2017年10月02日

No.178 社長!株価はマーケットの声です!

 「社長!株価はマーケットの声です!」とか「社長!株価は社長の通信簿です!」とか言う証券マンがいます。私は「ホンマかいな?」と思っています。

 以下、佐々木ベジさんに敵対的TOBを仕掛けられた際の、ソレキアの株価出来高を見てみましょう。ソレキアばっかりですみません。でもいいケースなんですよ。2017年2月1日~5月31日のデータです。

 佐々木ベジさんがTOBを開始したのは2月3日からです。このときのTOB価格は2,800円でした。アービトラージを目的とした投資家が市場で買っているのでしょう。さや取りですね。わかりやすく言えば、2,800円でベジさんが必ず買ってくれるのだから、2,799円で買えば、1円さやを抜くことができる、と考えて投資する人たちが買っています。まあ、これはわかります。しかし、当時、私が理解できなかったのは、富士通が3,500円でカウンターTOBをかけると公表した翌々営業日(翌営業日はストップ高でした)の相場です。私も寄付きで買いに行きました。しかし、内心では「富士通がカウンターTOBをかけてきたのだから、当然、ベジはTOB価格を引き上げる。であれば、今ソレキアの株をマーケットで売る人などいるのだろうか?」と思っていました。私からすると、ベジさんが価格を引き上げることは一目瞭然でしたし、当然、マーケットもそう考えているだろうと思っていたのです。しかし、結果として、3,535円で買うことができました。逆の見方をすれば、3,535円で売った株主がいるということです。

 私は「3,535円で買えてラッキー!しかし、これからTOB合戦が始まってドンドン株価が上がるというのに、どうして3,535円で売ってしまう株主がいるのだろうか?」と不思議でしょうがありませんでした。マーケットの専門家に意見を求めたところ「マーケットにはいろんな投資家がいる。考えて行動する投資家もいれば、瞬発力だけで行動する投資家もいる。マーケットが常に万能などという考え方は捨てた方がよい」という意見でした。

 もちろん、ソレキアのケースは有事のケースであり、ソレキアのみをもってマーケットを論じるつもりはありません。しかし、平時の状況の会社でも同様のことがあるのではないでしょうか?「なんでうちの株価がこんなに上がっているんだ?」 どうやら会社も予期せぬ見方をされていたというケースもあります。「うちの会社ってそういう銘柄だと思われているの?不思議だねえ」と。なんでもかんでも、マーケットの声です!と言う証券マンがいますけれども、私はマーケットって全能ではないと思っています。トランプさんが大統領になったときの日米のマーケットに大きな差がありましたよね?東京はおもいっきり下げて、ニューヨークはおもいっきり上げて、そしたら翌日の東京は思い思いっきり上げて・・・。所詮マーケットも人間の集まりに過ぎません。また、株価は社長の通信簿である!と25年くらい前のトークをいまだに言う人もいますが、それも違います。人間が集まってつけた値段に過ぎません。ただし、中長期的に見た場合は通信簿と捉えることもできるでしょう。

 なお、マーケットから見向きもされず、ずっと安値で放置されているような場合は問題ですから、対応策を考えなくてはなりません。ただし、その対応策は「IRを強化しよう!」ではありません。よく証券会社やIR支援会社が「株価を上げるために、まずはIRの強化から始めましょう」と言いますが、いつも「ホントかよ?」と思っていました。IRで株価が上がる?そんな訳ない。そりゃ、中には上がる会社もあるかもしれませんが(IRを始めますと言った時のファナックとか?)、ほとんどの会社は難しいでしょう。そもそもIRは株価を上げるために行うものではなく、法律や取引所規則に基づかない会社独自のサービスベースの情報発信であり、株主に会社の姿を適切に伝えるためのものです。また、投資家の会社に対する意見に耳を傾けるためのものです(耳を傾けるものであり、全面的にそれに従う必要があると言っている訳ではありません。逆に、言いなりになる必要はないと私は考えます)。これを誤解している方も多く存在すると思われます。それは会社に責任があるのではなく、いい加減なセールストークをする証券会社やIR支援会社に責任があります。「うちの株価が上がらん!ちゃんとIRやっているのか!」と怒られたことありませんか?もしくは怒ったことありませんか?株価が上がらないのはIRのせいではありません。

バランスシートの左右を使わないことには株価は上がらないのです。

 

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