても不思議です。これを機会にISSには平時の事前警告型買収防衛策に対するスタンスをきちんと見直してもらいたいものです。

というか、国内外の機関投資家の皆さん。平時に導入する事前警告型買収防衛策にぜひ賛成していただけないでしょうか?日本の経営者は、平時導入の事前警告型買収防衛策を濫用的に利用することはしませんし、できません。平時の事前警告型買収防衛策を認めないから、東芝機械のような有事導入といったことをやったり、持ち合いに走る企業が増えたりするリスクがあります。

ぜひお願いします!

 

 

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