2021年04月19日

No.1056 会社は誰のものか?

今月の日経「私の履歴書」が非常に興味深いです。東京エレクトロンの東哲郎さんです。

シリコンバレーへ 東哲郎さん「私の履歴書」まとめ読み

4月17日(土) 東哲郎(16)社長就任 「若さ必要」46歳で覚悟 会長の小高さんらの打診受けるの最後に以下のようなことが記載されています。

顧客へのあいさつや6月の株主総会をこなし、就任にまつわる活動が一段落したころ、北海道のニセコ町にある会社施設で懇親会が開かれた。取締役や幹部クラスが参加し、私を激励するスピーチをしてくれた。リラックスして聞いていたが、小高さんの順番になると突然、むずかしい話が始まった。

「東君、会社は誰のものかわかっているかい。株主のものなんだよ。ステークホルダーはいろいろいるけれど、株主は別格なんだ」

告白すれば、私はふに落ちていなかった。グローバルエクセレントカンパニーと株主重視がどうも結びつかない。株主にも配当で報いたいとは思うが、そこまで優先順位が高いだろうか。顧客と社員のほうがずっと大事だと感じる。

こんな中途半端な気持ちで会社のかじ取りなどできない。彼はどう考えているのだろうか。ぜひ意見を聞いてみたい人物が米国にいた。

ええ、私もふに落ちません(笑) なので東京エレクトロンの歴史を調べてみました。まず東京エレクトロンのHPです。

https://www.tel.co.jp/about/milestones/

以下、「東京エレクトロン 小高」で調べたらヒットしたページです。

https://the-shashi.com/tse/8035/

東京エレクトロンの設立時に出資した投資家は、TBS(東京放送)である。当時のTBSの今道潤三社長は東京エレクトロンの創業に資金を出すものの「金は出すが、口は出さない」という方針のもとで経営を見守ったと言われている。創業期の東京エレクトロンに対して、TBSの本社がある赤坂のオフィスを貸し出したり、TBSの社員を応援要員として東京エレクトロンに送り込むなど、惜しみない支援を行なっている。

なるほど。理解しました。皆さんご存知のとおり、私は「会社は株主のもの」と考えたことは一度もありません。なぜなら会社はものではないからです。でも東京エレクトロンの小高さんもおそらく「会社はもの」とは考えていないと思います。単に例えやすいから「会社は株主のもの」と言っただけだろうと思います。僭越ながら、小高さんと私の考え方は同じだと思います。すみません、まだまだちっぽけな会社の経営者に過ぎない私と小高さんを同列にするつもりはないのですが・・・。

仮に会社がものだとして、では当社は誰のものか?と問われたら私は迷いなく「お客様のものです」と答えます。当社を設立したのは2016年7月です。コラムの配信を始めたのは2016年9月です。設立する際に考えたのは「3~5年で軌道に乗せる」です。まあ、手元にある資金では3年程度で軌道に乗せないと生活できないから、ですけど(笑) 一方で3年程度で軌道に乗せられなければ自分の理念や考え方が間違っていたということだから、あきらめようと思っていました。そして2017年2月に佐々木ベジがソレキアに敵対的TOBを仕掛け、ソレキアが何らかの対抗策を打つと考え、ソレキア株に張ったところ、それなりの金額を設けることができたので「あと5年は生き延びられる」という状態になりました。そして2018年5月頃にコラムの有料化、2018年7月1日にHPを開設しました。私のことを覚えていてくださった方もいらっしゃれば、「名刺はあるけど誰だっけ?」という方もいらっしゃいました。そんな皆さんが私を信頼してくださり、お客様になってくださいました。現在の当社があるのは皆さんのおかげですから、私は「当社はお客様のもの」と迷いなく回答します。

東京エレクトロンはTBSの出資や応援で支えられてきたと小高さんは考えているからこそ「東京エレクトロンがあるのは創業時から支援をしてくださった株主のおかげ。東京エレクトロンは株主のものだ」と考えていらっしゃるのかなと思います。そして社長を託す東さんに対して「会社は株主のもの」とおっしゃった真意は「東京エレクトロンが今あるのは誰のおかげか?東京エレクトロンの原点を見つめなおせ」ということなのかなと想像します。

そして4月18日(日)東哲郎(17)株主重視 米企業トップに教え請う 「一流の信頼」獲得を経営目標にに以下のとおりあります。

私がロジャーにぶつけた疑問は2つある。まず、米国の取締役会はCEOと最高財務責任者(CFO)を除くとあとは社外の人材というケースが多い。社内の人材が圧倒的という日本の取締役会とずいぶん違う。どう思う?

「それはCEO次第だ」とロジャーは言った。たとえ社外取締役が多数派でも、CEOの言いなりという会社が米国でも珍しくない。つまり、社外か社内かは問題の本質ではない。自分が御しやすいイエスマンばかりの陣容にするか、耳が痛いことも忠告してくれる陣容にするか。はじめにCEOがそれを決めるのが肝心だと。

なるほど。ではもう一問。米国では1990年代に機関投資家が発言力を増した。経営に役立っているの?

ロジャーが答えた。「機関投資家も一様ではない。大きく2種類だ」。短期で株を売り買いしもうけたがるタイプがいる一方で、中長期にわたって会社を見守り、経営者に意見を言うタイプもいる。目先の利害で動く投資家か否か。その見極めが大切だと。

米国の経営者も本音ではこういうふうに考えているんですね。仏作って魂入れず、ではダメということでしょう。そして私がもっとも気になるのは「投資家も一様ではない。大きく2種類だ」という点です。東京エレクトロンは自社への出資者の選択を誤りませんでした。相互の信頼関係が芽生え、経営者が「今があるのは誰のおかげか?」と考え続けているのでしょう。一方でその出資者を見る目がなかったのが東芝でしょうか?明日のコラムにしますが、東芝は投資家を見る目がなく、その場しのぎでアクティビストへの増資を選択したことから今があるのだと思います。

今日の話は皆さんにとって当たり前のことだと思いますし、新鮮味もない話かもしれません。ただ、東芝の例は極端なケースではあるものの、皆さんがアクティビストに狙われることはあり得ます。アクティビストに狙われるということは、それが今の会社の状態であるということです。言い方は悪いですが「アクティビストに狙われてしまう会社」なのです。以前、旧村上ファンドの特集で以下のとおりホリエモンが答えていました。

https://www.tv-tokyo.co.jp/plus/business/entry/2019/019049.html

「村上さんに狙われている企業はアンダーバリュー。村上さんに投資されたら"ダメな会社なんだ"と思わないと...」とも語り、今も衰えない村上氏の嗅覚の鋭さを指摘する。」

ダメな会社とは言いませんが、狙われてしまうということはやはり投資家からの視点で「できること(株主還元)をやっていない会社」に見えるということでしょう。

今の会社の株主構成が今の貴社を表しているということかな、と思います。

 

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