2019年08月07日

No.646 敵対的TOBへと発展したエイチ・アイ・エスvsユニゾHD(無料公開)

エイチ・アイ・エスにTOBを仕掛けられていたユニゾHDが8月6日に反対の意見表明をしました。このTOBは敵対的TOBへと発展しました。ユニゾHDの反応を見れば、当然、反対の意見表明をするであろうことは容易に想像できました。

さて、同日、ユニゾHDが反対の意見表明を公表する前にユニゾHDの大量保有報告書をアクティビスト・ファンドであるエリオットが提出しました。保有割合は5.51%です。では、エリオットによるユニゾHD株の取得状況を見ておきましょう。

エリオットは7月18日(木)からユニゾHDの株式を市場で買い付けています。エリオットの保有株数は1,885,700株、取得資金の総額は6,296,022千円のため、1株当たり3,340円で取得していることになります。TOB価格は3,100円ですから、TOB価格が引き上げられることを期待しているのでしょうね。

一方、エイチ・アイ・エスの沢田社長はTOB価格を引き上げないことを明言しています。「今の価格以上はありません。ホワイトナイトが出てきても、当社はもう価格の引き上げはしません。それで株が集まらなかったらそれまでです。一度決めたら一切ぶれません。買い付け価格の設定はそこまで考えて、5割以上のプレミアムをつけました。」と語っています。https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00006/071200068/

しかしエイチ・アイ・エスはTOB価格を引き上げない以上、3,100円という条件では株主は応募しないでしょう。しかもエリオットが登場したおかげで、おそらく本日のユニゾHD株は高騰する可能性があります。ますます3,100円とは乖離が生じます。また、仮にエイチ・アイ・エスがTOB価格を引き上げないとしても、市場株価はおそらく下がりません。なぜならエリオットの登場により、TOBが失敗してもエリオットがユニゾHDに経営改善要求をしたり、株主提案をしたりするだろうと投資家が期待するからです。

では、エリオットは当面何をしてくるでしょうか?ユニゾHDに接触することはないでしょう。エリオットにとってユニゾHDは関係ありませんから。エリオットはエイチ・アイ・エスに接触し、TOB価格を引き上げるよう要請するでしょうね。または、エイチ・アイ・エスがエリオットに接触する可能性もあります。他、例えばエリオットが専用のサイトを設置し、「エイチ・アイ・エスのTOB価格は安すぎる!もっと価格を引き上げるべきだ!」と主張し始めるかもしれません。ホワイトナイトの登場もまだ可能性としてはありますね。いろんなことが想定されます。交渉上手のエリオットですから、いろんな策を考えていることでしょう。

前もってお断りしておきますが、ここから先の話はあまり根拠がありません。私、エイチ・アイ・エスの沢田さんはTOB価格を上げてくると思うのです。なぜなら、エイチ・アイ・エスの沢田さんだからです。エイチ・アイ・エスの沢田さんはエイチ・アイ・エスのオーナー社長です。オーナーがユニゾHDに対して「敵対的になっても構わないからTOBを仕掛ける!」と決断したのです。だから、負けるにしてもみっともない負け方はできません。一度だけでもTOB価格を引き上げると思うのです。いざ敵対的TOBを仕掛けたものの、まったく応募が集まりませんでした~、では沢田さんのメンツは丸つぶれです。マスコミのインタビューで「TOB価格は上げない」と明言したのは、株価が上がらないようにするためでしょう。ただ、いくらに上げるかは難しいですね。エリオットの取得価格が3,340円であり、市場株価が3,500円を超えている状況を考えると・・・。最低でも3,500円以上にはする必要があるでしょうね。※根拠は薄弱ですから、株式投資は自己責任でお願いします。

ようやくマスコミが敵対的TOBと報じ始めました。今年になって2件目の敵対的TOBです。しかも、伊藤忠という日本の事業会社に引き続き、エイチ・アイ・エスという著名な事業会社です。さて次に何が起きるでしょうか?令和元年はまだあと5か月ほどあります。3件目の敵対的TOBが起きても何ら不思議ではありません。そして次のターゲットが貴社であっても、です。川崎汽船も、日本郵船も、日邦産業も、ソレキアも、ユニゾHDも、まさか自社が敵対的買収のターゲットになるとは夢にも思っていなかったことでしょう。皆さんもそうではないですか?私のコラムを読んで、「うちもターゲットになったら大変だ!」とは考えてくださっているとは思いますが、心のどこかで「まあ、大丈夫だろう」と思っていませんか?これまでターゲットになった会社はみんなそう思っていたのです。常日頃からちゃんと真剣に検討し、企業防衛体制を適切に対外的に公表しておかないといつターゲットになるかわからない時代なのです。ユニゾHDは買収防衛策を導入しようと思えば導入できたのです。少なくとも突然敵対的TOBを実施されることは避けられたのです。

真剣に議論し、必要とあれば適切に買収防衛策を導入した会社が生き残れるのです。「いまさら買収防衛策?」ではありません。こんな時代だからこそ買収防衛策なのです。くどいようですが、買収防衛策はいかなる買収提案の実現をも阻害する策ではなく、日本企業が経験したことのない敵対的買収に対応するために、そして株主を始めとしたステークホルダーのために、会社のために情報と時間を確保するための策です。経営者の保身のための策ではありません。

 

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