2018年06月07日

No.355 持ち合い株 売却進む(2018/6/6日経15面)

2月期決算の上場企業で金融機関や取引先などと株式を持ち合う政策保有株の削減が進んでいる。ユニー・ファミリーマートホールディングスは2018年2月期に大半の株を売却し、高島屋やイオンなども一部を手放した。このほど改定された企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)は持ち合い株の削減を明確に促している。今後、3月期決算の企業でも持ち合い圧縮の動きが広がりそうだ。

5月末までに金融庁に提出された有価証券報告書を調べた。ユニファミマはカゴメや東海東京フィナンシャル・ホールディングス株などを売却した。前期末の持ち合い株の簿価は1億9500万円と前の期より9割も減った。ユニファミマは持ち合い株を「意義が認められる場合を除き保有しない」と表明している。

ユニーファミマの2018/2期有価証券報告書を見ると、保有株式は16銘柄で金額は195百万円となっています。ちなみに2017/2期有価証券報告書では39銘柄で金額は1,835百万円でした。カゴメ(227,124株 655百万円)や東海東京フィナンシャル(291,000株 189百万円)などを売却したようです。しかし、良品計画(561,600株 13,338百万円)や西武ホールディングス(544,000株 1,046百万円)などはそのままです。そもそも、カゴメや東海東京の株式は金額も大したことないですね。良品計画や西武ホールディングスの株式の保有目的は「取引関係の円滑化を図るため保有しております」となっています。良品計画もユニーファミマの株式を保有しており(1,000,000株 8,090百万円)、保有目的は「安定的な取引継続のため」となっています。両社、どんな取引があるのでしょうか??ファミマとは取引なさそうですね。ユニーの店舗に無印良品が出店しているからでしょうか?

 そもそも、ユニーファミマは持ち合いなど「現時点」では必要のない会社です。

 大株主の状況は割愛しますが、安定株主と思われる株主は伊藤忠商事39.62%、NTTドコモ2.31%、日本生命1.98%、ファミリー持株会1.09%です。法人株主が45.50%+日本生命1.98%+ファミリー持株会1.09%=48.57%が安定株主比率です。伊藤忠商事の持ち分が変化しない限り、株主提案をされたり、敵対的買収がなされたりする可能性は低いでしょう。ただ、伊藤忠商事は商社ですから・・・。

 10年後の自社の株主構成を考えたほうがよいと思います。ちなみに、ファミリーマートとユニーは買収防衛策をかつて導入していました。なぜ導入していたのでしょうか?買収防衛策が流行していたから?いや、流行していたという背景があるかもしれませんが、それが直接の導入理由ではないでしょう。何かしらの買収リスクを考えて導入したのではないでしょうか?そのリスクは軽減されたのでしょうか?経営統合したから時価総額が大きくなった?伊藤忠という大株主がいるから安心?それはそれで廃止する理由にはなるでしょう。しかし、「時価総額が低下したら?」「伊藤忠がいないとしたら?」という観点から分析することが重要ではないでしょうか。

 「企業統治指針は持ち合い株の削減を明確に促している」 改定コーポレートガバナンスコードでは以下のように書いています。

 確かに「政策保有株式の縮減に関する方針・考え方など、政策保有に関する方針を開示すべきである」と書いています。なぜ東証がこのようなことを要請するのでしょうか?それは、上場企業の商品価値を高めたいからでしょう。「海外から見て日本の持ち合いは異質であるし、資本効率が損なわれている。だから投資したくないという海外投資家もいるだろう。持ち合いなんかやめさせて上場企業の商品価値を高め、海外投資家の資金を東証に呼び込もう!」と考えるのでしょうね。そりゃそうでしょう。東証も営利企業ですから、自分たちの利益になることをしたいはずですし、上場企業に持ち合いなんかされても、いいことなどありません。

 ただし、それは東証の都合です。彼らの利益の最大化を図るために、皆さんに持ち合いをやめさせたい、ということです。皆さんが意識しなければならないのは、株価だけではありません。海外投資家だけでもないのです。皆さんが意識すべきは株主利益だけではなく、会社の利益であることは間違いないでしょう。会社の利益の毀損につながるような株主提案や乗っ取り提案などに対しては、断固として反対すべきなのでしょう。そのためには、必要最低限の持ち合いは現実的に必要であろうと考えます。持ち合いの水準は各社によって異なるでしょう。時価総額が1兆円を超える企業が、何千億円もかけて持ち合いするのはやり過ぎでしょう。時価総額が1兆円もあれば、襲い掛かってくる買収者の属性は限られていると言えます。だから、総会運営を滞りなくできるようにするための持ち合い水準で十分という考え方もできます。一方、そうはいっても買収リスクを考えるともう少し安定株主がほしいと考える会社もあると思います。また、時価総額が5,000億円以下であれば、もっと違った見方もできるかもしれません。時価総額が5,000億円もあれば、かつてはアクティビストのターゲットになどならなかったでしょうが、今は違います。なります。時価総額が1,000億円を切っている場合、抜本的な対策が必要でしょう。

 安定株主を積み増すことなど不可能と考えるかもしれませんが、それは違うと思います。不可能と考える根拠は、現在の持ち合い=極悪という風潮のせいでしょう。であれば、持ち合いは決して極悪ではなく、最低限の必要悪であることを訴える必要があります。今回の持ち合い開示は非常に重要になってきます。持ち合いの正当性をきちんと訴え、「縮減する場面もあれば積み増す場面もある」ということを説明する必要があると思います。

 

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