2018年07月25日

No.389 ガバナンス向上へ株主総会の声を生かせ

ちょっと古い記事で申し訳ありませんが、2018年6月29日の日経の社説です。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO32388800Y8A620C1EA1000/

 株主総会の声ってなんでしょうか?株主総会場における株主の声でしょうか?だとすると、生かす声などありません。株主総会の壇上にいらっしゃる皆様や株主総会に出席したことのある方であれば当然わかることです。「お土産復活しろ~」 これ、どう生かすんですか?「●●支店の担当者の対応が悪い~」 お客様相談窓口に言ってくれ。記事を書いている記者の方やいろいろなところで意見を述べている学者の方、株主総会に出たことありますか?出てから言っていただきたい。

 ただ、この記事が言わんとしていることは、物理的な株主総会における出席株主の声ではなく、議決権行使を通じた株主の声のことだと思います。大林組の大林剛郎会長の選任議案の賛成率が72%だったことや独立性の低い社外役員の賛成率のことが指摘されています。このように反対票が多い議案について、真摯に受けとめるべきだと言っています。

 果たして本当に真摯に受け止めるべきなのでしょうか?だって、大林会長の賛成率は72%もあるんですよね?昔ならいざ知らず、今の世の中、役員の賛成率が70%台になることなどしょっちゅうあります。社外役員の独立性に対する考え方など、機関投資家の中でもいろいろな指針があるでしょう。世の中、機関投資家の議決権行使スタンスは多様化しています。ちなみに、大林組の株主構成は?

 法人株主8.50%、日本生命2.91%、大林会長2.36%、従業員持ち株会1.34%の合計15.11%です。外国人株主比率が37.91%もあります。そりゃ、会長の選任議案が低くなることもあるでしょう。むしろ問題なのは、ISSの言うとおりに議決権行使をしてしまう投資家サイドではないでしょうか?

 株主総会の声を生かせ、というより、この記事は「ISSの声を生かせ」と言っているように聞こえます。今の機関投資家の議決権行使は、特に外国人投資家はISSの言うとおりに行使していると言っても過言ではないのではないでしょうか?議決権行使スタンスだって、ISSの基準をもとに作った投資家だっているのではないでしょうか?

 経営者の皆さんは、賛成率の低い議案があったからと言って頭を悩ませる必要はありません。疲れるだけですから。「そういう考え方の人もいるのね」程度に考えておけばよいと思います。

 話は変わりますが、ゼネコンって多額の株式を保有しているわりに安定株主比率が低いのです。株を持たされてはいるけど、持ってもらっていないということですね。金融機関による保有株式の売却が進んでいるように、ゼネコンによる株式売却もいずれ進むと思います。

 

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