2018年05月09日

No.324 旧村上ファンドに買われている中国塗料が買収防衛策を廃止

公表内容を見て笑いました・・・。

  旧村上ファンドに株式を6.35%保有されている中国塗料が買収防衛策の廃止を公表しました。廃止理由は「本対応策の更新について、慎重に検討を重ねた結果、当社における本対応策の必要性が相対的に低下したものと判断いたしました」って・・・。いや、誰がどう見ても「御社における本対応策の必要性は相対的に非常に高まっています」だと思います。何をどうすれば廃止という結論に達するのでしょうか・・・。旧村上ファンドが大量保有報告書を提出したのが今年の2月15日で保有割合は5.20%でした。そして2月22日に変更報告書が提出され、保有割合は6.35%に上昇しました。以降、変更報告書は提出されていませんが、買い増される可能性は高いと考えるのが普通でしょう。でも買収防衛策を廃止しました。なぜか?以下、2017/3期末の株主構成です。

 外国人株主比率は40.78%と相当高いです。安定株主比率は、法人株主10.09%、広島銀行4.72%、明治安田生命2.90%、三菱東京UFJ銀行2.25%の合計19.96%です。おそらく、買収防衛策の更新議案を株主総会にかけたら、否決される可能性が高かったように思います。ただ、可決させることが不可能な株主構成とは言いません。否決される可能性が高いとは思うものの、機関投資家を説得すれば不可能ではなかったと思います。

 しかし、自ら買収防衛策を廃止するのはどうかと思います。自ら「必要ない」と言ってしまったら、この先、旧村上ファンドがドンドン買い増して来たらどうするのでしょうか?「企業価値向上策を実施して、株価を上げるんだ!」「買収防衛策で守るなんて時代錯誤なんだ!」 そういうことも重要ではありますが、企業防衛はきれいごとだけで対処できるほど甘くはありません。本当に旧村上ファンドに買われて、会社を支配されてもよいと考えるのでしょうか?考え方が甘すぎますし、社員のことを真剣に考えていないと言わざるを得ないですね。リストラされたらどうするの?一緒になってもシナジーのない先に売り払われたらどうするの?そこまで考えましたか?

 仮に買収防衛策の更新議案が株主総会で否決されたとしても、まだ方策はありました。賛成率次第では、来年の総会で再チャレジンすればよいのです。否決されたって、どうせ僅差だと思いますし。旧村上ファンドの買い増しスピードですが、私の感覚ではだいたいひと月1%ずつくらい買い増していくようなイメージです。ですから、来年の総会までの間に、保有割合が20%に届かない可能性もあります。さすがに買収防衛策を否決された翌日に「取締役会決議で導入します。来年の株主総会にかけます!」と言って導入すると、やや乱暴なので、ちょっと時期を置いて、例えば、今年の11月くらいに買収防衛策の再導入を公表します。「なぜ11月に公表するんだ?普通は決算発表と同じタイミングだろ?」と言われるかもしれませんので、そういう指摘をされたら「早めに導入を公表して、株主の皆様に再度説明するための時間を確保したかったんです~」としれっと言います。そして合わせて、安定株主対策もやっておきます。株主総会を通せるだけの安定株主を確保し、買収防衛策を可決させにいきます。徹底的にやりますね。今年の11月くらいだったら、旧村上ファンドの保有割合もまだ15%に届いていないくらいではないでしょうかね。

 しかし、旧村上ファンドに買われている状況にも関わらず、なぜ「必要性が相対的に低下した」などと開示してしまうのでしょうか・・・。残念な対応です。プロがついているのでしょうか?この会社は絶対に買収防衛策を自らの手で廃止してはいけなかったのです。株主が反対したから更新できなかった、でも経営陣は必要だと思っているからいざとなったら再チャレンジする、というスタンスを取らなくてはならなかったのです。

 

このコラムのカテゴリ

関連する
他のコラムも読む

2019年に入ってから事前警告型ルール(買収防衛策)を継続、廃止、再導入した会社は以下の通りです(2019/5/31まで)。

続きを読む

カテゴリからコラムを探す

月別アーカイブ