2024年02月06日

No.1681 焼津水産化学が2度目の非公開化TOBを実施

これ、最初見たとき「2度目のTOBを価格を上げてやるんかい!最初のTOB価格はなんだったんだ!」と思いましたが、よく読むと、買付者が変わりましたね。

https://www.release.tdnet.info/inbs/140120240205526652.pdf

前回はJスターという投資家がTOBをかけて焼津水産を非公開化する予定でしたが、今回の買付者はJump Life株式会社で静岡県清水市の会社ですが、この会社は焼津水産への買収を目的に設立された会社で、実質的な買付者はいなば食品株式会社です。いなば食品?と思いまして調べたところ、以下の会社です。超有名ですね。ツナ缶や!そして

https://www.inaba-foods.jp/

いなばCIAOちゅ~るや!

https://www.inaba-petfood.co.jp/product/dog/

けっこう大きい会社なんですね。

いなばグループにおける2022年度の連結売上高は108,800百万円、連結営業利益は6,300百万円、従業員は合計4,060名であり、2023年2月には2023年度から2026年度までの中期経営計画を策定し、2026年度の連結売上高として260,000百万円、連結営業利益として22,000百万円を掲げているとのことです。いなばグループには、その基幹子会社として、いなば食品に加えて、いなばペットフード株式会社(平成9年設立)が存在し、同社はCIAOチュール等を商品とするペットフード事業を営んでいるとのことです。

なお焼津水産の主な株主(鈴与グループ)とはTOBへの応募契約を締結済み、そして旧村上ファンドともです。以下の通り。なお、TOBは全株買収で下限2/3の応募がないと不成立です。

当社は、2024年1月31日に、㈱シティインデックスイレブンス(所有普通株式数100株、所有割合0.00%)、㈱南青山不動産(所有普通株式数 1,122,700株、所有割合9.81%)及び㈱エスグラントコーポレーション(所有普通株式数62,900株、所有割合0.55%)(シティインデックスイレブンスらが保有する所有普通株式1,185,70株、合計所有割合10.36%)から、シティインデックスイレブンスらが保有している当社株式の全てについて、公開買付者が公開買付価格を1株当たり 1,350円以上として本公開買付けを開始した場合、本公開買付けに係る公開買付期間中に、市場での売却又は本公開買付けへの応募を通じて処分する旨の意向を確認しています。

焼津水産は前回、JスターによるTOBで非公開化しようとしていたわけですが、以下の通り、旧村上ファンドや3DがTOB期間中に焼津水産株を取得し、市場株価がTOB価格を上回ってしまったせいで、TOBは不成立となりました。不成立と発表されたのは2023年10月19日です。

https://ib-consulting.jp/newspaper/4906/

以下のコラムでは、一応、2回目あるんじゃないの?とは予想しましたが、予想が当たったことに価値があるわけではないです。

https://ib-consulting.jp/column/4936/

前回TOBの最中、焼津水産は旧村上ファンドに説明したみたいですが、賛同してもらえなかったようです。

そして2023年11月中旬に「戦略的パートナーの探索を再度実施することを決定し、戦略的パートナーとなり得る事業会社や投資ファンドを探索する方法について検討を開始」だそうです。2023年12月1日、取引関係のあったいなばグループから非公開化提案の打診を受け、検討が始まったようです。

で、今回のTOB価格は前回TOB時の1,137円を超える1,350円なのですが、私、常々申し上げている通り、非公開化・MBO時において取締役会が賛同しておきながら、アクティビストが登場するやいなやTOB価格を引き上げる事例がありますが、それに対して「だったら最初からもっとも高いTOB価格を出せ!内部事情を一番知っている経営陣が買収に参加するんだろう?価格の引き上げはあり得ない!安い価格で株主から搾取するつもりだったのか?」と批判しています。まあ、今回はMBOではなく、非公開化なのですが、それでもTOB価格についてはきちんと取締役会が検討すべきです。

ただ、今回の引き上げは問題ないですね。なぜなら前回TOBはJスターという投資ファンド・フィナンシャルバイヤーだったわけですが、今回はいなばグループというストラテジックバイヤーです。フィナンシャルバイヤーがTOB価格を決める場合、シナジーを価格に織り込むことができず、焼津水産スタンドアローンの価値をベースにしなくてはなりません。

一方、いなばグループというストラテジックバイヤーの場合、いなばグループと焼津水産で生じるシナジー効果をTOB価格に織り込むことができ、より高い価格を設定できます。

そういう面から今回のTOB価格の引き上げは理屈が立っていると思います。

 

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