2020年01月14日

(無料公開)No.746 こう主張すれば東芝機械はニューフレアテクノロジーに対するTOBに応募できるのでは?

東芝が完全子会社化を目的にTOBをかけているニューフレアテクノロジーに対して、HOYAが敵対的TOBを仕掛けました。私はコラムやニュースで「HOYAはTOB価格を引き上げるだろう」と予測しています。一方で、HOYAがTOB価格を引き上げない可能性も想定されます。HOYAがTOB価格を引き上げないシナリオとその場合のリスクについて考えてみます。

東芝のTOB価格が11,900円に対して、HOYAは12,900円を提示しています。東芝はHOYAの提案には応じないとしており、東芝が応じない場合はHOYAのTOBは成立しません。そもそも、東芝はニューフレアテクノロジーを11,900円で買うと言っていますが、東芝はニューフレアテクノロジーの正当な価値を11,900円よりもっと高いと考えている訳です。ニューフレアテクノロジーが東芝の完全子会社となりシナジーを発揮すれば、11,900円より高い価値になると考えています。だからニューフレアテクノロジーの株主に対して「皆さんどうか11,900円で売ってくれませんか?」と言っています。東芝はニューフレアテクノロジーの価値をHOYAが提示した12,900円で十分だと考えるでしょうか?それはないですね。12,900円の価値しかない会社を11,900円で買う訳がありません。ですからHOYAが本当にニューフレアテクノロジーを欲しいと考えるのであれば、もっと高い値段を提示しないとダメです。

東芝はニューフレアテクノロジーへのTOB期間を1月16日まで延長しました。明後日がTOB期限ということになります。東芝のTOBが成立するかどうかは、すでに東芝はニューフレアテクノロジー株式の52.40%を所有しており、今回のTOBの下限は1,633,700株です。所有割合で言うと14.27%です。14.27%の応募がないとTOBは不成立になりますが、かつて東芝グループであった東芝機械がニューフレアテクノロジー株の15.80%を所有しており、東芝機械が応募すればTOBは成立します。しかし、東芝機械はもう東芝グループではなく、4月から社名も芝浦機械に変更されます。東芝グループでもない東芝機械が、HOYAが提示する価格よりも安い東芝のTOBには応募できないでしょう。東芝機械が価格の安いTOBに応募してしまうと、東芝機械は自社の株主に説明ができません。それに東芝機械の株主には村上ファンドがいます。価格の安いTOBに応募してしまえば、村上ファンドから何をされるかわかりません。HOYAがこのように考え、とりあえず12,900円という価格を提示しておけば、東芝機械は東芝のTOBには応募できないだろうと読み、HOYAが現時点でTOB価格を引き上げることはしない可能性があります。

しかし、そうはいっても東芝機械はかつて東芝グループであり、いろんなしがらみがまだあるでしょうね。現在の東芝機械の役員は東芝機械プロパーの方ばかりのようですが、まあ、東芝との関係性は強いですしょうね。

では、東芝機械が価格の安い東芝のTOBの応募するための理由はあるでしょうか?私は2つあると考えています。HOYAのTOBの弱点は何でしょうか?それは簡単ですね。東芝が応じないとHOYAのTOBは成立しないということです。そしてHOYAはまだTOBを実施しておらず、4月頃までは実施できないということです。

東芝機械が東芝のTOB成功に協力してあげたいのなら、これらの点を最大限利用する必要があります。では皆さんが東芝機械の経営者だとして、どのような理屈で東芝のTOBに応募しますか?ヘタすりゃ村上ファンドに突き上げられることを覚悟しなくてはならない局面です。

私であれば、まず東芝の経営陣と面談します。そして東芝は絶対にHOYAのTOBには応募しないという言質を取ります。HOYAのニューフレアテクノロジーに対するTOBが絶対に成立しないという確証を得た上で、東芝のTOBに応募します。株主からなぜ価格の安いTOBに応募したんだ?と問い詰められたら「東芝が絶対にHOYAのTOBには応じないと言っていた。東芝はニューフレアテクノロジーに対するTOBが不成立に終わってもよいと言っていた。そうなると我々が保有するニューフレアテクノロジー株の現金化の手段が絶たれてしまう。価格は1,000円安いけど、TOB成立の現実的可能性を考えた上で東芝のTOBに応募した。また、HOYAのTOBは本当に実施されるのか現時点では不透明だし、実施されたとしても4月以降になる模様。当社としては早くにニューフレアテクノロジー株を現金化したかった。なぜなら今期中に自社株買いをする予定で現金が必要だからだ」と主張します。

いかがでしょうか?ポイントはHOYAのTOBは東芝が応じないと成立しない点とまだTOBが実施されるかどうかわからない点です。これらの点を突けば東芝機械は東芝のTOBに応募できるのではないでしょうか?そしてニューフレアテクノロジー株の売却資金を自社株買いに充てれば、村上ファンドも文句を言わない可能性があります。

でもHOYAがTOB価格をドンドン引き上げてきたら東芝機械は応募しにくくなります。だから早めに対応しないと厳しいのです。逆に言えば、HOYAはTOB価格の引き上げをしないと、東芝機械に応募されてしまい東芝のTOBが成立してしまいます。

もしHOYAが「こちらのほうがTOB価格は高いのだから東芝機械が東芝のTOBに応募できないだろう。東芝のTOBが不成立に終われば4月にTOBを仕掛ければよい」と考えているのであれば、少し甘いのではないかと思います。たった1,000円程度の差であれば東芝機械がTOBに応募してしまう可能性がありますからね。

さてHOYAはどう対応するでしょうか?さすがに明後日がTOB期限ですから、何か行動を起こすとしたら今日だと思うのですがねえ・・・。

 

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とりあえず、HOYAと大和証券が何かしら隠し玉を持っており、これからあっと驚く公表があるのかもしれませんが、現時点での公表情報をもとに、冷静かつ客観的に分析してみたいと思います。

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