2017年11月24日

No.215 企業統治改善へ共同対話(2017/11/7日経)

 ちょっと前の記事ですが、企業年金連合会と三菱UFJ信託銀行など大手金融機関4社が、企業への発言力向上をめざして連携するそうです。企業統治の改善などを求めて連名の書簡を年内にも投資先の数十社に送り、来年6月の株主総会シーズンに向けては共同で企業との対話に挑むそうです。

 私は非常に違和感を感じます。どうして投資家だけが連携するのでしょうか?なぜ共同で企業との対話に挑むのでしょうか?それぞれがそれぞれのスタンスで投資しているのですから、個別に対話すりゃいいじゃないですか。そもそも、日本の企業サイドも連携して投資家に「議決権行使スタンスの改善」などを求めて連名で書簡を送るべきではないでしょうか?今日のコラムはどうすべきかという結論はあまりありません。愚痴です。

 投資家サイドばかりが日本企業に対して文句を言う。しかも共同で。おかしくないですかね?株主だから何を言ってもよいのか、何をしてもよいのかというと、そうではないと思うのです。買収防衛策は経営者の保身である。本当にそうなのか?本当にプレスリリースを読んだうえでそう言っているのか?あのプレスを読んで、日本の買収防衛策が保身に使えると考えているのであれば、ちゃんとプレスを読んでいないか、読む能力がないかのどちらかです。日本の買収防衛策は保身に使えませんし、日本の経営者は保身に使いませんし、私が保身に使わせません。実際に保身に使わない経営者を見てきた私が言うのだから間違いありません。

 投資家の最大の怠慢はISSを使うことです。まあ、日本の機関投資家は参考にしている程度で全面的に従っている訳ではないと思いますが、ISSのスタンスに流されているところはあると思います。大塚家具のプロキシーファイト時のISSのスタンスなんて、おかしいの一言です。家具屋の経営をしたことのない、家具屋の専門家でもない人が「久美子さんを支持すべきだ!」と主張していました。その結果は?今期の予想最終利益は70億円の赤字です。惨憺たるものです。その結果に対する反省の弁もありません。あれほどいつも、日本企業に対して説明責任を求めているのに、自分たちの推奨結果に対する説明責任は全く果たしていません。上場企業の議決権行使という最も大切なイベントに対して、無責任な推奨をし、それに投資家が従う。おかしな構図です。

 これに対して、日本企業はそろそろ声を上げるべき時期に来ているのではないかと考えます。一方的に日本企業だけが悪者にされていますが、そうとは思えません。社外取締役を選任するかどうかも、国によってコーポレートガバナンスの特徴は違うでしょうし、一概に社外取締役が過半数いればよいという訳でもありません。エンロンやワールドコムなどの不正は米国で起きたのですから。まあ、最近の日本企業は企業不祥事についてちょっとものを言い難い状況にあるとは思いますが・・・。

 議決権行使をする機関投資家に対して、正面切って文句を言うのは勇気がいるかもしれませんね。ただし、おかしな議決権行使スタンスやISSへの依存に関しては、きちんと物申すべきです。おかしいものはおかしい、と。IRの場でドツメすべきですよ。ドツメって言葉、一般的には使いませんかね?品のない言葉ですみません。

 

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