2017年04月24日

No.84 3月開催の株主総会など2コラム

■3月開催の株主総会

 4月22日の日経17面に「3月開催の株主総会 低ROE企業 反対票目立つ」という記事がありました。アサツーDKの社長選任議案の賛成率が59.5%と前年より29.6ポイントも低下したそうです。では、参考までにアサツーDKの株主構成を見てみましょう。

 外国人株主比率が58.72%!!高すぎます。まあ、高すぎますと言っても、会社が株主構成をコントロールするのは難しいのでしょうがないのですが。5年平均のROEが5%を下回るから社長選任議案への反対票が増えたようです。アサツーDKの大量保有報告書をEDINETで見てみると、シルチェスターが17%を保有しています。英国の投資家で、一般的には口うるさい投資家と言われています。まあ、アクティビストです。一般的に口うるさくない投資家などいませんが、シルチェスターは中でもかなりうるさい方です。ご経験のある方、いらっしゃるのではないでしょうか?

 しかし、これだけ外国人株主比率が高くなってしまうと、なかなか厳しいです。株主構成をコントロールするための抜本的な対策を中長期かけて実行していくことが必要です。

■3月総会企業の買収防衛策~継続した企業と廃止した企業~

 これも4月22日の日経17面で掲載されている内容です。買収防衛策の継続議案に対する反対票も目立ったようで、サッポロホールディングスとアシックスの賛成率は8割を切ったそうです。「8割を切った」と日経は書いていますが、私からすると「8割近い株主が賛同している」です。8割近い株主の賛同を得たのですから大したものです。

サッポロホールディングスはかつて、アクティビストであるスティールパートナーズに株式を保有されたことがあります。では、サッポロホールディングスの株主構成を見てみましょう。

 外部からみた安定株主比率は約32%です。サッポロホールディングスの時価総額は約2,500億円ですので、時価総額からすると比較的高い水準であると思います。最近、買収防衛策を廃止した企業がありましたが、サッポロホールディングスは買収防衛策を継続しました。なぜでしょうか?

 答えは簡単です。スティールパートナーズ対応で苦労したから、でしょう。つまり、有事を経験したということです。有事を経験した会社は「買収防衛策があったから助かった」「買収防衛策がないと困る」と考えたはずです。買収防衛策を導入したけど何もなかった会社は「まあ廃止してもいいんじゃない?敵対的買収なんて今さら起きないだろう?」と考えたのでしょう。その結果が川崎汽船のようなケースです。買収防衛策に対して批判的な意見が多い現状において、サッポロホールディングスが買収防衛策を継続したことは英断だと思います。

 また、最近買収防衛策を廃止した会社は有事を経験していないことに加えて、おそらく、ソレキアやソフトブレーンのケースを知らないのだろうと思います。主幹事証券からケーススタディなどを紹介されていないのでしょう。先日、同じ業界に属する方と話しましたが「ソレキア?なんか起きてるの?」という反応でしたから、証券会社であっても知らない可能性があります。

有事のケースが発生しているにも関わらず知らないから「もう買収防衛策なんて必要ないだろう」と考えてしまうのです。私のコラムを読んでくださっている皆様の中には「確かに持ち合い解消が進んでいる今の世の中、昔よりも敵対的買収が発生するリスクが高まっているし、買収防衛策を廃止するなんてもってのほか。」「今こそ買収防衛策を真剣に検討すべきではないか」と考えている方がいらっしゃいます。ソレキアやソフトブレーン、または川崎汽船のケースを見れば「うちがターゲットになってもおかしくない」と考えて当然です。

なぜ敵対的買収が今起きている状況において買収防衛策を廃止したのか不思議でなりません。「安定株主比率が低下して総会で買収防衛策が否決されるリスクが高まったからじゃないの?」とおっしゃる方がいるかもしれません。であれば、株主総会への上程方法を工夫すればよいのです。ソレキアやソフトブレーンのケースを見たら「うちにとっても他人事ではない」と考えるはずです。ソレキアやソフトブレーンのケースを知らないから、安易に買収防衛策を廃止してしまうのでしょう。敵対的TOBが起きているし、市場で一気に過半数近くの株式を買われたケースだって起きているのです。正しい情報を入手していれば、買収防衛策の廃止など考えないはずです。

なお、買収防衛策を継続したからと言って油断は禁物です。買収防衛策の使い方を知っている方は少ないはずです。平時からいろいろな情報をインプットし、買収防衛策の使い方や有事の防衛方法を研究、議論してこそ、いざ有事となったときに機能します。

 

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