2021年10月21日

No.1172 買収防衛策を導入すると株価が下がるという人は

イメージだけで言っているでしょ?あと、新聞にそう書いてるから言ってるだけでしょ?たぶん、自分で買収防衛策導入企業の株価を調べた上で言っているわけではないと思いますよ。

一言でいうと「えー加減なこと言うな!」ですね。今年買収防衛策を継続した会社の株価の状況を見てみましょう。公表直前の株価終値と翌営業日の株価終値です。※15:00以降に公表した場合は公表日終値と翌営業日終値を比較しています。15:00より前に買収防衛策の継続・導入を公表した場合は、前営業日の終値と公表日の終値を比較しています。

継続企業は以下のとおりです。見にくいため分割して掲載しています。

廃止企業は以下のとおりです。

以前コラムでまとめましたが、2021年1月~6月において買収防衛策を継続(新規導入含む)した会社は75社で、廃止した会社は14社です。継続した会社75社のうち、買収防衛策継続公表直前の株価を終値ベースで比較して下がったのは35社です。廃止企業だと14社中、下がったのは7社です。割合で言うと株価が下がったのは継続企業のうち46.7%、廃止企業のうち50%ということになり、廃止企業のほうが下がった企業の割合が高いです。まあ、廃止企業の数が今年は少ないので、これだけをもって廃止したほうが株価が下がるなんてことは言えないのはわかっています(笑)

買収防衛策を導入・継続したら株価が下がると言っている人たちはホントにデータを調べた上で言っているのでしょうか?絶対に言っていないでしょう。でも上記のデータをそう言う人たちに見せても「いや、翌営業日に下がらなかったとしても中長期的に見たら下がっているに違いない!」って言うでしょうね。もうどうしようもありません。下がっているんだったら下がっているというデータを見せてくれ!そもそも翌営業日に下がらなかったのだったら、買収防衛策は株価に影響していないということですよ。調べるのは翌営業日だけで十分です。

買収防衛策は株価に悪影響をおよぼすのか?その答えは「わからない」が正しいのです。私は何も「買収防衛策は株価に悪影響をおよぼさない」と言っているわけではありません。買収防衛策それのみで公表されることは少なく、だいたい決算発表と同時公表です。ですから、翌営業日の株価がどういう理由で上下したのかはわからないのです。普通に考えたら「決算発表の影響だよね」です。

あと、よく買収防衛策導入企業と導入していない企業のパフォーマンスの違いを挙げる人もいますが、正確なことは私は調べていないのでなかなか申し上げにくいのですが、買収防衛策を導入していない企業と導入している企業はそもそも数が違いすぎます。圧倒的に買収防衛策導入企業は少ないのです。そして大事なことは、買収防衛策を導入していない企業には、ユニクロもいれば、ソフトバンクもいる、そしてファナックもいる、日本を代表するトヨタ自動車もいるのです。株価で比べると、買収防衛策導入企業は圧倒的に不利なのです。

まあ、そもそも買収防衛策が株価に与える影響を分析する人は、買収防衛策が株価に悪影響を与えているという前提で分析するでしょうから、都合のよいデータを持ってくる可能性も高いですからねえ(笑)

そもそも論を言いますが、買収防衛策などが株価に与える影響なんてたかが知れています。例えば買収防衛策を継続する予定の企業が、メチャメチャ決算内容がいいときに、まず買収防衛策の継続だけ公表してみましょうよ。株価が下がるかもしれませんね。そして、その後、メチャクチャいい決算を公表しましょう。買収防衛策の継続を忘れたように株価が跳ね上がるでしょうね。

つまり、そんなもんなのですよ。

 

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