2018年01月18日

No.250 日本企業を狙っているのはアクティビストだけではないと思います

 合理化・効率化が進んでいる米国企業に対してアクティビストは物を言いたくても、言えることが限られてきました。

アップル、「スマホ中毒」巡り物言う株主から圧力(2018/1/9 日経)

アップルがスマートフォン(スマホ)「iPhone(アイフォーン)」について、長時間使用が子供の健康に与える悪影響を防ぐ対策を取るよう物言う株主(アクティビスト)から求められている。アクティビストが業績や金融面でなく、社会的な責任を企業に問うのは異例で市場で話題になっている。要求したのはアクティビストして知られるジャナ・パートナーズと米公的年金大手のカリフォルニア州教職員退職年金基金カルスターズ。アップルに連名で出した6日付の公開書簡で「若い消費者が製品を最適に使えるよう親が管理できるツールを提供する必要がある」と指摘した。https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL08HN0_Z00C18A1000000/

 この投資家、よっぽど言うことがないんでしょうねえ・・・。ヒマなのでしょうか?言うことがないけど、仕事柄、言わなくてはならない。だから「そうだ!スマホ中毒についてアップルに一言物申してやろう!」と考えたのでしょうか?アップルに送った書簡には「スマホなどを長時間使用した子供は集中力が低下したり、うつ病を発症して自殺したりする傾向が高まると結論づけた医学研究が根拠。書簡では「アップルが次世代を保護する対策を取り、顧客に選択肢を与えることは長期的な株主価値を高めることになる」と主張した。この分野の専門家委員会の設置や研究の促進、親のための新しい管理ツールや選択肢の開発や提供などの必要性を挙げた。」とあったそうです。これを言われたアップルは「はあ、言われなくてもやりますがな・・・。」でしょうか?なお、ジャナとカルスターズはアップル株を計20億円保有しているそうです(保有比率は0.2%程度の模様)。

 米国企業に対して言えることは、もう限界なのでしょうね。であれば、言えることがたくさんある日本企業をターゲットにするのは自然の流れと考えられます。しかし、日本企業をターゲットにしてくるのはアクティビストだけなのでしょうか?「アクティビストだけではなく、今や普通の機関投資家だって物を言ってくるだろうし、狙ってくるだろう。もしかしたら外人だけじゃないかもしれない」 確かにそうです。しかし、私が言いたいのは、日本企業を狙うのは、株式投資で儲けようとする投資家だけではない、ということです。

 議決権行使助言会社はどうでしょうか?日本企業を目の敵にしているように思えてなりません。「●●だから社長の選任議案に反対推奨!」 大したことのない理由で上場企業の経営トップに反対しろ!と言うのですか?正気の沙汰とは思えません。「女性役員の比率が低いーーー!社長の選任議案に反対だーーー!」 マジっすか?仕事のための仕事を作っていませんか?議決権行使助言会社にしてみれば、自分たちの存在意義を猛アピールするために、日本企業はかっこうのターゲットではないでしょうか?

 IRアドバイザーはどうでしょうか?なんだかよくわからない提案資料をいくつかの会社でご相談されたことがあります。私が読んでも「何をしたいのだろうか?」という内容です。たぶん、判明調査だけではビジネスに限界があるから、アドバイザリー契約を取りたいのでしょう。アクティビストが騒げば騒ぐほど「社長!大変な時代になりましたよ!もう買収防衛策なんて導入できない時代ですよ!我々と対策を考えましょう!」と言ってくるでしょう。どんな対策なのかまず説明しろ、と言ってみてください。何もないか、当たり前のことしか言えないはずですから。「今の時代、判明調査をやらないなんてあり得ませんよ!」 本当ですか?そもそも何のための株主判明調査なのでしょうか?IR活動のため?SR活動のため?だとしたら、「判明調査をやるコストがもったいないので、実質株主の皆さん、オレは●株保有する株主だ、業績見通しの説明をしに来てくれ、と当社に言ってください。保有株数次第でご訪問して説明します。」と開示したら、判明調査って必要ですかね?もしかしたら「よからぬアクティビストが貴社の株式を取得しているかもしれませんよ!判明調査で確認し、対応策を練っておくことが重要ですよ!」というセールストークを展開しているのかもしれませんが、そもそも、アクティビストが株式を保有していることが判明しようがしまいが、敵対的買収対策や株主提案対策は常日頃からやっておく必要があります。アクティビストの株式保有が判明したからと言って、何ができるのでしょうか?「買収防衛策の導入だ!」 そんなことはアクティビストの保有が判明する前にやっておくべきことです。そして彼らの究極のセールストークは「念のため!」です。念のために株主判明調査を行い、いったい何百万円を請求するつもりなのでしょうか・・・。あと「みんなやってますよ!」と言ってくる強者もいます。こういう人は適当にあしらってください。

 では証券会社は?以前聞いたかもしれませんが、皆さんのところに買収防衛策の導入・廃止状況、ソレキアのケーススタディなどを説明しに来ていますか?たぶん、来ていないのではないでしょうか。このご時世だからこそ、10年前と同じように「買収防衛策を導入する必要がありますよ」と提案する必要があると考えます。少なくとも、主幹事証券としてお客様に情報提供くらいはすべきでしょう。でも証券会社はしません。なぜでしょうか?買収防衛策で事業会社を守るよりも、事業会社に買収提案がなされた方が儲かるから、ではないでしょうか?買収防衛策導入のコンサルティングなどで証券会社は大したお金を取ることはできません。でもこれが、有事の対応になったら?ケタが大きく変わってきます。証券会社に限らず、皆さんが有事になってくれた方が皆さんを取り巻く関係者は儲かります。だから「買収防衛策を導入し、事業会社にアクティビストや買収者が寄り付かなくなったら儲からない」と考え、買収防衛策の必要性を彼らは訴えないのかもしれません。まあ、単純に買収防衛策などの企業防衛の専門家がいないだけかもしれませんが・・・。

 日本企業を狙っているのは、アクティビストだけではないのです。議決権行使助言会社、IRアドバイザー、証券会社・・・。みんなが日本企業を食い物にしようと虎視眈々と狙っているような気がします。

 なんだか腹立たしいので、替え歌を作ってみました。

タイトル「僕らはみんな狙われている」

川汽だ~って~♪

黒田だ~って~♪

ソレキアだ~って~♪

みんなみんな♪ 餌食になるんだ♪ 食い物な~ん~だ~♪

 

 悪ふざけが過ぎたでしょうか・・・。気分を害した方、お詫び申し上げます。ただ、日本企業を狙っているのはアクティビストだけではなく、味方であると思っていた人たちも狙っているかもしれないと考えた方がよさそうです。

 

 

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