2024年01月29日

No.1673 ツルハはイオンに有事型買収防衛策で対抗してはどうか

イオンがオアシスが保有するツルハ株を取得することが報じられ、イオンも「ツルハHDの株式取得のための独占交渉開始についてのお知らせ」を公表しました。本コラムではイオンの狙いとツルハの対抗策をまとめます。ちょっと長いですが、お付き合いください。それなりの内容をまとめたつもりですし、そこそこ価値はあると思っています。もうタイミングがタイミングなので無料公開します。ざっと書いたので、間違いなどがあったらすみません。

まず、日経の記事です。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC24D0H0U4A120C2000000/?n_cid=NMAIL006_20240129_Y

そしてイオンの公表資料です。

https://www.release.tdnet.info/inbs/140120240129520762.pdf

当社は、ツルハの株式を、オアシスが運用するファンドから取得することについて、オアシスとの間で独占的に交渉を開始いたしますので、お知らせいたします。

当社がオアシス・ファンドの保有するツルハ株を取得することが、ツルハとの資本業務提携に基づく関係の維持・強化につながることになると考え、この度の本株式取得に向けた独占交渉を開始した次第であります。

なお、株式取得の数、価額、方法、時期その他の条件については、今後オアシスと協議の上検討していきます。決定次第、速やかにお知らせいたします。

私この記事を見てまず思ったのは「イオンさん、ちょっと順番間違えてない?」ということです。詳しい解説は避けます。明日顧問契約先向けコラムでお伝えします。かなり戦略的な内容なので。

イオンがなぜオアシスが保有するツルハ株を取得しようとするのか?ですが、おそらく以下の非公開化を阻止することが目的なのかなと想像します。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-11-15/S41OQXT1UM0W01

私の想像にすぎませんが、ツルハがプライベートエクイティファンドなどとともに非公開化するという報道が昨年11月になされましたが、これ、もし本当にやるとしたらTOBを実施するわけです。そしてTOB後の100%化手続きのためには臨時株主総会で特別決議を取る必要がありますから、TOB成立の下限として総議決権の2/3以上の応募がないと不成立ですよ、という要件をつけます。

だからイオンは自身が所有する議決権13.59%にオアシス分13.08%を加えると26.67%になります。イオンに議決権ベースで26.67%も持たれてしまうと、ほかにも応募しない株主が存在することなどを考えると、非公開化のためのTOBが不成立になるリスクが高まります。イオンは非公開化のTOBを阻止することを目的にしている可能性があります。実際にオアシスからイオンが株を買ってしまうと、非公開化のためのTOBは限りなく成立するのが難しくなるでしょうね。※ただ、イオンさんはちょっと間違えたんじゃないの???と私は思っていますが。

ではツルハに対抗策はないのでしょうか?ありますね。ツルハはイオンをターゲットにした有事型買収防衛策を導入して対抗すればよいのです。どういう理屈かと言うと、以下の通りです。これはあくまでマスコミ報道などをもとにした私の想像ですので。

・イオンはオアシスが保有する当社株式を取得するための独占交渉を開始したと公表した。

・当社は昨年非公開化を検討していると報道されたが、現在様々な経営施策を検討しているが、非公開化もその一つである。

・非公開化のための条件として当社は全株買収による必要があると考えているが、イオンがオアシスから当社株式を取得した場合、実質的に拒否権に近い割合を所有することになるため、全株買収が困難となる。

・イオンがいくらでオアシスから当社株式を取得するのか?本当に実行できるのか?はわからないが、仮に実行された場合、オアシスがイオンに保有株を買い取ってもらえることで多額の利益を得る一方、非公開化を目的とした全株買収のTOBが成立しない可能性が高くなるため、オアシス以外の一般株主は利益を得ることができなくなる。

・当社は、非公開化による全株買収のTOBを検討している状況において、イオンに対してはオアシスという特定の株主から当社株式を取得するのではなく、当社の全株式を取得するよう要請する。

・当社が全株主の利益のために要請しているにも関わらず、イオンがオアシス保有株の取得を強行しないよう、当社は本日をもってイオンを対象にした有事型買収防衛策を導入する。イオンが当社株式の20%以上を取得しようとする場合、買収提案にかかる詳細な情報の提供と検討するためや代替案を交渉するための時間を確保するためのルールである。

こんな感じです。では、さらにわかりやすく言いますね。以下、ツルハの株価です。

昨年2022年11月中旬の非公開化のニュースが報じられたせいか、株価が急騰しました。仮にですが、ツルハが予定している非公開化のためのTOBの価格を13,000円としましょう。今日の終値は12,570円なので3%程度のプレミアムではありませんが、まあ報道を踏まえてTOBは株価に織り込まれたとして、仮13,000円とします。

一方イオンが予定しているオアシスからの取得価格を15,000円としましょうか。仮です。TOB価格が仮13,000円に対して、オアシスからの取得価格は仮15,000円です。オアシスはTOBに応募するより、イオンに買ってもらった方が得ですね。でもオアシス以外の一般株主はどうでしょうか?

イオンがオアシスからツルハ株を買ってしまうと、所有割合は26.67%となり、TOB成立の要件として下限2/3が設定されているとTOBは成立しない可能性が高くなります。オアシスが15,000円でツルハ株を売却できる一方、一般株主はTOBが成立しないことで利益を手にすることができません。

ですからツルハはイオンに対して「イオンさんの取引はオアシスだけが得をする可能性が高い取引だ!こちらは15,000円より安いものの、TOBにより全株主から株を買い取ると言っており、全株主が得をする取引だ!イオンさんは特定の株主から当社株を買うのではなく全株主から買うべきだ!」と主張し、「オアシスからの株式取得をしようとするなら、当社はイオンさんを対象にした有事型買収防衛策を導入します!」として、イオンが20%以上のツルハ株式を取得する場合、ルールに則って情報と時間を提供せよ、最終的には臨時株主総会を開催してイオンを対象にした買収防衛策を発動するかどうか決める、という内容の有事型買収防衛策を導入します。ただし、イオンが「わかった。だったら全株買収に条件を変える」としたら有事型買収防衛策は廃止します。

こんな感じでどうですか?イオンさん、ちょっと間違えたんじゃないかなあ。結果的には同じかもしれないのですが、僕なら違うやり方にしました。だってこのやり方じゃあ、大義や理屈がたちませんよ。

 

 

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