2017年04月12日

No.78 スパークスが帝国繊維に持ち合い株の売却を要請

2017年4月11日(火)の日経記事です。スパークスが10日、5.07%の株式を保有する帝国繊維に対して資本効率の改善を要請したと発表したそうです。帝国繊維が保有するヒューリック株の売却や株主還元などを要請しているようです。スパークスのHPに詳細が掲載されています(https://www.sparx.jp/press/uploads/pdf/PressJ170410-01.pdf)。

 日経記事によるとプロキシーファイトの実施は否定しています。ちなみに、帝国繊維は12月決算企業なので株主総会は終了しています。では、帝国繊維の株主構成はどうなっているのでしょうか?

 その他の法人株主が35.43%、大株主上位金融機関が16.52%、合計51.95%が外部から見た安定株主比率です。まあ、株主提案などを実施しても可決されることはないでしょう。外国人株主比率も10%程度ですから、スパークスがどんなに文句をつけようが、帝国繊維が無視していれば影響はないかもしれません。

 私が知る限り、スパークスがこのような行動を起こしたのは初めてではないかと思います。少なくとも、水面下で投資先に文句を言ったことはあるかもしれませんが、公表したのは初めてだと思います。どうしてスパークスはこのような行動を起こしたのでしょうか?帝国繊維の2016年12月末の総資産は約578億円です。うち、現金及び預金82億円、短期の有価証券99億円、投資有価証券204億円です(合計385億円)。総資産に対して現預金や有価証券の占める割合は66.6%です。ちなみに、帝国繊維の時価総額は約429億円です。スパークスが問題視しているヒューリックの株式は185億円です。さすがに多いでしょう。スパークスじゃなくても問題視します。

新聞記事によると帝国繊維は「設立以来保有する株もあり、単なる持ち合い以上のものだ。もう少し長いレンジで(経営を)見てもらいたい」と言っているそうです。うーん、さすがにその説明では不十分です。明らかに持ち過ぎです。スパークスは今後、どういう行動に出るでしょうか?株主構成を見れば、株主提案などをしても可決できないことはわかっていると思います。ヒューリックとの取引内容を示せ、帝国繊維の業績にどれくらい貢献しているのか示せ!と主張するでしょうか?でも、帝国繊維は具体的な数値は示さないでしょう。「個別の具体的な取引数値は教えられない」と。ではどうしましょうか?会計帳簿閲覧謄写請求でもしてくるでしょうか?また、「持ち合い先の株式取得を決めた際の取締役会議事録を示せ」とも言ってくるでしょうか?「経営陣は保身のために多額の持ち合いをしている。本来投資すべきものに投資していれば、もっと得られた利益があったはずだ」として株主代表訴訟を起こすでしょうか?もしくは「代表訴訟するぞ!」と脅してくるでしょうか?

会計帳簿閲覧謄写請求、取締役会議事録閲覧謄写請求、株主代表訴訟・・・「そこまではやらないでしょう?」とお考えになるかもしれませんが、実際にやったファンドはいます。エフィッシモさんです。当社のコラムは基本的に実例や経験をもとにしながら想像して書いています。会社の嫌がることを考えるのもファンドの仕事の一つです。私は、持ち合いについてはある程度の防衛体制が整うまでは保持しておく必要があると考えます。それは買収防衛策だけではなく、役員報酬の増額なども含めたいろいろな経営施策が整うまでという意味です。しかし、帝国繊維の場合、ちょっと持ち過ぎです。ファンドの言い分にも多少は耳を傾けたほうがよい場合もあります。

上表は、2017年3月に開催された帝国繊維の株主総会の議案の状況です。役員選任議案のうち、飯田会長と白岩社長の賛成率がほかの方と比べて低いです。もしかしたらスパークスが反対したのかもしれませんね。

 なお、帝国繊維の安定株主比率は高いですが、高い状態がずっと続く保証はありません。

「もし当社の安定株主比率が低かったら、スパークスの主張していることを無視できただろうか?」という視点も必要であると思います。安定株主による防衛体制は、所詮、他人の力を借りた防衛体制です。独力で守れるか?という観点から、投資家の意見を検討する必要があります。

 

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