2020年03月23日

会社は誰のものか?

本日の日経13面の買収防衛 問われる正当性 会社は誰のものかの冒頭に以下の記述があります。

企業の買収防衛の手法がめまぐるしく変わってきた。敵対的TOB(株式公開買い付け)を受けた東芝機械は有事導入型と呼ばれる対抗策に、前田道路は大規模配当で資産価値を減らすという奇策に踏み切った。ともに今春開く株主総会に諮るが、投資家からは経営者の保身という批判も目立つ。さまざまな利害関係者(ステークホルダー)を巻き込む防衛策の変化は、企業統治の根幹である「会社は誰のものか」という問題を改めて問うきっかけになる。

会社は誰のものか?この答えは簡単です。そもそもの会社とは何か?会社とは何で構成されているものか?を考えればわかることだからです。会社とは何でしょうか?私の尊敬する岩井克人先生の会社はだれのものかにも書いてあるかもしれませんが、もっと先生の興味深いお話があります。以下のコラムでまとめています。

https://ib-consulting.jp/column/237/

岩井先生の「会社は誰のものか」のアマゾンの説明欄に以下の記述があります。

では、会社とは何か。会社は「法人企業」の別名である。法人とは「法律上、ヒトとして扱われているモノ」のこと。著者はこの解釈をもとに、会社を2階建て構造で説明する。2階部分では株主が会社をモノとして所有する。1階部分では株主に所有されている会社がヒトとして会社資産を所有する。「会社は株主のもの」という米国型の株主主権論は、2階部分を強調したものと指摘する。

会社とは「法人」です。こういう解釈でよいのかどうかわかりませんが、私は会社を「法律上の人」と定義されていると勝手に解釈しています。人である会社を「誰のものか?」と議論するのがおかしいのです。会社は人であり、人である会社をものとして解釈するのはヘンです。人である会社の所有権を論じるのはヘンです。

そもそも会社はものではなく人であります。特定の人を「誰のものか?」と議論する人はいないでしょう。だから誰のものかを議論すること自体がおかしいということです。

では会社とは何で構成されているのでしょうか?それは、株主による資金提供、経営者による経営・管理の提供、従業員による労働力の提供、取引先による原材料などの提供、地域社会による公的サービスの提供、などなどのさまざまなステークホルダーによる貢献によって構成されているのが会社です。これだけ言うとすごくきれいごとのように見えますが、実際には様々なステークホルダーの損得勘定が発生しています。その損得勘定を調整するのが経営者の大事な仕事の一つです。

なお、ここで登場しないもう一人の重要なステークホルダーがいます。それは「投資家」です。まあ、株主とイコールといっても構わないのですが、短期的な株主と言ってもいいかもしれません。今回の東芝機械の対抗措置発動や前田道路の特別配当については、抜けている視点があります。それは「投資家保護」の視点です。このような対抗策を打ち出されたら、投資家はどう思うでしょうか?いくら事前に公表したと主張しても、このような複雑な対抗策が株価にどういう影響を与えるのかはよくわからないという投資家が多いでしょう。少なくとも瞬時に判断することはムリです。対抗策と打ち出すことで与える株価への影響、投資家に与える影響をあまり重視していない対抗策のように見えます。

こう書くと経営者は「そもそも短期で儲けようとするのがおかしい!中長期で会社のことを考えるべきだ!」とおっしゃるかもしれません。が、それはダメでしょう。貴社の株主がみんな中長期で保有する株主だったら?日々の株価がつきませんよ。流動性が供給されませんよ。短期で売買する投資家は流動性供給という重要な役割も担っています。中長期だからいい、短期はダメという考え方は改めるべきだと思われます。

買収防衛策自体、私は認められるべきと考えますが、一方でその買収防衛策が投資家の利益を無視するような内容ではってはいけないと考えます。

 

 

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