2018年03月23日

No.295 持ち合い開示に対して、ちょっとケンカ売ってみましょう

 コラムNo.293で持ち合い開示の記載案を示しました。「一定程度の資金を拠出し株式を保有することで会社として資金的リスクを負った上で、責任をもって経営基盤の拡大可能性を模索するために保有している。定期的に情報交換会を開催し、経営基盤の拡大に向けた協議を実施している。」です。

 さて、もう1個、記載案をお示しします。皆さんが今書いている政策投資株式の保有目的はなんでしょうか?例えば「安定した取引確保のため」「顧客との関係維持のため」「取引基盤の確保のため」などでしょうか?それでけっこうです。ただし、最初に以下の注記を入れてください。

 政策投資株式とは、将来の経営戦略の実現に向けて広く政策的に投資している株式と位置付けており、本来、保有目的を現時点では開示すべきではない株式もあります。例えば将来的な経営統合や本格的な資本業務提携を見据えて保有する場合などが該当します。ゆえに当社は政策投資株式の保有目的について具体的には記載しておりませんし、記載できないと考えております。なお、以下の政策投資株式に将来的なM&Aや資本業務提携の検討に関連する株式がある場合もございますし、ない場合もございます。

 これでどうでしょうか?ようは「なんでもかんでも開示、開示って言うな!世の中、言えることと言えないことがあるんじゃい!」ということです。そもそも株式を保有している理由をなんで言わなきゃならんのですか?おかしいでしょ?「持ち合いなんておかしいじゃないか?保有目的を言えない株式がほとんどなんだろ?上場会社は株主に対して説明する義務がある!」 そんなにイヤならその会社の株を買わなきゃいい。持ち合いしてない会社なんていくらでもある。

では、住友金属工業と経営統合した新日鐵は、住友金属工業株式の保有目的をどう書いていたのでしょうか?以下、2010/3期に係る有価証券報告書からの一部抜粋です。

 「事業活動の円滑な推進」 いいですね~。なぜ政策投資株式を持つのか?事業活動を円滑に推進させるためですね。すっきりしていてよいと思います。「将来的なM&Aも視野に入れて保有している」なんて書ける訳がありません。

 「よっしゃ!いっちょ金融庁と東証相手にケンカ売ったるか!?」とお考えになる会社様がいらしたら、どうぞご一報ください。ただ、真面目な話、きちんと企業サイドが情報発信していかないと、本当に金融庁や東証のいいようにされてしまいます。前回も書いたかもしれませんが、「安定した取引確保のためと書いているのであれば、保有株式ごとの取引金額を書け!」と言い出しかねません。この開示をしたところで、ケンカを売ることにはなりません。正しいことを書いていると思います。大変失礼ながら、企業経営をしたことのない、もしくは企業経営者と本気で対話したことのない金融庁や東証の方には持ち合いの真の目的なんてわからないと思います。経営者が保身のためにやっていると思っているのであれば大間違いなのです。会社のためなのです。

 持ち合いは、古くからある伝統的な企業防衛手法の一つです。誰でも思いつく方法と言ってしまえばそれまでですが、なかなか優れた方法です。だから今でもこの方法が継続されているのでしょう。皆さんの代で持ち合いを終わらせるわけにはいかんと思います。終わらせてしまっては諸先輩方に申し訳がたちません!

 

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