2018年02月08日

No.265 専門部隊の必要性について

 以前、子供が高熱を出した際、時間外だったので救急外来に連れて行きました。担当した医師は小児科の医師ではありません。内科の医師でした。まあ、小児科ではないけど、ちゃんと診断できるのでしょう。ただ、文句を言うつもりはないのですが、対応にはかなり不満でした。後日、小児科の看護師に話を聞いてみたところ「それは小児科の医師じゃないから対応に不満を感じたんですよ。子供が高熱を出しているときって、親御さんはとても不安なんですよね。その気持ちをくんで診断してあげないと、親御さんは不安になるし不満を感じるんです。内科と小児科って、同じ診療をするけど、ケアの仕方が全然違うんですよ。」との意見でした。なるほどなあ、と。

 これ、有事に陥った会社も同じです。以前、ソレキアに対する佐々木ベジによるTOBについて、私は「ソレキアについているアドバイザーは有事の経験がないんじゃないか?たぶん、平時のM&Aしか経験したことのない人たちがアドバイスしているんじゃないか?」とコラムNo.104で指摘しました。平時のM&Aと有事はまったく違います。何が一番違うでしょうか?それは、対象会社が「オレたちどうなっちゃうんだ?乗っ取られるの?オレたちの生活はどうなるの?」と不安になっているということです。そりゃあ不安になります。目つきが違います。ヘタなことを言おうもんなら激怒されます。激怒している役員を何度も見ました。ホントにちょっとしたことでも激怒します。「そない怒らんでも・・・」と何度も思いました。無事ことがすんでからお会いすると、ホントに穏やかな顔をしていらっしゃいます。「この人、こんなに優しい人だったんだ」と何度か思いました。

 有事の専門部隊が必要な理由はこれです。会社は生き物です。会社はその中にいる人たちで作られています。だから、突然敵対的TOBなど仕掛けられたら感情的になりますし、不安にもなります。その感情をコントロールし、落ち着かせ、冷静にさせないといけません。冷静にならないと、とんでもない施策をやりかねませんから。通常のM&Aを担当している部署は、このあたりの感情論をよく理解していません。だからソレキアはうまく対応できなかったのではないかと思います。

 もう一つ重要なことがあります。いくら有事の専門家、プロとは言っても、会社との信頼関係はなかなか構築できないものです。時間が必要になってきます。まあ、また無理やり結びつける訳ではないのですが、買収防衛策がないと、最短で30営業日でTOBが終了します。1か月半です。その短い期間で、専門家と会社との間で信頼関係が構築できるでしょうか?難しいでしょうね。表面的な信頼関係は構築できるでしょうし、当然、構築しますが、心の底から会社が専門家を信頼してくれるかというと難しいでしょう。おそらく会社は専門家の言っていることが理解できなくても「まあ、専門家が言っているんだから従っておこう」という気持ちではないかと思います。

 ただ、逆に言えば、平時から会社が信頼できる専門家を選定し、信頼関係を構築し、有事に対する理解も深めておけば、何も怖いものなどないということではないでしょうか。企業防衛の追求=企業価値向上策の追求ですから。カテナチオの追求です。

 

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