2017年10月10日

No.184 不正が発覚しても防衛策を導入しておくべきかどうか・・・

神戸製鋼がデータ改ざん部材 トヨタや三菱重など200社に 国産ジェット旅客機「MRJ」にも採用 2017/10/8

 神戸製鋼所は8日、生産するアルミ製部材について強度など顧客が求める品質基準を満たしていなかったと発表した。取引契約に反して品質データを改ざんしていた。供給先は三菱重工業など航空機関連メーカーやトヨタ自動車など約200社に及ぶ。管理職も含め少なくとも数十人がかかわっており、不正が組織ぐるみだったことも明らかになった。

詳細内容をよく理解していませんが、新聞記事によると神戸製鋼所が品質データの改ざんをしていたとのことです。今日の株価はストップ安。そりゃまあ、そうでしょうね。神戸製鋼所は買収防衛策を導入していましたが、2017年5月15日に廃止しています。もともと2006年4月27日に導入したもので、特徴としてはトリガーを15%に設定している点でした。多くの会社がトリガーを20%にしているところ、神戸製鋼所は15%にしていました。米国では15%にしているケースが多いというのが理由の一つです。買収防衛策の導入理由は、おそらく、ミタルスチールによるアルセロールに対する敵対的TOBの成功、でしょう。新日鐵住金やJFEホールディングスが買収防衛策を継続している中で、なぜ神戸製鋼所が廃止したのか、私にはよくわかりません。神戸製鋼所の株主構成を見てみます。

 その他の法人16.63%、日本生命2.78%、みずほ銀行1.77%、三菱UFJ信託銀行1.44%の合計22.62%が外部から見た安定株主比率です。そして個人株主比率は27%です。おかしいですね。この株主構成なら買収防衛策を継続できたはずです。アドバイザーに「可決できるかどうか微妙です」とでも言われたのでしょう。

 私は、神戸製鋼所でこのような不正が発覚するのであれば、買収防衛策を導入しておくべきでしたね、と考えます。「は?不正を働くような会社に買収防衛策?それこそ経営陣の保身じゃないか!」と考える方がいらっしゃるかもしれません。いえいえ、経営陣のための買収防衛策ではありません。何度でも書きますが、買収防衛策は買収を防衛するための策ではなく、TOBに応募してよいかどうかを判断するための時間と情報を確保するための策です。神戸製鋼所の株価は?既述のとおり、ストップ安です。今日の15:30から経済産業省が説明を行うそうです。明日もどうなることやら・・・。株価が回復するまでには時間を要するのではないでしょうか?この状況で、いずれ回復すると見込んだフィナンシャル・バイヤーやストラテジック・バイヤーが買収をしかけてきたら?暴落した株価に一定のプレミアムを付した価格であったなら、大損している株主は「今の株価よりはマシ」と考えて応募してしまわないでしょうか?

 不正、不祥事などで株価が一時的に暴落してしまった会社こそ、株主のために買収防衛策が必要ではないでしょうか?不正は当然よくないことですが、かといって、株主に責任はありません。このような状況で大したプレミアムでもない価格でTOBに応じなければならないとしたら、株主が不幸です。

 

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