2016年12月07日

No.30 エフィッシモによる大量保有~TASAKIよりも第一生命に注目~など2コラム

■エフィッシモによる大量保有~TASAKIよりも第一生命に注目~

 本日12月7日(水)日経15面に「TASAKI株を取得 エフィッシモ、5%超」という小さな記事があります。昨日エフィッシモが真珠・ジュエリー販売のTASAKI株式の大量保有報告書を提出しました。保有割合は5.29%です。TASAKIの昨日時点での時価総額は298億円ですので、最近の投資対象としては大きくはありません。2015/10期末の株主構成は以下のとおりです。

2016/4中間期末の上位大株主は以下のとおりです。

 どこかのグループ会社というわけでもないですし、オーナーが一定割合保有しているという状況でもなさそうです。てっきりオーナー系なのかと思っていましたが違いました。個人株主比率が高いので非常に集めやすそうですね。ちなみに、株価ですが、昨日の終値1678円に対して、現在9:11時点では1732円(+3.22%)です。

 今回はTASAKIの大量保有報告書について新聞で触れていますが、注目すべきは第一生命です。昨日、第一生命についてもエフィッシモは変更報告書を提出しました。変更報告書の提出目的は「担保契約等重要な契約に関する変更」です。ただし、内容を見ると、保有割合が上昇しています。前回2016年4月7日に変更報告書を提出した時点では8.19%でしたが、今回は9.03%です。1%近く保有割合を上昇させました。第一生命の株価推移は以下のとおりです。

  エフィッシモが第一生命の大量保有報告書を提出したのは、2016年1月21日です。その時点での保有割合は5.11%でした。その後買い増しをして、現時点で9.03%です。エフィッシモが第一生命の株式を正確にいつ取得したのかは大量保有や変更報告書では判明しません。ちなみに、第一生命の時価総額は約2兆3,000億円です。取得原価はわかりませんが、時価総額に持分をかけると、約2,000億円です。第一生命の株価はかなり上昇していますので、てっきり持分を減らしたものだと思っていました。けっこうな金額の投資ですよね。TASAKIのように時価総額が大きくない企業への投資も怠らず、第一生命のような時価総額の大きな企業への投資も継続しています。最近ではハピネットという資本上位会社が存在する会社へも投資しています。原点も忘れていないようです。

 念のため、自社に対する大量保有報告書や変更報告書が提出されていないかどうか、日々チェックしておいたほうがよいと思います。EDINETで検索可能です。また、株主名簿もチェックしてみてください。ロイヤルバンクオブカナダという株主がいたら、まず間違いなく実質株主はエフィッシモです。また、ゴールドマンサックスインターナショナルも使っています。あとは立花証券です。

■株、売りたいんですけど

 有価証券報告書で政策投資株式についての記載が始まってから随分経ちました。いろんな会社から、「保有株売りたいんだよね」というご相談をいただきました。でも「取引先だから売りにくい」「そもそもどういう経緯で保有したのかわからない」「売るって言ったら相手は怒るかなあ」とかいろいろと悩んでいらっしゃいます。

 そこで、今回は、保有株式を売却できるかどうか見極めるポイントをまとめます。もちろん、取引関係や歴史的関係などで売却できない場合があることは理解しています。あくまで、私の経験上のポイントです。

 まず、相手先のことをよく研究してみてください。まずは、相手先の安定株主比率です。安定株主比率がそこそこ高ければ「まあ、売却されてもそんなに影響ないからいいか」と判断してくれる可能性があります。一方逆もあります。安定株主比率が低すぎる会社の場合「安定株主比率?うちの会社って時価総額も大きいし、そもそも安定株主なんてほとんどいないよ」という風に考えている会社があります。この場合、意外とあっさり売れます。また、保有株を売却する場合、だいたい財務部同士で会話をすることが多いと思うのですが、総務部じゃないので安定株主比率に対する意識が高くありません。ですので、なるべく早めに話をまとめれば、すんなり売らせてくれます。

 買収防衛策を導入しているかどうか。これ、けっこう重要です。導入している場合は安定株主に対する意識が高いです。すんなりとは売らせてくれません。買収防衛策の導入議案の賛成率を見てください。低い場合、「売らせてください」と言っても「OK」とは言ってくれないでしょう。

 買収防衛策以外の株主総会議案もポイントです。ISSから反対推奨が出た場合、賛成率がけっこう低くなってしまっている場合、安定株主が減ることには拒否感が強くなっているかもしれません。

 相手先が、過去、投資ファンドなどに買われたことがある、株主提案などをされたことがある、買収提案がなされた、などは厳しいです。有事を経験している会社は安定株主にこだわります。ただ、有事のときに買ってあげた場合は別です。「そろそろ売らせてくれませんか?」と言えば、「長い間ありがとうございました」と言ってくれるでしょう。今はまだアクティビストの動きが活発化していませんから、今のうちにです(実際は活発化しているんですが、一般事業会社にはまだその認識はないと思います)。

 あとは、いろいろとポイントがありますが、感覚的な問題もあります。数百社以上の会社を訪問し、いろんな悩みを聞いてきましたので、もちろん、個別の会社の事情は言えませんが、売らせてくれそうかどうかのアドバイスはできます。

 

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