2018年01月23日

No.253 買収防衛策廃止など GMOに株主提案 香港ファンド「オアシス」(2018/1/19日経)

 2018年1月19日(土)の日経17面にあった記事です。パソナグループやアサツーディ・ケイ、パナホームなどにいちゃもんをつけた香港のファンド「オアシス」が今度はGMOインターネット(以下GMO)にいちゃもんをつけました。3月下旬に予定されている株主総会で、買収防衛策の廃止や指名委員会等設置会社への移行、などを株主提案しました。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000029588.html

 オアシスはGMOの買収防衛策に関して、以下のような主張をしています。

本来、潜在的な企業買収の可能性は、オーナー取締役やその他取締役に、企業価値向上や株価上昇を促すものであり、彼らの怠惰な経営を抑止する牽制機能を有しています。
このように、潜在的な買収者の存在が少数株主の利益となり得るにもかかわらず、GMOインターネットは買収防衛策を導入しているだけでなく、同社の採用する買収防衛策は、導入に際しても発動に際しても、株主総会の決議を要しないものとなっています。これは、実態的には株主の意思が反映される余地がない仕組みとなっていることを意味し、2005年5月27日に経済産業省及び法務省より公表された「企業価値・株主共同利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」や、2015年6月1日に株式会社東京証券取引所が発表した「コーポレートガバナンス・コード~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~」のいずれの指針にも反することは明らかです。

 GMOが導入している買収防衛策は取締役会決議で導入されたものです。株主総会の承認を得ていません。私が従来から主張しているものです。私は、買収防衛策は取締役会決議で導入すればいいじゃん、と考えています。オアシスは「株主の意思が反映される余地がない仕組み」と主張しています。??? 余地はあるでしょ。だって、GMOの取締役を入れ替えてしまえば、買収防衛策の仕組みを変えることはできますし、廃止することだってできます。企業価値研究会などで指摘されているのは「デッドハンド型の買収防衛策はダメ」ではないでしょうか?デッドハンド型とは?野村證券の証券用語解説集を添付します。

https://www.nomura.co.jp/terms/japan/te/deadhand.html

 取締役の過半数を入れ替えても、変更・廃止することができない買収防衛策のことをデッドハンド型の買収防衛策と言います。GMOの買収防衛策はそうはなっていませんから、オアシスの主張は言い過ぎです(まあ、おそらく「実態的には・・・意味し」ということで、安定株主比率が高いから、そもそも実態として買収防衛策を変えようがないと言いたいのかもしれません)。また、企業価値研究会の指針やCGコードに反すると主張していますが、本当でしょうか?ウソでしょ?だって反していないですもの・・・。

 ところで、GMOの株主構成はどうなっているのでしょうか?株主提案が可決されるかどうかは、株主構成が最も重要になってきます。

 上位大株主に「熊谷」さんがいます。そうです。GMOは熊谷社長の会社です。熊谷さんが個人とおそらく資産管理会社で合計40.67%保有しています。この株主提案は100%否決されます。当たり前です。そもそも、上場子会社やオーナーがある程度の株式を保有している会社に対して、株主提案をするファンドの神経がわかりません。「熊谷社長の独断経営だ!」と批判しているみたいですが、そりゃそうでしょ?オーナーなんですから。そんなの有価証券報告書を見りゃ、熊谷さんがオーナーだってわかるでしょ?イヤなら投資すんなよ・・・。熊谷さんが20%程度しか保有していないのなら、わかりますよ。「20%の株式しか保有していないのに、勝手な経営するな!」と。でも、40%も保有してりゃあ、好きなように経営するでしょ?文句つける先を間違っていると思います。

 また、オアシスはGMOに対して以下のような文句もつけています。

 オアシスの主張によると、過去、GMOは債務超過寸前に陥ったそうで、その際、500億円での買収提案などがあったそうです。しかし、熊谷社長はこの提案を「独断」で断ったそうです。これに対してオアシスは「少数株主は著しい不利益を被った!」と主張しています。時価総額が500億円を下回る時期が数年間あったそうです。???上のオアシスが提示しているグラフによると、2009年から2012年頃まで500億円を下回っていたように見えますね。確かに・・・。で、今は?

 2,300億円です。いいじゃん。そのとき安い値段で売らなくてよかったじゃん。熊谷さんが毅然と断ってよかったじゃん。じゃないですかね・・・。そもそも、買収提案をした人も、熊谷さんがほぼ過半数を持っているから、熊谷さんに株を売ってくれと言ったんじゃないですか?で、熊谷さんは「500億円なんて安い値段では売らない!」とはねつけただけでしょ?そんなに欲しけりゃ、敵対的でも買いに行けばよかったじゃないですか。このオアシスさんは、いったい何が言いたいのかよくわかりません。これ、言いがかりじゃないですかね。熊谷社長を批判するのではなく、結局買わなかった買収者を批判すればいいんじゃないですか。そもそも、この時期、オアシスは株主でも何でもないでしょ・・・。いちゃもんをつけるために、過去のインタビュー記事を読み漁り「お!見つけた!この記事なら文句つけられるぞ」と考えたのでしょうか?あさましいし、超ヒマ人ですね・・・。

 いずれにせよ、GMOはどう反論するのでしょうか?非常に興味深いです。特に、買収防衛策を取締役会決議で導入していることについて。まあ、総会にかけても余裕で可決できるんですけどね。熊谷さんに「あ、そう。じゃあ総会にかけるわ」って言われたらお終いです。

 GMOに対する株主提案から得られるインプリケーションは、安定株主比率が高い企業やオーナー系企業であってもアクティビストのターゲットになる、ということです。

 なお、過去のインタビュー記事を読み漁って、企業のあら捜しをするファンドの行動を「あさましい」と申し上げましたが、それが彼らの仕事なのです。隙を見つけたら襲いかかります。イナゴの襲来です。

 

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