2017年02月04日

No.52 日本で敵対的TOBが開始~ベジと一寸法師~

本日2月4日(土)の日経に「ソレキアにTOB実施 フリージア・マクロス会長」という非常に小さな記事がありました。フリージア・マクロスの会長である佐々木ベジ氏がソレキアに対してTOBを実施することが3日、関東財務局に提出した届出書で明らかになりました。買付価格は2,800円、最大で36万4,700株を10億2,116万円で買い付けるそうです。100%買収するわけではなく、最大でも持分比率は約48%程度で、上場は維持する方向のようです。

 ソレキアの株価推移は以下のとおりです。

  

ソレキアは同日「買付けに対する意見表明は決定次第、公表する」として賛否を留保するとのコメントを発表しました。

 「賛否を留保しているのだから、まだ敵対的TOBかどうかはわからないんじゃないの?」と思う方がいらっしゃるかもしれませんが、これは敵対的TOBです。「敵対的TOBなら反対って言えばいいじゃない?」と思うかもしれませんが、そうではないんです。

 まず、敵対的TOB=経営陣に事前の打診がないTOB、が実施された場合、まずは「当座のコメント」を出します。これは法律で定められた意見表明とは異なり、会社が自主的に提出するものです。「会社の意思はまだ決定していませんが、経営陣に対する事前の打診なく実施されたTOBです。株主の皆さん、経営陣の意思を公表するまで応募は控えてください」ということを周知徹底させるために提出します。

 「なぜ反対って言わないの?」 「経営陣に事前の打診がないから反対」とは言えませんので、とりあえずは「検討します。後日、反対・賛成の意見を公表しますから、応募は控えてください」という趣旨のコメントを発表するのです。本音としては即座に、反対!と言いたいところですが、何も検討せずに反対と表明してしまうと、株主から「何も検討していないのに反対するなんて、経営陣の保身じゃないか!」と非難されます。だから、意見を留保するのです。

 今後の流れですが、TOBルールに則ってソレキアは佐々木ベジ氏に対して、質問権を行使します。10営業日以内に意見表明報告書を公表し、その中で質問をします。この意見表明報告書は法律に則ったものですので、財務局に提出されます。EDINETで閲覧可能です。おそらくこの意見表明報告書においても、取締役会の意見は「TOBに対しての意見は留保。質問に対する回答を検討した上で、反対か賛成の意見を表明する」という内容になると考えられます。

 質問に対する回答は5営業日以内で行う必要があります。これも法律で決まっています。法律上、回答する義務があります。ただし、義務はありますが、理由があれば回答を拒絶することはできます。法律上は「対質問回答報告書」という名前の書類を財務局に提出します。

 では、この敵対的TOB、成功するでしょうか? 「はい、この敵対的TOBは成功します」と断言できます。ソレキアの株主構成を見れば一目瞭然です。また、このTOBの条件を見ればわかります。あまりおおっぴらに記載したくないため、知りたい方は個別にお願いします。

 なお、ソレキアは買収防衛策を導入していません。導入していれば、突然TOBを実施されることはなかったと思いますし、最悪でも、ある程度の時間を確保できたはずです。時間を確保できれば、いろんな防衛手法を取ることができます。今回、TOB期間は35営業日と設定されています。時間がないので、取り得る手法が限られてしまいます。

ちなみに、佐々木ベジというお名前は本名で、「ベジタリアニズム」からとったそうです。ベジさんの弟は一寸法師という名前です。ベジさんが一寸法師を読み始めたころに生まれたそうで、生まれた弟を見て「一寸法師だ!一寸法師が出てきた!」と言ったことが由来だそうです(ウィキペディアより)。

 

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