2017年11月08日

No.204 旧村上ファンド、次の狙いは?黒田電気の残した教訓(2017/11/6日経)

 以下、2017年11月6日の日経電子版にあった記事です。長いですから、飛ばして読んでいただけると幸いです。そんなに大した内容ではありませんので。 

「物言う株主」として知られる旧村上ファンド代表の村上世彰氏と激しく対立していた電子部品専門商社、黒田電気。10月31日、投資ファンドのMBKパートナーズの傘下に入ると発表した。MBKによるTOB(株式公開買い付け)が成立すれば上場廃止となる。黒田電気株を合計で4割握る村上氏のグループはTOBに応じて株式を売却し、数百億円を手にするとみられる。巨額の資金を次はどこに振り向けるのか。市場では半導体商社や海運がターゲットになるとの観測が広がっている。エクセルか、それとも三信電気か」。インターネットの掲示板は村上氏のグループが大量保有する半導体商社株の話題で盛り上がっている。同グループが11月1日に提出した大量保有報告書で、エクセル株の買い増しが判明したからだ。数カ月前から断続的に買い増しており、保有比率はすでに23.28%となった。三信電気株の保有比率も10月20日時点で32.98%まで高めている。資金は海運業界にも向かった。10月31日には村上氏のグループが日本郵船株を5.12%取得したことが判明した。海運株ではすでに、旧村上ファンド出身者が立ち上げたシンガポールの投資ファンド、エフィッシモ・キャピタル・マネージメントが川崎汽船株を38.43%保有している。「もともと同根だけに、協力して海運2社に経営統合するよう圧力をかけるのでは」(市場関係者)との観測も浮上している。黒田電気については、村上氏の大量保有が判明したのは2015年4月。その後、成長戦略について経営陣と激しく対立した。他社との経営統合による規模拡大を迫る村上氏に対し、細川浩一社長は、まずは製造部門の強化で生き残りを目指すと抵抗した。今年6月の株主総会では、村上氏らの反対票によって細川社長の取締役就任の賛成比率は54.54%とぎりぎりだった。追い込まれた黒田電気の経営陣がMBKのTOBに賛同したのは、村上氏のくびきから逃れる意図があったとみられる。村上氏が株式を大量保有したこの2年半、黒田電気の企業価値はどこまで高まったのか。同社の時価総額は15年3月末は738億円、TOB発表前の10月30日の時価総額は796億円。約2年半で8%の増加にとどまった。大口取引先の経営方針の転換で、液晶パネル関連の取引が大幅に減るなど経営環境が厳しくなったことに加え、村上氏と経営陣の対立で経営が混乱した影響も大きかった。物言う株主について、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘投資情報部長は「企業価値の向上を訴える点で入り口はみな同じだが、出口は異なる」と語る。株式を5~10年単位で長期保有して構造改革を促すファンドがある一方、ここ数年は短期間での売り抜けを繰り返すファンドも目立つという。藤戸氏は「投資家が物言う株主の『中長期的な企業価値の向上を目指す』という理念に賛同して投資したのはいいが、気づいたらはしごをはずされていたというケースが多くなっている」とも指摘する。黒田電気は株式市場の表舞台から姿を消すが、第2、第3の黒田電気が今後も出てくる可能性がある。物言う株主の要求が、真に企業価値の向上につながるかの判断は一筋縄ではいかない。企業も投資家も、それを見極める眼力を養っていく必要がありそうだ。

長くてすみません。「黒田電気の残した教訓」というタイトルの割には、あまり教訓めいたものがないですね。黒田電気の残した教訓ってなんだと思いますか?上の記事で書いてあることも確かにそうかもしれませんが、教訓は一つだけです。私のコラムをこれだけ読んでくださっている皆さんならもうおわかりですね?そうです。黒田電気が残した教訓は「買収防衛策を入れておいたほうがよいですよ。後で後悔します」だけです。黒田電気は上場廃止を選択しましたが、本当に経営陣や従業員は未公開会社になりたかったのでしょうか?そんなはずはないですね。上場企業でいたかったでしょう。でも村上ファンドに買われたせいで、上場廃止に追い込まれました。「上場している意味のない会社は上場廃止すべきだ」という主張を村上さんはよくしますが、私はそうは思いません。上場している意味のない会社など、この世にありません。それは村上さんの主張であり、だったら上場している意味のない会社などに投資しなければよいのです。なぜ上場している意味のない会社などに投資するのか?儲けたいからでしょ?

 アクティビスト・ファンドの存在を否定するつもりはまったくありませんが、私は上場企業を上場廃止に追い込むことには賛成したくありません。少々、感情的な話になってしまいますが、その昔、ワタミの渡邉美樹さんが上場した際の上場記念パーティーで社員の家族に対してこうおっしゃったそうです。

「皆さんのお子さんは、もう居酒屋の店員ではありません。上場企業の社員です。」

私は「いいこと言うなあ」と当時思いました。企業が上場するということは、こういう意味もあるのではないでしょうか?社長にとっては喜びや達成感、役員にとっては身が引き締まる緊張感、従業員にとっては誇り・・・いろいろとあると思うのです。金儲けするのは大いにやっていただいてけっこうなのですが、金儲けのために上場企業を上場廃止に追い込むのは、そこで働く従業員の思いを考えると、どうにも複雑な気持ちになります。

 この記事を読む限り、村上ファンドが黒田電気の株主になってから、黒田電気の時価総額は大して増えていないそうです。なんだったのでしょうかねえ・・・。村上さん、黒田電気はM&Aをすべきだとおっしゃっていたではないですか?結局、黒田電気のことはどうでもよくて、自分が儲かればよいということなのでしょうか?だとしたら、村上さんに日本の資本市場や日本企業を変えることは不可能だと思います。そのような自分の金儲けしか考えられない人物に大きな理想などがある訳ないでしょうし、あったとしても達成することはムリでしょう。誰も信用しません。村上さんの黒田電気に対する社外取締役派遣に関する株主提案に賛同した株主にはどう説明するのでしょうか?説明責任などはない!株主もオレのおかげで儲かったのだからいいだろ?とおっしゃるのでしょう。投資先に対してしつこいほど説明責任を求めるくせに・・・。

 このコラムを読んでいらっしゃる方に私のような若輩者が申し上げることではないのですが、私、金儲けを主目的にした時点でそのビジネスはおしまいだと思うのです。村上さんがおっしゃるとおり金儲けは悪いことではありませんが、金儲けそのものを目的にしたり、経営理念や理想をないがしろにしたりしてしまうと、結局誰からも信用されなくなるのではないかと思っています。顧客のことを真剣に考え、真剣に考えたもの・アドバイスを顧客に提供した結果、お金がついてくるのではないでしょうか。

 村上さんもファンドを立ち上げたころは、日本企業のコーポレートガバナンスを改革しよう!と理想に燃えていたのかもしれません。いつからこうなってしまったのでしょうか。お金は人を狂わせるのかもしれません。

 第2、第3の黒田電気が出てくるのか?出てくるのは確実です。村上ファンドは復活したと思った方がよいですし、村上さん個人のお金を運用しているとは考えない方がよいです。単に黒田電気で儲かったから次のターゲットに資金を振り向けるという単純な話ではないように思うのです。その程度の話であれば、日本郵船をターゲットにするとは思えません。海外の年金などが資金を村上さんに出し始めているとしたら、かなりの規模のファンドになっている可能性があります。

 

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