2018年07月26日

No.390 6月株主総会の注目議案

 株主提案をされた会社や経営トップの賛成率が低かった会社の一覧です(6月30日の日経5面などより)。株主提案に関しては「今年は株主提案が可決されるかもしれません!」とおっしゃっている方もいましたが、主な会社で可決されたケースはありませんでした。みずほFGと三菱UFJFGに対して毎年のように提案されている役員報酬の個別開示はそこそこの賛成率を取りますね。皆さん、1億円未満の方の報酬をなぜそんなに知りたいのでしょうか?そんなに他人の財布の中身が気になるのでしょうか・・・。新生銀行に対する株主提案は高い賛成率になっていますが、確か役員報酬を増額させる提案であり、会社側も反対はしていなかったように思います。武田薬品に対する大型M&Aをけん制するための定款変更も大した賛成を得られませんでしたね。

 株主提案に関して気になるケースは、アルパインです。増配と役員選任に関する株主提案の賛成率が30%近くになっています。アルプス電気という親会社がいる以上、普通決議の議案でも可決されることはないでしょう。しかし、30%近い賛成率を集められてしまったということが問題です。以前申し上げた通り、アルプス電気とアルパインは経営統合を予定していますが、当然、特別決議が必要な議案です。株主提案をしたオアシス以外にエリオットというアクティビストもアルパイン株式を取得しました。株主提案に対する賛成率やエリオットの登場を考慮すると、経営統合議案を可決させることは非常に厳しくなってきていると言えます。

また、経営トップの賛成率は60%台になってしまうケースもありました。各社共通しているのは外国人株主比率が高いということですね。それと、国内の機関投資家の議決権行使スタンスが厳しくなったことも影響しているのでしょう。しかし、東芝の外国人株主比率って72%もあるんですね・・・。こんなに高い水準の会社は初めて見ました。

今年の株主総会を振り返ってみて言えることは・・・「特になし。もう散々コラムで言いました。」でしょうかね・・・。

「今年の株主提案は過去最高です!」 はあ、そうですか。来年もまた「今年の株主提案は過去最高です!」って言うのでしょうね。で、それって何か重要ですか?これだけ外国人による投資が増えているのですから、株主提案もそりゃ増えるでしょうね。

「今年は株主提案が可決されるかもしれません!」 されませんでしたね。株主提案が可決されるかどうかは大して重要ではありません。重要なことは日本の上場会社の経営者が「安定株主比率が減って株主提案が可決されるかもしれない時代になった」「株主に批判される持ち合いは悪なのかもしれない」「もう持ち合いなどと言っている時代ではない」と思ってしまっていることではないでしょうか。株主提案が可決されるよりも、株主からの水面下での交渉が増えることのほうが重要になってきます。株主総会議案に関しては、経営者が弱気になり、株主が自分たちの交渉力が強くなっていると認識していることが非常に重要です。

「今年は買収防衛策を廃止する会社が過去最高になるでしょう!」 あんたがたが「買収防衛策は経営者の保身だ!」とか大騒ぎするから、日本の経営者が勘違いして廃止するんです。買収防衛策の仕組みを知らない素人が勝手なことをぬかさないほうがよいです。

紙面でガバナンス関連のことを述べている有識者って、ほとんどが本格的な経営に携わったことのない素人でしょ?「いや、私は●●株式会社の社外取締役であーる!」 責任を限定してもらっている社外取締役など、本格的な経営に携わっているとは言えません。社長、CFO経験者の意見こそが重要です。来年の株主総会に向けての議論はもう始めるべきでしょう。というか、株主総会に向けた議論などはいつでもしておく必要があると思います。酒飲みながらでもいいんじゃないですか。盛り上がると思いますよ。私ならガバナンスをつまみに何時間でも議論します。では来年の株主総会や持ち合い開示に向けた議論のテーマを一つご提供します。

「持ち合いは悪か?」

飲み会で仕事の話なんてしたくない!という若い方がいらっしゃるかもしれませんが、会社の飲み会なんて仕事ですよ。まあ、今のご時世、従業員が妻しかいない会社なのでこういうことが言えます。まあ、酔っ払ったときの議論は誰も覚えていないか、とんでもない内容だったりすることが多いので不毛かもしれません。

 

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