2016年12月27日

No.40 やっぱり敵対的買収でした

 昨日のコラムでも触れました。2016年11月23日にお送りしたIBコンサルティングコラムNo.23にまとめています。なお9月頃にお送りした会社紹介資料でも触れています。ソフトブレーンという会社がフュージョンパートナーにわずか数日で総議決権の45.57%を取得され、子会社化されました。そして8月12日にソフトブレーンは「株式会社フュージョンパートナーとの業務提携等に向けた協議開始に関するお知らせ」にて、フュージョンパートナーから業務提携の協議を行うことが提案されたため提携等を検討していく旨公表しました。

 11月23日のコラムでは「いやいや、これって普通に敵対的買収ですよね。」と書きました。株価・出来高と大量保有報告書に記載されている取得状況を掲載します。

 これだけ一気に買われて子会社化されてしまい業務提携の打診までされたので、提携を検討せざるをえなかったのでしょう。

12月26日にソフトブレーンが公表したプレスリリースの表題は「株式会社スカラ(旧株式会社フュージョンパートナー)との業務提携等に関する協議の打切りに関するお知らせ」となっています。けっこうセンセーショナルな表題です。ちなみに、フュージョンパートナーは社名をスカラに変更しています。

 内容を見ますと、以下の理由により業務提携の協議を打ち切るそうです。

・スカラ社からの提案について真摯に検討したが、コストに比して得られる効果が希薄

・8月15日に業務提携等に向けた協議を開始して以降本日まで、成果は得られていない

・近時においては当該協議自体が行われない状況

・当社株式の取得、業務提携等の提案は突然かつ一方的なものであったが、提案等につき真摯に検討したがシナジーが得られないことに加え、同社との信頼関係を構築することができなかった

・当社の株式取得について説明に対して不信感を持った

一方、スカラのほうは、「ソフトブレーン株式会社による発表に対する当社の見解」にて、

・両社の業務提携等に関する協議において、その実績結果としての成果の大小について、認識の相違はあるが、今後さらに協力し、両社の企業価値を向上することに力を注ぐ

・ソフトブレーンにおいては、当社による株式取得の経緯について不信感を持つ等のことから、今回の発表に至ったと思うが、当社としては、さらに丁寧に折衝を重ねて当社の真意を十分に伝え、ソフトブレーンの企業価値および株主価値を向上させることが目的であることを、理解していただく

と説明しています。

 ソフトブレーンとしては「45%も買われたから提案があるのなら検討するけどシナジー効果がないからもう協議はしません」ということでしょう。スカラは「いやいや、シナジーなくはないじゃない。もっと検討しましょうよ。先に株式を45%も買ったことは謝るからさあ」ってな感じでしょうか。

 年末に敵対的買収が起こりました(起こったというより、やっぱり敵対的買収でしたということがわかった、ですね)。時価総額が大きくない企業で起きたイベントであり、日経新聞での取り扱いも小さいので、それほど話題にはならないかもしれません。ただし、明確に敵対的買収であるとご認識ください。日本でも敵対的買収が起きています。

 しかし、ソフトブレーンは「もう協議しない!」と言い切ったはいいものの、これからどうするんでしょうか?議決権ベースで45%も持たれているので、株主総会の議決権行使率を勘案すると、実質的に過半数を持たれていると思います。ソフトブレーンはどういう対応を考えているのでしょうか?以下、想定される対応策を羅列します。

・友好的な相手先に第三者割当増資を行い、スカラの持分を引き下げる

・スカラから自己株取得で買い取る

・パックマンディフェンス

・焦土化作戦

 持ち合いを強化することも考えられるのですが、45%も持たれているので焼け石に水かと思います。抜本的な対抗策を打たないと、ソフトブレーンの役員は入れ替えられてしまう可能性があります。新聞記事によるとソフトブレーンは「来年3月の株主総会まで対応策を検討する」そうです。ソフトブレーンの対応には注目しておく必要があります。また、スカラの対応もです。

いずれにしても、今年はいろいろとありました。出光興産のように創業家の反対により経営統合がうまくいかない可能性が出てきたケースなど、非常に興味深いです。また、今年の6月総会における社長選任議案の賛成率の低さも注目に値します。株主の説得も一筋縄ではいかなくなってきた時代です。

そして最後の最後に、規模は大きくないものの敵対的買収です。なお、本ケースのポイントは過半数を取得したことではありません。「実質過半数」がポイントなんです。これは、守る方、攻める方ともに気づきにくい点ではありますが、これこそがポイントなんです。

 

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