2020年03月12日

No.787(無料公開)このコラムをぜひ読んでいただきたいです。

東芝機械は今やっていることを昨年やっておけばよかったですよね?というのも、普通に疑問なのですが、今東芝機械は対抗措置発動議案を可決させるために必死に株主に訴えているんですよね?どうしてそれを昨年の買収防衛策更新時にやらなかったのでしょうか?例えば、昨年3月に買収防衛策継続を公表し、必死に株主に対して説明して可決させれば、村上さんたちに少なくとも突然敵対的TOBを仕掛けられることはなかったのではないでしょうか?今やっている対抗措置発動議案に賛成票を投じてくれるくらいなら、普通に事前警告型買収防衛策の継続議案にも賛成票を投じてくれたでしょう?

ではなぜ東芝機械は昨年買収防衛策を継続させるためにそのような努力をしなかったのでしょうか?簡単です。「村上ファンドは敵対的TOBまではしてこないだろう」「そこそこ儲かったら出て行くのだろう」「そんなに大量には買ってこないだろう」と考えていたのではないでしょうか?「だろう運転」ならぬ「だろう経営」です。

https://www.zurich.co.jp/car/useful/guide/cc-driving-attitude/

東芝機械は村上さんたちに買われている状況だったのですから、「10~15%程度ではなくもっと買われるかもしれない」「村上ファンドは我々に対して敵対的TOBを実施してくるかもしれない」と考えなくてはならなかったのです。「かもしれない経営」です。そして「敵対的TOBを仕掛けてくるかもしれないから買収防衛策をちゃんと継続しておこう」と考えて、いろんな努力や工夫をして継続すべきだったのです。

アクティビスト・ファンドに大量の株式を取得されたり、突然敵対的TOBを仕掛けられたりした会社は、みんな「だろう経営」をしていたのではないでしょうか?「まさか当社がアクティビスト・ファンドに狙われることはないだろう」「当社に敵対的TOBなんて起きる訳がないだろう」と。そして「買収防衛策を廃止しても問題ないだろう」と考えて買収防衛策を廃止し、とんでもないことになりました。東芝機械だけではありません。例えば川崎汽船だってかつては買収防衛策を導入していましたが廃止しました。「買収防衛策なんてなくても大丈夫だろう」と考えたのではないでしょうか?廃止後、エフィッシモが大量保有報告書を提出しました。「名門川崎汽船がエフィッシモに実質経営権を取られることなどないだろう。買われたとしても10%程度だろう」と考えていたのではないでしょうか?結果、エフィッシモに約38%もの株式を取得され、取締役を受け入れました。

今6月総会の会社は買収防衛策を廃止するか継続するかで悩んでいる会社もあると思います。「みんな廃止しているからうちも廃止しよう。東芝機械みたいにはならないだろう」と考えて廃止したほうが「今は」ラクです。買収防衛策議案が否決されてもしたら責任を問われるかもしれない。可決させたいけどその工夫がわからない。努力したところで国内機関投資家は反対するし、ISSは絶対に賛成推奨などしてくれない。「だったら廃止してしまった方がラクだ」 でもそのツケは必ず将来やってきます。今努力せず安易な方法を選んだ結果、将来の経営陣や従業員が苦労することになります。最悪、会社の名前がなくなることだってあります。

買収防衛策を継続するための工夫はあります。勇気をもって工夫すれば可決できる可能性はあります。今日本の会社はこれまで経験したことのない敵対的TOB時代を迎えつつあります。東芝機械に起きたことは決して他人事ではなく、貴社にも起きる可能性があります。東芝機械がターゲットになったのは?もちろん株価が安かったことが最大の原因ですが、株価が安い会社は他にもいくらでもあります。貴社だってそうです。

なぜ東芝機械が狙われたのか?簡単です。運が悪かっただけです。それだけの理由です。アクティビスト・ファンドのリストには貴社の名前があがっているかもしれません。「ど・れ・に・し・よ・う・か・な」と選別されている状態でしょう。どの会社も等しく狙われる可能性があります。狙われないように株価を上げておくことが最も重要ではありますが、株価は貴社の努力だけではどうしようできない側面もあります。今の株価が貴社の実態を表している株価だと思いますか?コロナショックのせいで株価はみんな下がっています。そういうときを狙ってくるのがアクティビストです。

今廃止するのはラクですが、将来痛い目を見ることのないよう、工夫して継続すべきではないでしょうか?事前警告型買収防衛策を廃止してしまった会社も再導入を検討すべきですし、導入したことのない会社は一から検討すべきではないかと思います。

 

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