No.73 エフィッシモが東芝株式を8.14%取得&TASAKIがMBOと報道
■エフィッシモが東芝株式を8.14%取得
2017年3月23日にエフィッシモが大量保有報告書を提出しました。東芝の株式を8.14%取得したそうです。最近はすでに取得している企業の買い増しなどもあまりしておらず「どうしているのかなあ」と懐かしく思っていたところ、思わぬ会社に投資していました。
報告義務発生日は3月15日(水)です。その日までに8.14%(345百万株)を取得しています。なんで東芝なんでしょうか?割安だから?だれか東芝の増資を引き受けるものが現れるかもしれないから?いろいろ考えられますが、いずれにしても、東芝の筆頭株主になる模様です。ただし、今後もさらに買い増すのかどうかは不透明です。というのも、外為法の関係上、エフィッシモが10%以上の株式を取得できるのかは不明だと思います。(https://www.boj.or.jp/about/services/tame/faq/data/t_naito.pdf)
外為法による中止命令を行ったケースとしては、英国の投資ファンドであるザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド(TCI)による電源開発株式の買い増しのケースが該当します。
不正会計の処理、決算短信の提出延期・・・やることがいっぱいある中で、突然、アクティビストファンドが大量保有報告書を提出しました。自業自得の部分もありますが、踏んだり蹴ったり状態です。やらなければならないことが増えてしまいました。
以前のコラムで「東芝は買収防衛策を廃止してよかったのだろうか」と書きました(IBコンサルティングコラムNo.57 2017/2/14)。安く買い叩いて、解体することだって可能と申し上げました。何かマイナスなことが起きると、株価が反応します。株価が大幅に下落すると、本質的な企業価値とのかい離が生じ、買収者が目をつけます。東芝の置かれている状況を考えると、買収防衛策を継続することは非常に困難だったと思いますが、そうではない企業にとってはやはり買収防衛策は継続した方がよいのだろうと思います。
■TASAKIがMBOと報道
宝飾品メーカーのTASAKIがMBOを実施するようです。「へえ」程度の記事かもしれませんが、私が着目したのは理由があります。TASAKIについては本コラムでも少しだけ触れたことがあります。TASAKIはある投資ファンドに株式を保有されています。そう、エフィッシモさんです。
このMBO、すんなりと終わるでしょうか?2017年1月10日にエフィッシモが提出した変更報告書によると、エフィッシモはTASAKI株式の6.27%(1,115,000株)を保有しています。取得金額はわかりませんが、MBOが報道される前の昨日終値(1,550円)で計算すると、約17億2,800万円です。東芝に650億円投資したエフィッシモにとっては微々たる額でしょう。報道では3割程度のプレミアムを付けるとされています。エフィッシモがそれに満足すれば、TOBに応募して終了です。では、エフィッシモが不満に思っていたらどういう行動に出るでしょうか?はい、カウンターTOBです。コストと時間をかけてやるかなあ?と思いますが、実施しても不思議はありません。TASAKIの株価を見てみますと、仮に足元の株価に3割のプレミアムをのせるとすると、だいたい2,000円くらいです。最近5年間で見ると、2015年あたりで3,000円を超えています。
果たしてエフィッシモは足元の株価に3割のせたTOB価格に満足するでしょうか?エフィッシモが何もしなかった場合、エフィッシモの投資先企業はどう思うでしょうか?「なるほど、エフィッシモは取得価格に3割くらいのせてMBOを提示したら納得してくれるんだね」と思わないでしょうか?そう思われることがエフィッシモにとって本意でしょうか?うーん、そう考えるとエフィッシモがカウンターTOBを仕掛けてくる可能性もあり得ますね。「この程度のプレミアムでは満足しないよ」という意思表示もかねて。
エフィッシモって、見る目がありますねえ。見る目があるのか、それとも、エフィッシモに狙われた会社はこうせざるを得なくなってしまうのか・・・