2018年04月25日

No.318 株主と経営者の違い

 旧村上ファンドが電子部品商社の再編について声高に主張しています。黒田電気の株式を約38%取得し、社外取締役を派遣しました。そして、保有する株式をすべてMBKパートナーズに売却しました。しかし旧村上ファンドは三信電気やエクセルといった電子部品商社の株式をまだたくさん保有しています。彼らの言う業界再編とは何でしょうか?彼らの黒田電気に対する主張を見てみましょう。

 

 彼らの言っている再編の必要性は「海外と比較すると売上高3000億円以下の企業が乱立しており、グローバル競争が加速していく中、その競争力を向上するためにも、流通の要として規模の利益を追求すべく構造改革が必要である」ということです。つまり、簡単に言えば「数が多いから統合しろ」ということです。

 これ、かなり乱暴ですよね?数が多いから統合しろ、というのは誰でも言えます。「じゃあどこと統合すると最大限のメリットを追求できるのか?」これを具体的に考えてファンドなりの根拠を持った説得力のある回答を経営者に突き付けるのであれば、話はまた違いますが、数が多いから統合しろとだけ言われても困ります。市場で大量の株式を取得し、そして経営統合を迫り、最終的には別のファンドに売却する。三信電気やエクセルもMBKパートナーズに売りつけるのでしょうか?そして、「黒田三信エクセルホールディングス」を作って、再上場でもするのでしょうか?黒田と三信とエクセルって、本当にシナジーを最大限に発揮できるのでしょうか?もし、競合先だとしたら?仕入れ先は重複しているのでしょうか?

一緒になっても販売先はバッティングしているし、実は仕入先はまったく別。規模のメリットなど追及できないし、一緒になっても全然シナジーがない、としたら?ホールディングスを作って、その傘下にとりあえずぶら下げることが意味のある業界再編とは思えません。でも、投資家はわからないでしょうね。経営者や業界関係者は「なんと意味のない業界再編をするのだろうか」と思っているかもしれません。ホールディングスの傘下にぶら下げられた形で「再編した!」とファンドは主張し、そして再上場させて儲けることができるかもしれません。しかし時間が経てば、意味のない再編であったことがばれます。なぜなら業績が悪化するからです。そして株式市場も「意味のない再編だった」と気付きます。すると株価は?下がっていきます。そしたら株主は?黒田三信エクセルホールディングスに対して「業績を上げろ!」とプレッシャーをかけます。でも意味のない再編なのだから、業績など上げられるはずがありません。そしたら株主は「合理化しろ!」といいます。合理化とは?そうです。リストラです。

結局儲かったのは旧村上ファンドとMBKパートナーズだけで、再上場後に株式を取得した投資家は株価下落で損失をこうむる可能性があります。そして意味のない再編を押し付けられた会社に対して投資家は合理化という名のリストラを要求し、従業員はクビにされます。特定の株主だけが得をしたということです。誰かが得をする以上、誰かが損をします。この場合、従業員が損を押し付けられたということです。

私は、業界再編を主張してある会社の株式を取得したアクティビストは、自身が主張する業界再編を責任もって実行し、その成果が確実に出るまで株式を売却しないと明言すべきと思います。業界再編を声高に主張しておきながら、自身はさっさと売り抜けるなど言語道断です。このようなことを考えているアクティビストに対しては、買収防衛策で徹底的に対抗すべしと考えます。結局、アクティビストは自分のことしか考えていないし、短期的な視点でしか会社経営を見ていないのではないでしょうか?「自分たちの利益のためには従業員が犠牲になっても構わん」と心底で考えているのがアクティビストではないでしょうか?

そもそも株価のために従業員をリストラなんて、本当にしていいのでしょうか?最近、株主至上主義に対して本当に疑問を感じています。経営者って誰のために経営しているのでしょうか?会社を取り巻くステークホルダーの中で、株主の位置付けってそこまで重要なのでしょうか?自分の利益のことしか考えず、わがままばかり言う株主中心の株主構成にならないようにするために、持ち合いも重要ですし、買収防衛策も重要です。外人比率や個人比率だけが一方的に高くなっている株主構成は、何か問題があるはずですし、問題を是正するために時間はかかるかもしれませんが対応すべきではないかと思います。時間がかかるけど安定株主対策をするのか、投資家が受け入れやすい買収防衛策を導入するのか・・・。少なくともどちらかをやらないことには、餌食になります。

今回はたまたまターゲットになってしまった電子部品商社業界ですが、次はどこの業界がターゲットになるのでしょうか?どこがターゲットになっても不思議はありません。そもそも日本は会社の数が多いのですから。

 

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