2018年04月18日

No.313 7610テイツーが買収防衛策を廃止

 テイツーという会社(中古本・ソフト販売の『古本市場』西日本地盤)が買収防衛策の廃止を公表しました。公表日は4月16日です。よく買収防衛策を廃止すると株価が上がると言われていますが、テイツーの株価はどうだったのでしょうか?

 上がってますね~、と言っても上がったのは1~2円ですが。なお、テイツーは4月16日に決算発表をしています。売上高28,130百万円(前期28,322百万円)、営業利益▲173百万円(同▲437百万円)、経常利益▲173百万円(同▲435百万円)、当期純利益▲171百万円(同▲1,093)です。2019/2期の業績見通しは、売上高24,200百万円、営業利益180百万円、経常利益170百万円、当期純利益100百万円です。ちなみに同日、新たに株主優待を導入することも公表しました。株価が上昇した要因は、どう考えても買収防衛策を廃止したことではありませんね。まあ、そもそもの株価が安すぎるし、通常時の出来高も少なすぎて、正確な要因などないと言った方がよいかもしれません。

 さて、テイツーはなぜ買収防衛策を廃止したのでしょうか?廃止理由を見てみましょう。

 まあ、いつものヤツですね。だから、廃止したら法律上の時間と情報提供しか要請できませんって!では、正確な廃止理由を分析してみましょう。いつものヤツ、やっときます。

 法人株主34.86%、山陰合同銀行3.98%、テイツー従業員持株会2.36%、みずほ銀行1.89%、東京海上1.89%、トマト銀行1.51%、中国銀行1.51%の合計48%です(上位個人は含めず)。高い!高すぎる!買収防衛策を廃止する必要などないのに、なぜ?これですかね?

 業績が悪いんですよねえ・・・。「業績悪いのに、買収防衛策なんて継続したらかっこ悪くないか?」ってなことを考えてしまったのではないでしょうか。気にしなくていいんですよ。この会社、時価総額が26億しかなく、外人株主も国内機関投資家もほとんどいないのですから。それに正確には買収防衛策ではなく時間と情報を確保するための策ですから、業績が悪化しているからと言って廃止する必要など本来ありません。

 そもそもこの会社は以下の理由で買収防衛策を導入していました。

  

 企業価値ならびに株主共同の利益を損なう恐れのあるものはもういなくなったと言えるでしょうか?時価総額26億円で、個人株主比率が48%もあります。どこかの買われた会社に似た株主構成ですね。はっきり申し上げますが、この会社を外人投資家や国内機関投資家は見ていません。だから「業績悪いのに買収防衛策なんてよくないよね?」 大丈夫です!誰も見ていませんから!しかし、ベジさんのような方々が見ているかもしれないのです。だから買収防衛策が必要な会社です。財務上のうまみはないように見えますが、買収者は何を魅力と考えるかわかりませんから。

 これから買収防衛策の廃止を公表する会社がドンドン出てくるでしょう。2017年に買収防衛策を廃止した会社は42社(2017年5月時点)と過去最高だったそうです。今年も多くの会社が廃止するでしょう。これらの会社は間違った情報をもとに判断してしまったと私は考えます。「安定株主比率が低いし、国内機関投資家まで反対するからもう買収防衛策を維持できないからしょうがないのではないか?」とお考えになるかもしれませんが、間違っています。少なくとも、本音では買収防衛策を必要と考えているのに自ら廃止するのは間違っているということです。廃止するのは簡単です。「社長、もう買収防衛策を維持できません」「しょうがないな。廃止するか」と。社長、そこで一言「工夫しろ!」とおっしゃってみてください。このコラムを読んでいる会社の皆様でも廃止を選択する会社もあるでしょう。もう一度言います。間違いです。私は「必要としているのに自ら廃止するなど間違っています。堂々と総会にかけて否決されてください」と申し上げます。そして「さて、工夫した策をご提供します」とも申し上げます。

 何のための事前警告型ルールなのか、何のために導入したのかをもう一度関係者全員で真剣に考えるべきであると私は思います。なぜ自ら武装解除するのか?買収防衛策の導入・継続は正しいと考えるなら、否決されることなど恐れず、正々堂々とその必要性や買収防衛策ではないことを主張し、総会に賭ける方がよいと思います。

 

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