2022年01月27日

No.1238(無料公開)買収防衛策を継続するか、廃止するか~買収防衛策は株価の重しになるんじゃないか?って社長に言われた(らどうしよう)~

これに関しては当社のHPで何度も何度も書いてきたことなので、いまさら目新しい意見を書くことはできませんので、以下のコラムをご覧ください。

No.1172 買収防衛策を導入すると株価が下がるという人は

No.1215 (無料公開)本当に買収防衛策は株価に悪影響を与えるのか?

株価と買収防衛策の関連性についていろいろな分析結果があるのは知っていますが、はっきり言って買収防衛策が株価に与える影響を分析するのはムリだと思います。そもそも買収防衛策導入・継続の公表はそれ単独で行われることはまれで、だいたい決算発表と同時に行われます。ですから株価が翌日に下がったとしても、それが買収防衛策による影響なのか決算による影響なのかわからないのです。

ちなみに象印マホービンは2022年1月11日(火)16:30に買収防衛策の導入を公表しました。1月11日(火)の終値は1,364円でしたが、1月12日(水)の株価は、始値1,384円、高値1,430円、安値1,375円、終値1,430円でした。象印マホービンは買収防衛策導入と同時に以下も公表していますが、株主提案に対する反対の意見表明と剰余金の配当に関するものです。剰余金の配当に関しては、以前から公表されているものであり目新しさはありません。

https://www.release.tdnet.info/inbs/140120220111565716.pdf

https://www.release.tdnet.info/inbs/140120220111565710.pdf

ちなみに日経平均ですが、1月11日(火)終値28,222.48円に対して1月12日(水)終値は28,765.66円と前日に比べて543.18円も上がっています。相場全体がかなり上がっています。買収防衛策、全然関係ないですね(笑)

なにも私は「買収防衛策は株価になんら影響しない」とは言いません。というか言えません。なぜならそれを言えるだけの分析材料がないからです。買収防衛策と株価については「わからない」としか言えないのです。

でも「買収防衛策は株価に悪影響があるらしいじゃないか!」と言っている社長に対して、冷静に事務局が「社長、買収防衛策が株価に与える影響は分からないのです」と言っても、社長がカーッとなって「わからんってことは悪影響があるかもしれないってことじゃないか!」と怒り出すことでしょう。得策ではありませんねえ。

社長に説明するのなら、ていねいに説明しましょう。

・買収防衛策が株価に与える影響といった分析資料が世の中に数多く公表されていることは把握している。

・買収防衛策公表後の株価を見ていると思われるが、そもそも、買収防衛策の導入や継続はそれ単独で行われることはまれで、だいたいが決算発表と同時に行われている。

・そのため、買収防衛策翌日の株価が買収防衛策による影響なのか決算による影響なのかは正確にはわからない。

・たしかに買収防衛策というと株価にマイナスのイメージがあるのは事実だが、2021年に買収防衛策の導入・継続を公表した会社の公表前後の株価を調べてみた。すると、75社のうち、買収防衛策公表の翌日に株価が下がった会社は35社で、上がった会社は40社だった。ちなみに廃止を公表した会社は14社しかないのだが、廃止を公表したにもかかわらず7社の株価は下がった。

・これをもって買収防衛策を導入しても株価は下がらないとは言えないものの、平時に買収防衛策を導入したり継続したりすることを公表する行為そのものが株価に強いインパクトを与えるとまでは言えないと思われる。

・なお買収防衛策を継続して導入している企業の中でも株価が右肩上がりの企業もある。

・買収防衛策はけっして経営者の保身ではないし、買収提案があった際に情報と時間の提供を求めるルールに過ぎないもの。これから敵対的TOBが増える可能性が高い状況において買収防衛策を廃止する判断はあり得ないと考えている。

・株価は株価として、経営戦略を着実に実行して中長期的に反映させていく必要があるものであって、小手先の買収防衛策の廃止で反応するものではない。

こんな感じでどうでしょうか???

 

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